子育てアドバイス

【よくある相談シリーズ】エナジードリンクを飲む我が子。体に影響がないか心配です。

コンビニや自販機などで気軽に買える清涼飲料水・エナジードリンク。眠気を覚ます、集中力を高めるために大人が飲む飲み物でしたが、最近では好んで飲む小中高生も多いといいます。エナジードリンクは、子どもが飲んでも問題ないのでしょうか?管理栄養士の大須賀恭子先生に聞きました。
子どものエナジードリンク摂取は極力控えめに
カフェインを多く含む清涼飲料水の表示をよく見ると、「子どもや妊娠中の方、カフェインに敏感な人などは飲むのを控えるように」と書いてあります。この言葉が示すとおり、子どものエナジードリンク摂取は推奨されるものではありません。海外はもとより、日本でも約10年前から学校の養護教諭の間で問題視する声が上がっています。小学生の場合、パッケージのかっこよさや「なんとなくおいしそう」という興味本位から始まり、摂取が常態化していく場合が多いようです。なぜなら、エナジードリンクに含まれるカフェインが働き、「頭が冴える」「疲れが飛ぶ」などの効果が働くからです。特に受験などをひかえた子どもは、勉強に対する不安から定期的に飲んでしまうという傾向もあります。
エナジードリンクに含まれる多量のカフェイン
種類によって違いはありますが、エナジードリンクには多量のカフェインが含まれているケースが多々あります。よく見かける330ml缶1本に含まれるカフェインは、100~140mgです。健康的な成人が摂取してもよいとされるカフェイン量は 1日400mgなので、大人であれば大きな問題はありません。しかし、7歳から9歳の子どもは1日62.5g、10~12歳の子どもは1日85mgまでと、悪影響の無いカフェイン最大摂取量のボーダーは、低く設定されています。これらは内閣府の機関である食品安全委員会が定めたものであり、化学的知見に基づきリスク評価されたデータです。
つまり、小学生がエナジードリンク1日1本飲むと、推奨量の約1.5~2倍のカフェインを1日で摂取してしまうことになります。
カフェインのとりすぎに注意
カフェインは、コーヒーや紅茶、緑茶にも含まれており、それらを普段大人が嗜好品として飲むには問題はありません。仕事を頑張りたい、疲労感を軽減したいと珈琲をはじめとする飲料を楽しむ保護者の方も多いと思います。子どもであっても、緑茶や甘いコーヒー、紅茶を飲むシーンもあるでしょう。少量であれば、悪影響はありません。

しかしカフェインには、中枢神経に刺激を与え、眠気を覚まし、心拍数や血流が早くなる作用があります。これが、元気になったと感じるひとつの理由です。一方、タバコやアルコールのように依存性があり、カフェインを多く含む飲料がないと不安になったり、飲み過ぎて中毒を起こしたりする場合もあります。カフェインを摂り続けて体が慣れてくると、元気を出すためにより多くのカフェインが必要になり、依存度が高まります。また、一度に飲み過ぎると急性カフェイン中毒を引き起こす可能性があります。特に子どもは、大人よりも消化酵素が未熟なため、カフェインの副作用が発生しやすいといわれています。実際、エナジードリンクの短期大量摂取で子どもが救急搬送された例もあります。急性カフェイン中毒は、吐き気、嘔吐、手足のしびれなどの症状から始まり、最悪の場合、死に至るケースもあります。

エナジードリンクに限らず、カフェインを多く含む飲料の飲みすぎには注意が必要です。
子どもに寄り添って日常生活の見直しを
「子どもが隠れてカフェイン量の多いエナジードリンクを飲んでいる」「1日に何本も飲んでいる」という悩みは、昨今よく寄せられます。まずは、お子さんの日頃の様子を、じっくり観察してみてください。何か悩みを抱えていないか、ストレスを感じているのではないかなど、普段近くにいる保護者ならではの視点が必要になってきます。学校での様子を先生に聞いてみるのもおすすめです。
そして、エナジードリンクを飲むリスクを情報として話すのが良策です。実際の救急搬送ニュースを話すのもいいでしょう。突然の飲用禁止は、思春期の子どもにとって反発を買うだけです。きちんとした情報を伝えつつ、子どもの気持ちを読みとり、寄り添う姿勢をみせることが大切だと思います。
子どもが健やかに育つ環境づくりを
そもそもの話になりますが、子どもがカフェインを大量に摂取してまで頑張らなくてはいけない状況を疑問視しなければなりません。そういった状況を作り出している大人側に責任があります。子どもは、昼間にしっかり体を動かし、栄養のある食事をとり、夜はぐっすり寝るのが一番です。子どもの健やかな成長のためにも、大人がまず、エナジードリンクについて正しい知識を身に付けていきましょう。
大須賀恭子 広島国際大学 健康科学部 医療栄養学科 非常勤講師
広島県呉市内の小学校 7 校に41年間、栄養教諭として勤務。教育現場で子どもたちの食育と学校給食に携わる。2010年から2016年まで、広島県学校栄養士協議会会長、(公社)全国学校栄養士協議会理事を兼務。2020年より大学にて栄養教諭の養成にあたっている。

