幻の橋へ
6月のブログで書いた「幻の橋」へと、ついに行って参りました。 北海道・帯広空港から車でおよそ2時間。舗装された道から林道に入り、車で15分ほど・・・。 深い森を抜けた先に、その橋はありました。 「タウシュベツ川橋梁」。 1937(昭和12)年に架けられたコンクリート製の鉄道橋で、かつては国鉄士幌線がこの上を走っていました。士幌線は森林を縫うように敷設された鉄路だったため、資材調達は困難を極めたといいます。この橋梁も、ほとんどが現地調達の石や砂利、水を使って造られました。誤解を恐れずに言えば、極めて粗製の橋梁といえそうです。鉄道橋としての役目は短く、1955(昭和30)年、ダム建設に伴う士幌線の線路付け替えにより、糠平湖(人造湖)の底に沈みました。それからは取り壊されることもなく、かといって積極的に保存されるわけでもなく、60年以上の月日が流れています。湖水の増減によって姿が現れたり消えたりする特徴から、いつしか「幻の橋」と呼ばれるようになりました。 北の大地ゆえ、季節によって氷結と融解を繰り返すダム湖。その中に放置され、年月を重ねてきたため、昭和の建築とは にわかに信じがたいほど風化が進んでいます。橋のあちこちが崩れ、現地調達の砂利は元あった大地に還りつつあります。聞けば、アーチ橋の姿を保っていられる時間は、もうあと何年もないとのことでした。 ただ、実際にその前に立つと、そのボロボロの姿から無数のコトバが聞こえてくる気がしました。目を閉じると、橋の上を往来した汽車の音や、揺られるお客さんの話し声が聞こえてくるような。・・・大げさかもしれませんが。 近いうちに崩れ去ってしまうかもしれない“ボロボロ”のタウシュベツ川橋梁。しかし、そこには、今なお、美しく濃密な時間が流れていました。
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