沖縄名産「海ぶどう」を竹原の特産品に 危機に瀕する漁業の救世主になるか

9/9(水) 19:32

漁獲量の減少と就業者の高齢化に悩む広島県の漁業。高齢者でもできる漁業と地元活性化を目指して地域が一体となった新たな取り組みが始まっています。

瀬戸内の豊かな海の幸に恵まれた広島県。しかし、今、漁業就業者の高齢化により、県内の漁業はピンチを迎えています。平成30年の調査では県内の漁業就業者の5割以上が65歳を超えています。
そんな中、新しい漁業への挑戦が始まりました。竹原市の芸南漁業協同組合。組合員の平均年齢は70歳ちかくになります。この組合が高齢者でも出来る漁業として、5年前から取り組んでいるのが沖縄の名産品「海ぶどう」です。
【芸南漁業協同組合・福本悟組合長】
「結構、年齢が高い人が多い。ここだったら時化はないし、寒い冬でもここで仕事が出来ますので順調にいったら、ここで働いてもらえたら年配の人でも大丈夫かなという気持ちもあった」
水温の調整。日光の当て方。種を取って増やしていく作業。全てがゼロからのスタートでした。
【芸南漁業協同組合・福本悟組合長】
「ネットに植えるタネを作るのが大変だった。タネとは普通の海ぶどうを植えるのですが、こういう(海ぶどうの)スジを取ったものを向こうの小さな水槽で管理して、ある程度したら、また、ネットに挟んで植え替えるようにする。(まず、タネを作らなければいけない?)そのタネを確保するのに、ほぼ、2年かかった」
そして、昨年、7月。ついに初出荷に漕ぎつけました。しかし、ここで新たな問題が・・。

養殖には成功したものの、販売するためには販路を作らなければなりません。高齢化に悩む組合には大きな課題です。その解決に動いたのが竹原市役所でした。漁業の支援と「海ぶどう」を竹原の新たな名産にしたい担当したのは産業振興課の木原さんでした。
【竹原市産業振興課・木原昌伸さん】
「ものを売るという事をするとは思っていなかったので、市の職員になってですね。地元の方に買って頂いたり、そういった取り組みをさせて頂きながら、市内の飲食店さんもちょっと扱ってみようかという所があって、そこに納品させてもらって料理に使ってもらったり、そういった所から、徐々に、徐々に、販路を広げていってもらました」
ものを売るのは初めての経験。周囲のスタッフに協力してもらいながらの営業と販売に奮闘する毎日。
【竹原市産業振興課・木原昌伸さんとお客さんのやりとり】
「沖縄で名産になっているのですが、竹原でも・・。(どうやって食べるの?)ポン酢にちょっとつけてもらって食べてもらうような。あと、サラダに海藻みたいに使ってもらえれば。(洗って?)洗ってもいいし、このままでも大丈夫です」

木原さんの努力が少しずつ実り始めていきます。隣町、東広島市のスーパーマーケットが地元特産品のコーナーを作ってくれることになりました。担当するバイヤーの山下さん。
【西條商事株式会社・山下勝課長代理】
「正直、海ぶどうというのはマニアックなものなので、道の駅で売れているという話はもらっていたのですが、道の駅とスーパーではお客さんの求めるものが違うのでどうなるのかなというのは思ったのですが、取り敢えず、置いてみようかなと・・。置いてよかったです。あとは世に広めて行くだけです。竹原産というのをもっと前面に押し出してもいいのかなというのはあるのですが、まだ、何となく弱い感じがあるので・・」

竹原の海ぶどう。事業は生産から販売へ。次のステップを迎えています。生産量の増加、流通コストの問題など課題は、まだまだ、ありますが企業と生産者と行政が一体となった新たな産業が瀬戸内に生まれ始めています。
【芸南漁業協同組合・福本悟組合長】
「うちが成功したら広島県の漁業者にはある程度、ノウハウやタネを分けてあげてもいいと思っている。まだ、うちが順調にいってないので、(順調に)行きだしたら、より、皆が儲けてくれたらいいと思っている」
【竹原市産業振興課・木原昌伸さん】
「海ぶどうが成功して漁協の皆さん、漁業に関わる皆さんが幸せになっていただけるのが市役所の一番の役割かなと思っていますので、まだ、まだ、いくつも、いくつも、ハードルはあるのですが、ひとつ、ひとつ、乗り越えさせて頂ければと思います」