【よくある相談シリーズ】高学年からピアノを習いたいと言い始めました。もう遅いですか…?

脳の発達に良い影響を与えたり、集中力を養う効果が期待される、小学生に人気の習い事「ピアノ」。しかし、その多くは幼児から始める人が多いのが現状です。しかし、小学校高学年の子どもが「ピアノを始めたい」と言った場合、親はどう対応すればいいのでしょう?今回は、広島市を拠点に多くの生徒を指導する沖根典子先生に、高学年から始めるピアノレッスンについて聞きました。
やる気のある子にピアノのスタート年齢は関係ない
ピアノを始めるのに適しているのは、幼児からといわれています。その多くは概ね3歳~5歳から。それ以前の0歳からリトミック教室に通い、ピアノへと移行するお子さんもいます。しかし実際には、小学校の高学年からピアノを始める子も少なくありません。年齢関係なく、子どもの意欲や興味が芽生えた時期が始め時です。親が無理矢理強制して始めさせるのはよくないですが、本人に「やってみたい」気持ちがあれば、前向きに検討してあげてください。ピアノを自ら選んで始めた高学年は、親が練習を強いらずとも、自発的に練習に取り組む熱心な子が比較的多いともいえます。
高学年がレッスンに向き合うメリットとデメリット
高学年からピアノ始める場合、すでに学校の音楽の授業で音符を習っていることもあり、幼児からスタートする子に比べると、楽譜読みが早いといったメリットがあります。指導者の話を理解する力もついており、知識を理論で覚えるので上達も早いです。最低限の技術はすぐ身に付きます。

一方、強弱を自在に操る、喜怒哀楽を音に出すなどの表現力の向上には時間がかかります。なぜなら、より良い演奏を聞き分ける耳の力が育っていないからです。ピアノを練習していく上で心がけることは、単なる練習に留まるのではなく、耳も同時によく使って、自分の出している音や他人の演奏を聴き、耳を鍛えることが重要です。そのために、クラシックのコンサートに足を運んだり、著名なピアニストの曲を聞かせたりするなど、レッスン以外で音楽に触れる機会をたくさんつくってください。心に残る印象的な音に、きっと出会えるはずです。
幼稚園や保育園の先生を目指すならピアノのスキルを
もしお子さんが、幼稚園や保育園の先生になりたいという将来の夢を持っているなら、ぜひピアノを習わせてあげるとよいです。幼稚園教諭免許を取得するための学校に進学すれば、必要科目としてピアノの授業を履修することが求められます。保育科がある学校に通う場合も同じく、必修科目にピアノがある場合があるため、ある程度のスキルを身につけなければなりません。つまり、養成学校では、ピアノを弾けることに積極的に取り組んでいるのです。保育士試験を利用する場合はピアノ以外の課題を選べるため、ピアノが弾けなくても保育士の資格取得を目指すことが可能です。しかし、結論から言うと、先取りして困ることはありません。優れたピアノの技術はなくても先生にはなれますが、ピアノが上手であればあるほど、共に過ごす子どもたちの音楽体験は豊かになります。自信を持ってピアノが弾ければ、音楽に触れて、歌やダンスなど、表現する楽しさを子どもたちにたくさん伝えることができます。ピアノを弾けた方が幼稚園、保育園での就職面接や先生になってからの現場でも、大いに役立つでしょう。
思春期の子どもにリラクゼーション効果が期待できるピアノ
思春期の子どもたちは、勉強や友人関係などで、さまざまなストレスを抱えています。そんな時にも、実はピアノは役立ちます。気分の向くままにピアノを弾くと、心が解放され、自律神経が整い、ストレス解消効果が期待できます。大人でも、美しいピアノの音色によって心が癒された経験がある人は多いはずです。つまり、ピアノに向き合う時間が、ちょっとした気分転換になります。安らぎを与えてくれるピアノの音色は、音楽療法でも積極的に用いられている、おすすめの楽器のひとつです。
ピアノは子どもの心を育て将来の可能性を広げてくれる
音楽は、人の心に大きく深いものを与えてくれます。ピアノの技術力を磨き、上手に弾けることも大切ですが、重要なのは子どもの心を育てることです。自分の気持ちを音楽で表現する時間は、確実に豊かで実りあるものになります。音楽をきっかけに、思いがけない人間関係が広がることもあるかもしれません。長く続けていれば、入試や就職など人生の節目で、自分の強みとしてアピールすることもできます。その他にも、ピアノを弾くことで身に付く力は無限にあります。高学年だからといって、遅すぎることはありません。ピアノで子どもたちの未来の可能性を広げていきましょう。
沖根典子 スタジオイマジンピアノリトミック教室 代表
ピアノを指導していた母の影響で5歳からピアノを始める。広島市立舟入高等学校を卒業後、エリザベト音楽大学宗教音楽学科宗教音楽学コースへ進学。1997年、「スタジオイマジンピアノリトミック教室」を開設し、後進の指導にあたる。エリザベト音楽大学同窓会理事、評議員。一般社団法人全日本ピアノ指導者協会正会員、広島ピースステーション代表。

