客の迷惑行為「カスハラ」の実態に迫る  どう対応すれば… 『毅然と』『助けを求める』見えてきた課題

7/1(月) 18:59

近年、社会問題化している客の迷惑行為「カスタマーハラスメント」いわゆる「カスハラ」先週、航空会社大手のJALとANAは2社共同でカスハラ対策の方針を策定したと発表しました。

暴言だけでなく、業務スペースの立ち入りや盗撮など行き過ぎた9つの行為をカスハラに該当するとし、厳正に対処する方針です。
広島県内の事業者も、この「カスハラ」に我慢の限界を迎えています。
生々しい音声データから見えてきた課題を「ツイセキ」します。

<電話の音声>
【客】「だから、理由がないけど渡さないということですよね。あなたの主張だと」
【担当者】「だから、警察からの要請であれば」
【客】「だから、だから、だから、だから、理由がない。だから、だから、だから、理由がないということですよね。だから、理由がないのに渡さないということですよね。早く『はい』って言えばいいじゃないですか」

執拗に、バスのドライブレコーダーの開示を求めてくる客。
これは「運転に危険を感じた。訴訟を起こす」として、県内のバス会社にかかってきた電話です。

<電話の音声>
「はい。か、いいえ。で答えてください。あなたは、理由がないのにデータを提出しないんですね」
【担当者】「理由は言っても理解してもらえないので警察の要請であれば…」
【客】「理由は、理由は、はい。か、いいえ。で答えてください。はい。は、できますか。
あなたは理由がないのに」
【担当者】「言っていますよ。はい。か、いいえ。じゃなくて…」
【客】「はい。か。いいえ。ですよ」
【担当者】「警察の要請であればお出しします」
【客】「あなた日本語は分かりますか、質問しますよ。もう1回あなたは理由がないのに証拠を提出しないんですか」

30分間にわたって一方的に同じ質問を繰り返し、「日本語は分かりますか」と担当者を否定するような言葉まで飛び出しました。

【バス会社の担当者】
「圧迫感もありましたし、どのようにしたら理解していただけるんだろうという…やり取りは延々と続きましたね」

【バス会社の責任者】
「ほんの一部のこうしたカスハラ行為によってお客さんのために一生懸命やろうという職員がやめていっているという現実を、この音声を聞くことによって、お客様に判断していただきたいと思います」

企業の「クレーマー対策」にあたっている弁護士は、これは迷惑行為「カスハラ」にあたると指摘します。

【企業のクレーマー対策に詳しい 島田 直行 弁護士】
「(これは、どこがカスハラにあたると思いますかね) 一方的な批判であり、糾弾ということになっていますし、やはり、やられた側としてはサービス業ですから、相手はお客様ということで反論も自由にできないということをうまく利用されて、一方的に詰めている。しかも、それが30分にわたっているというのは、あまりにも方法としても相当性を逸脱するかなと考えます」

【五十川 記者】
「一言にクレームと言っても様々です。県内の他の運行事業者を取材すると、個別の事情があるとは言え、行き過ぎているんではないかなといようなクレームがまだまだありました」

<電話の音声>
【客】「一台お願い」
【担当者】「ごめんなさいね。きょうはもう残っていないんですよ」
【客】「うるさいわい!どっかおらんのか、ボケが!いい加減にせえよ」

広島県内のタクシー会社は配車室でオペレーターが、一方的な「カスハラ」を受けた場合、データを残し「毅然とした対応」をとるよう心掛けています。
過去に、突然怒鳴りつけたり、すぐ乗車できないことを理由に暴言を浴びせたりしてくる客がいました。

<電話の音声>
【客】「逃げんねんな」
【担当者】「逃げるんではなくて、本当に関連がまったくないので、アプリはアプリ。電話の配車は電話という配車なので」
【客】「ええねんな、それでお前、タクシー会社やろってな、それでええねんやな、その対応でええんやなって。な。あ、おい!」

スマートフォンアプリと電話によるタクシーの配車は別の仕組みだと説明しても、納得せず、しつこく前日に乗った車両を呼ぼうとする客。
このタクシー会社は今後、車両を手配できない時間帯などは自動音声サービスを導入するなど、「従業員を守る改善策」を検討しています。

【企業のクレーマー対策に詳しい 島田 直行 弁護士】
「私たちが、今しないといけないのは、カスハラの被害にあっている会社なり、担当者がいることを、まず社会全体の共通認識を持つということ。抜本的解決ができるかはどこの誰かではなくて、これを聞いている一人一人だと思います。自分自身がカスハラになっていないかというのは考えたほうがいいということです。我々はいつ闇落ちするか分からない」

これは県内のバス会社にかかってきた電話です。

<電話の音声>
【客】「こういうことが危ないから気をつけてと言おうとしたら『行き届いていないです』とか『全員全員に伝わっていないと思います』って訳がわからんじゃないですか」
【担当者】「我々のほうも根気強くやらせていただきたいと思うんです」
【客】「そんな弱気な感じで言われたら、こっちも、なんでってなるじゃないですか」
【担当者】「申し訳ございません」
【客】「行って話をしましょうか会社まで行って、今から」

謝罪をしても、運転が気に食わなかったとして、会社に乗り込もうとまでする人。

【バス会社の担当者】
「(行き過ぎているんじゃないかな。このクレームは…というのは思うんじゃないですか)「ありますね。趣旨がどうなんかな、指摘されたことを本来、謝罪するべきものだと思うんですよね。外れていった方向にですね。なってくるというのもあります」

それぞれ、事情は異なり、当然、事業者側に落ち度があることもありますが、このバス会社は従業員を守るため「カスハラ対応」のマニュアルを策定中です。

【県内のバス会社責任者】
「常にサービス業ですから、サービスの向上というのは追求していかなくてはならないと思うんですが、終わりはないと思うんですが、やはり一部の度を越したクレーマーの方に対しては毅然と会社として乗務員を守るために、その向こうには交通弱者のお客様を守るために安定したサービスを提供するためにやらなくちゃいけない」

社会問題化する「カスハラ」法律のプロも企業側が、自分たちだけで事態を収束できない場合、躊躇せず第三者に助けを求めることが必要だと強調します。

【企業のクレーマー対策に詳しい 島田 直行 弁護士】
「カスハラ対策がきちんとできている会社は、とても淡々としています。それはマニュアルがあって、そこまで言われたら警察を呼ぶ、弁護士に委嘱するという。最終的にそれが犯罪になるかどうかというのは我々が決められることではない。刑事司法の中の話です。我々として、そこに被害があるという認識があるのであれば、その場をおさめないといけない判断するのであれば、(警察や弁護士など)呼ぶべきですし、ほかの手立てはないということです」

<スタジオ>
今回、TSSの取材に応じた複数の事業者は、とても悩みながらも、やはり「従業員を守るんだ」「カスハラをこのままにしてはいけない」という強い決意で音声データを公開してくれました。山内さん、カスハラどう感じてますか。

【コメンテーター:TSS野球解説者 山内泰幸さん】
「自分自身も気を付けないといけない。過度に『自分が客だ』。『お金を払っている』という意識を持たないようにしたい」