【よくある相談シリーズ】うちの子、本を読みません。どうすれば読書好きに?

子どもに「本をたくさん読んでほしい」と願うママやパパは多いのではないでしょうか。読書は豊かな心と知識を育み、読解力や集中力が身に付くといわれています。親からすると、本を読まず、ゲームや動画に熱中する子に対し不満を抱いてしまうこともあるでしょう。今回は、広島 蔦屋書店でKidsコンシェルジュとして活躍する宮本陽子さんに、子どもの読書週間を育むヒントを教えてもらいました。
子どもの成長に多くの効果をもたらす読書
昨今では、塾や習い事、ゲームに動画と、子どもたちの日々は忙しく、なかなか読書が入り込む隙がないといわれています。小学校低学年までは、幼少期から親しんだ絵本の延長線上として、幼年童話を読む習慣がついているお子さんもいます。しかし、多くの場合、本から離れていくのは活字量が多くなる中~高学年からです。特に、スマートフォンやタブレットなどの普及により、本以外のコンテンツにふれる機会が増え、子どもの時間の過ごし方が変わるのは、自然な流れと捉えることもできるはずです。

ですが、やはり読書には、たくさんのメリットがあります。本を通じて、さまざまなテーマや世界観に触れることで、幅広い知識と視野を養うことができます。また、自分の知らない世界に触れることで価値観が変わったり、世界観が広がる可能性もあります。特に「読んでもらうのを聞く」読み聞かせから、「自分で文字を読み進める」自力読みに発展したとき、自分のイメージで登場人物を思い描き、その心境を想像するなど、本の中の世界にどっぷりと入り込む楽しさを経験できます。
読み聞かせは少し大きくなった中~高学年にも有効
とかく読書は難しく捉えられがちですが、そもそも読書は楽しむ行為です。意外に思われるかもしれませんが、本の読み聞かせは、幼少期に限らずいくつになっても親子間で楽しめます。読書が苦手なお子さんには、団欒タイムにパパやママが本を読んであげるのも効果的です。時間をかけなくても、数ページ読み、数日後に1冊が終わるスピードでかまいません。子どもは聞いているだけですが、「この話、面白かったな」と思ってくれることが重要なのです。今、自ら本を読まなくても本を読む行為の楽しさを知っていれば、友達、先生、親、またはSNSなどがきっかけとなり、本を突然読み始める子もいます。本によって、心を動かされた経験があるかないかが、キーポイントです。ぜひ、お子さんが大きくなっても、読み聞かせを共に楽しんでみてください。中学年以降の本の読み聞かせは、親と子で本の話を共有できる楽しさも得られます。
絵本はアートでありコミュニケーションツール
大きくなってから絵本を読むのも、子どもにとって有意義な時間になります。絵本は小さい子どもだけのものでありません。赤ちゃんからシニア世代まで、幅広く楽しめるのが絵本です。特に、小さい頃親しんだ絵本を大きくなってから再度読めば、全く違う観点で読むことができます。県内で、美術館などで絵本の原画展が度々開催されていることが示すとおり、絵本は素敵な挿絵が入ったアート作品です。ロングセラーの絵本は、いい作品だからこそ世界中で長く読み続けられています。

また、本や絵本の裏表紙に表記されている対象年齢で、読む読まないを決めなくても大丈夫です。対象年齢は、平均値を考えて付けられているので1つの指標となりますが、優先順位は子どもの興味です。書店によっては、わかりやすく年齢別に区切って本を見せている場合もありますが、当店では年齢は最優先ではないという考えをもとに棚作りをしています。子どもの好奇心と楽しさを重視して、本を選んでみてください。
本を読むのが苦手な子には短編集がおすすめ
文字量の多さ、お話の長さに読む気が失せてしまう子どももいます。そこでおすすめなのが、短編集です。5分で読める、または3分で完結するなど、本が苦手なお子さんでも本の世界に入りやすいのが特徴です。まずは、本好きになるきっかけを手にするために、読みやすいものから選ぶといいでしょう。 

また、漫画スタイルの作品もおすすめです。例えば、歴史漫画は時代背景や事実が忠実に描かれており、子どもが親しみやすいイラストで時代の全体像を把握できます。誕生日やクリスマスプレゼントとして、全巻揃える方もいます。

漫画であっても、挿絵が多くても、名作でなくても、子どもが興味を持ち無心に読んでいるのであれば、それはもう読書なのです。

―宮本さんおすすめの中高学年向けの本―
左:『二番目の悪者』 林 木林/作, 庄野ナホコ/絵, 小さい書房, 2014年
上:『意味がわかるとゾクゾクする超短編小説 54字の物語』 氏田雄介/作, 佐藤おどり/絵, PHP研究所, 2018年
下:『10分で読める名作 5年生』 木暮正夫(選), 岡信子(選), Gakken, 2019年
右:『怪盗アルセーヌ・ルパン (10歳までに読みたい世界名作)』 モーリス ルブラン (著), 芦辺 拓 (翻訳), 学研プラス,2015年
大人目線で本を選ばず子どもに親の感情を強要しない
大人から「この本を読みなさい」と押し付けるのではなく、子どもが読みたい本を選ばせることも大切です。親から「おもしろいよ」と声をかけて読ませようとするのも好ましくありません。おもしろい、ワクワクする、ドキドキする、あるいはやっぱり好きじゃないと思うのかは、子どもの自由です。つまり、子どもの感情をとってしまう言動は控えましょう。
もちろん「ママはこう思った」など感想を言うのは問題ないと思います。しかし、親と同じような感想を子どもが持つとは限りません。

子どもが何に興味を持っているか、親でもわからない場合があります。子どもが選ぶ本を否定せず、見守っていくことが大事です。読みたいように読ませてあげること。それこそが、本を読む楽しさにつながっていきます。「こうでなくてはいけない」というような決まりに縛られず、読書の高い壁をなくしていきましょう。本にたくさん触れ、「本は楽しい」と思えることが一番なのですから。
 
宮本陽子 広島 蔦屋書店 Kidsコンシェルジュ
保育士として広島市の保育園に21年勤務。保育現場で毎日読み聞かせをして培った絵本の知識を子どもや親たちへ伝えられたらと、2017年に広島 蔦屋書店に入社。月曜から金曜は「へいじつのよみきかせ」を毎日店内で開催し、子どもたちに絵本の楽しさを伝えている。多様な児童書ジャンルのなかでも、特に「絵本」が持つ魅力を提案。

【よくある相談シリーズ】夏休み明け、子どもが「学校に行きたくない」と言い出しました…。

楽しかった夏休みも終わり、新学期が憂鬱という子どもがいるかもしれません。もし我が子が「学校に行きたくない」と言い出した時、親にできることはあるのでしょうか?今回は、養護教諭として長年小学校に勤め、現在は大学にて教鞭をとる寺西先生に、夏休み明けの子どもの不登校の原因や、親ができるサポートなどを聞きました。
疲弊した子どもがSOSを発する夏休み明け
長い夏休みが終わり、学校が再開する時期は、子どもが学校に行くことを嫌がり、不登校になりやすいタイミングといわれています。不登校になる子どもの割合が一番多いのは、4月から5月にかけての新学期です。なぜならクラス替えや担任の先生が変わるなど、新しい環境が引き起こす不安を子どもが抱えてしまうからです。しかし、そこはどうにかギリギリの状態で頑張り、保護者の期待に応えて頑張った子たちが息切れを起こしてしまうのが夏です。1学期を乗り越えてやっと夏休みを迎えた子どもは、本来の自分が出せる家で寛げる環境を得ます。しかし2学期という戦場へ向かうとなると、疲れ果てた子どもたちが学校に行けないというケースが多く見られます。
原因探しをせず子どもを問い詰めない
不登校になる原因はさまざまあります。「特定の子からいじめられている」「勉強がわからない」「そりの合わない子がいる」など、理由がはっきりしている場合は、早急に保護者と学校が対応すれば早期に解決する場合があります。

しかし昨今、「明確な理由はないけれど、なんとなく学校に行きたくない」という子が増えています。もちろん突き詰めていけば、小さな理由はたくさん出てきます。でもそれは、学校に行かない理由を、保護者から問い詰められて頑張って探しているからに過ぎず、子どもの本心でないことが多いのです。お父さんやお母さんにしてみれば、「子どもが学校に行けないくらい辛いと言っているのだから、きっと何か原因があるのだろう」と、必死で理由を見つけようとします。しかしその行為は、どんどん子どもを追いつめてしまいます。「我が子のためにやれることはやりたい」と思う気持ちはよくわかりますが、だからといって、理由を強引に引き出し、無理に子どもを学校に行かせようとするのはやめましょう。
ありのままの子どもを受け止め抱きしめる
とは言え、子どものこととなると親はなかなか冷静にはなれません。子どもから「学校に行きたくない」と言われたら、大変なショックを受けることでしょう。子どもは言葉を絞り出し、その言葉を聞いたお母さんやお父さんの表情を見ています。その時、怒った表情を読み取ると、もう正直な気持ちは言えなくなってしまい、お母さんがショックを受けた表情をすると子どもも動揺してしまいます。その時、「そうだったんだ、よく教えてくれたね。」と言えるといいですね。もちろん、それが難しいということはよく分かります。まずは、ありのままの子どもを受け止めてあげてください。子どもは親が大好きです。親に心配をかけたくない、傷つけたくないと本心を隠し、期待に応えようと必死で頑張っています。
心配は少しそばに置いて、「応援するよ。寂しい思いをさせていたのならごめんね。そのままのあなたが大好きだよ。いつでもあなたの味方だよ」と、しっかりと口に出してメッセージを伝えてあげてください。そして「一緒に頑張ろう」という姿勢でいてください。外で自信を失いがちな子どもたちには、自信を回復させてあげる安全基地が必要です。その安全基地が家であり、お父さん、お母さんをはじめとする身近な人なのですから。
不登校支援を強化する広島の学校現場
正直に言うと不登校を改善する「こうすべき」という正解はありません。子ども、親のそれぞれの性格など、ケースバイケースで対応は違うからです。遠慮せず、まずは学校に相談してください。担任の先生、養護教諭、校長先生、その他に話しやすい先生がいれば、誰でもかまいません。そしてできれば、「子どもがこういう理由で行きたくないと言っています」と、親が先走って子どもの気持ちを代弁するのではなく、子どもの口から自分の意思を話せる環境をつくってあげてください。
そして、子どもの意思を大切に支援することが重要です。教室に入りたくなければ保健室など子どもが行きやすい場所、行ける時間帯に行けばいいのです。子ども自身が勉強に心配を持てば、先生はきっと宿題はどうしますか、こんな方法もありますと提案してくれるでしょう。一人で悩まず相談すれば、学校の中で、その子その子に対応した支援体制が整えられていくはずです。

広島県教育委員会は2019年に、県内の指定11校に、不登校傾向の児童生徒の支援のためにスペシャルサポートルーム(SSR)を作りました。2024年度には、小中合わせて、全42校に設置が広がっています。また最近は、どこの学校にもスクールカウンセラーが来校しますし、どこの市区町村にも相談窓口はあります。保護者が相談する窓口は以前に比べて確実に広がっています。加えて、現在の小学校現場では、不登校=ダメという認識は徐々になくなっています。選択肢はたくさんありますから、どうか一人で全て抱えずに、周りを巻き込みながら子育てをしてください。
世間の常識に囚われず子どもの自立を見守る
子育てにおいて、お母さんが占めるウェイトは現在も大きいと思います。これまで精一杯、お母さんは子育てをやってこられたと思います。子育ては、誰から習うわけでもありません。お母さんにとっても、お母さんであることが初めての経験です。子育て術系の本もたくさんありますが、その通りにはいかないのが現状です。だから、まずお母さんが、「自分はよく頑張っている」とご自身を認めてください。お母さんが自分を否定しても、子どもは全く嬉しくありません。

決して子どもの不登校を安易に容認しているわけではありませんが、小学校に行かないくらいで、人生が終わるわけではありません。私は小学校生活の中で多くの不登校傾向児童と出逢ってきました。なかには、5年間不登校の子と向き合った経験があります。しかし、彼は今、立派に成長し、素敵なお父さんになっています。
人生は小さな挫折の積み重ねです。つまり、それを自ら乗り越える力を子どもに付けさせることが大事なのです。学校に行くことが最終目標ではありません。一番大切なのは、子どもの自立です。

変化し続ける社会において、「学校が全て」という過去の固定観念に縛られることなく、子どもにしっかり目を向けることから始めてみませんか?不登校という現実に直面すると、子ども保護者もとっても苦しい毎日を送るかもしれません。でも、その状態がずっと続くわけではありません。次の一歩を踏み出すときが必ず来ます。辛い経験は、いつか必ず役に立ちます。子どもにとっても、親にとっても、人生を切り拓く大きな武器になってくれるはずですから。
 
寺西明子 広島文化学園大学 人間健康学部 スポーツ健康福祉学科 助教
広島県呉市内の小学校6校に35年間、養護教諭として勤務。保健室にて、悩みを抱えた子どもたちや保護者に多く関わる。2014年から広島「もみじの会」(1型糖尿病患者会)会長として、県内近県の1型糖尿病の患児と家族の支援や、患児の自立のための活動を行っている。2018年にはJKYBライフスキル教育(健康教育)コーディネーターを取得し、学校教育関係者や学生に子どもたちのセルフエスティーム向上のための教育を推進。2022年より大学にて養護教諭の養成にあたっている。

【よくある相談シリーズ】子どもがアダルト動画にアクセスしていました。どう対応すれば…。

子どもが性について興味を持ち始めたとき、どう接すればいいか戸惑うママやパパもいるのではないでしょうか。子どもを守るためにも親が子どもへ伝えなくてはならないもののどう話していいかわからない場面もあります。今回は、産婦人科医として第一線を走り、日本各地で性教育の講演を行う、河野産婦人科クリニックの河野先生に、家庭での性教育や性にまつわる親の心構えについて聞ききました。
小さい頃からが大事!子どもの疑問は性教育を始めるチャンス
多くの親御さんは、子どもから「どうやったら子どもができるの?」と聞かれたことがあるでしょう。子どもは、外界のさまざまなものに興味を持ち、かつ疑問を持ちます。体や性器、命、赤ちゃんについても。そして、その質問を親に投げかけたりします。成長する過程において、当たり前に起きることです。見たい、知りたい欲は抑えられません。それらの質問があったら、まさに性教育を始めるチャンスでもあります。

その時、決してはぐらかしてはいけません。逃げないで、ごまかさないで。子どもたちは小さい頃から絵本などで、または小学校の授業で動物の交尾を学んでいるはずです。つまり、ただ事実を伝えればいいのです。「人間も動物や昆虫と同じ。交尾で赤ちゃんができる。人間の場合は交尾とはいわず、性交、またはセックスといったりする」と。

子どもの素朴な質問にきちんと答えてあげられるのが、親ができる子どもへの性教育です。目を見ながら、しっかり真剣に本当のことを伝えてください。
はぐらかさず真正面から子どもと向き合う
子どもの質問をはぐらかすと、「こういう質問は、ママやパパにはしてはいけない」と子どもは認識します。そこで始まるのが自力での答え探しです。
最近ではインターネットの普及により、パソコンやスマホから、年齢問わず性に関する情報を誰でも簡単に入手できる時代になりました。その他にも、友達から聞いたり、テレビや雑誌から入ってくることもあるでしょう。しかし、そこから得る情報は嘘だらけです。例えばアダルト動画は演技の世界であって、セックスの仕方を学ぶものではありません。男性のマスターベーション用に作られているものです。中には暴力的なシーンが含まれているものもあり、それが当たり前のセックスだと認識されてしまう恐ろしさがあります。

また近年、初交年齢の低下がみられます。これまでに私は、小学生女子の出産に2件立ち合いました。小学生でも、生理がきていれば妊娠します。相手の男子は、どちらとも中学生でした。小学生の妊娠はほぼ出産になります。なぜなら、「性は妊娠する行為」という思考に繋がっておらず、気が付けば中絶を選択肢に入れる時期を過ぎているからです。つわりで体調が悪く病院にかかっても、医者も親も小学生が妊娠しているとは思いません。自家中毒症だと判断され点滴などの治療を受け、お腹が大きくなってから、やっと妊娠に気が付くのです。

こんな悲しい状況を生まないために、子どもにはまともな情報を与えなければなりません。自分自身、そして誰かを傷つけてしまうことにならないためにも、セックスは妊娠に繋がるもの、アダルト動画は虚像の世界だと教えることが大切です。直接話しにくければ、子ども向けにわかりやすく書かれた性教育の本や、医師が監修した若い世代向けの性交に関する本もあります。それらを活用するのもいいでしょう。
子どもが相談しやすい環境づくりを
思春期になると、反抗期も相まって子どもは親を避けるようになる場合もあります。そんなときは無理強いせず、子どもが安心して過ごせる環境をつくりましょう。子どもにもプライバシーがありますから、こそこそと踏み入ってはいけません。「ほんとに困った時には助けるよ。私はあなたの味方だよ。辛いときは一緒に考える相談相手となる。それだけは忘れないで」と繰り返し伝えていただきたいのです。性のことだけでなく、子どもは友達や学校、進路のことなど、年齢を重ねるごとにいろいろな悩みを抱えていきます。そんなときに、SOSを発せられる親がいるという安心できる環境をつくってあげてください。

また、親には相談しづらいことを話せる大人が周囲にいるとより良いでしょう。自治体の電話相談、学校の養護教諭の先生、親戚など、頼れる大人がいることを伝えてあげてください。
セックスは恥ずかしいものではない
残念ながら、今の日本では、真っ当な性教育を子どもたちは学校で受けることはできません。海外の性教育先進国からかなり遅れをとり、子どもたちに伝えられる内容はまだまだ限定されているのが現状です。子どもの性に関する無知は、きちんと真正面から伝えていない大人の責任です。

性教育の講演で子どもたちに話す性の条件があります。「ほんとに自分は今この人と心から望んでセックスをするのか。体だけでなく、心と心が裸になれるのか。この人はどんな人なんだろう…、妊娠したら…、親にバレたら…、などビクビクしつつ警戒心を持ちながらのセックスは絶対いい行為にはならないよ」と。セックスは本来、とても素敵な行為です。信頼のおける人間関係があって、初めて性行為が成り立ちます。それは大人も同じです。

性はいやらしいもの、恥ずかしいもの、隠さなきゃいけないものとして捉えていませんか?大人たちが性をどう捉え、どう実行していっているか。大人を巡る性の状況が一体どういうものなのか。まさに今、それが問われているのだと思います。愛情の延長線上と密な人間関係の中に素晴らしい性行為があるわけですから、子どもの前でも堂々としていればいいのです。

性に関する問題以前に、子どもたちには人との十分なコミュニケーションを大切にしてほしいと思います。そして性の問題や困りごとを陰で抱えていかなければいけない状況を脱するには、まず親が性について勉強し、「話をするのは恥ずかしくない」という心構えでいることが、子どもへの何よりのメッセージになるのではと思います。
河野美代子 河野産婦人科クリニック 院長
1947年広島県生まれ。1972年に広島大学医学部卒業後、同医学部産婦人科婦人科学教室へ入室。1981年より、特定医療法人・あかね会土屋総合病院に勤務し、産婦人科部長として活躍する。1990年、広島市内に「河野産婦人科クリニック」を開業。第11回エイボン女性教育賞、日本家族計画協会長賞、母子保健家族計画事業功労者厚生労働大臣表彰を受賞。『さらば、悲しみの性』、『ティーンズ・ボディQ&A』など多数の著者があり、10代の若者や性同一性障害に悩む人、更年期の女性など、あらゆる性の悩みを持つ人に寄り添い続ける。診療の傍ら、性教育などの講演を全国で行う。
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