広電宮島線沿線の魅力 大正創業『御砂焼』窯元 旅の無事を感謝する気持ちが原点  広電宮島口駅

7/24(水) 20:30

鉄道の魅力を熱くお伝えする野川キャスターの「てつたま」。野川さんお願いします。

【野川キャスター】
今回も広島電鉄宮島線沿線の魅力を伝えるポスター展を取材しています。
これまで5つの駅を紹介してきましたが、今回で最終回。
それでは終点、宮島口へ向かって出発進行!

<VTR>
1駅1枚。広島電鉄宮島線の駅周辺のありのままの魅力を紹介する『宮島線と二十一の風景と』。
これまで、夜は立ち飲みができるお肉屋さんに、草津名物、明治創業のかまぼこ店。
さらには公園にたたずむかつての灯台や地元で長年愛されるイタリアンレストラン。
太古の時代より存在する神社まで…5つの駅の魅力を紹介してきました。

そして終点、宮島口の前に…

【野川アナ・広島電鉄 不動産営業部 藤 孝紘さん】
「ちょっとその手前の隠しコマンド私、毎回楽しみにしてます」
「あ、本当ですか?」
「次は臨時停止、宮島ボートレース場」
「路線図に載っていないんだけれども、結構な頻度で私、来るたびに止まってる気がする」「はい、臨時停車駅なんですよ」
「ボートレースがある時、イベント開催時期に止まるという」

宮島ボートレース場駅は、終点の広電宮島口駅からわずか200mほど。
ボートレースの開催日に限って停車しますが、宮島以外のボートレース開催日にも停車するため、臨時駅といいながら、深夜早朝を除いて毎日停車するんですね。
お待たせしました。
広電宮島口駅到着です。

【広島電鉄 不動産営業部 藤 孝紘さん・野川アナ】
「この大屋根くぐっていく感覚っていうのは終着駅ならではというか」
「そして、広電さんでは珍しい、ABC順のホーム」
「今日はEか」
「今日はEですね」

広電西広島駅からおよそ16キロ。
終点、広電宮島口駅に到着しました。
さっそく、ポスターを探すと…駅舎の外、フェリーターミナルの前に掲示されていました。

【広島電鉄 不動産営業部 藤 孝紘さん・野川アナ】
「最後、広電宮島口の宮島御砂焼。対厳堂さんのポスターをここに」
「職人さんの背中がとっても印象に残りますね」

対厳堂は大正元年、1912年創業の老舗の窯元です。

【広島電鉄 不動産営業部 藤 孝紘さん・野川アナ】
「お邪魔します」
「失礼します。これが御砂焼ですか?」
「素敵な作品いっぱい飾ってありますよね」
「淡い色の作品も多いんですね。もみじのね、柄がとっても上品に、まるで本物の葉っぱそのままこう貼り付けたかのような」

御砂焼の歴史は、江戸時代、400年以上前にまで遡り、砂を土器に練りこんで作ったのが始まりとされています。
さっそく、あのポスターが撮影された工房へと案内してもらいました。

【対厳堂 三代 山根 興哉さん・野川アナ・広島電鉄 不動産営業部 藤 孝紘さん】
「こちらが工房になります」
「こちらでもう練り上げて?」
「そうですね。ここが形を作るろくろが置いてあるスペースになるんですかね」
「まさに職人の仕事場という雰囲気がいろんなところにありますね」

工房は大正元年、創業当時からほぼそのまま。
ポスターはここで撮影され、ろくろを回す職人の日常が切り取られていました。
御砂焼を作るうえで欠かせないのが、このお砂です。

【対厳堂 三代 山根 興哉さん・野川アナ・広島電鉄 不動産営業部 藤 孝紘さん】
「2種類?」
「私から見て左手にあるのが、ご祈祷して頂いてきた、そのままのお砂なんですが」
「どこのお砂かといえばですね。それは厳島神社になるわけですよね」
「そうですね、はい。昔、安芸の国の人が旅に出るときに、お砂を(厳島神社で)祈祷していただいて、お守り代わりにして旅に行ったっていうことなんですね。
無事、旅先に着くと、そこの(国の神社で)少し(お砂を)いただいて、また無事帰郷できたら、神社にお礼詣りするっていう、お砂返しの風習があったんですが、それがある人が粘土に練りこんで祭器などを作って。それをお礼参りの代わりにしたというところから始まったと言われています」

御砂焼は、厳島神社の神殿の下から採取した砂を祈祷し、粘土に練りこんで、作られています。陶器も生活様式の変化に合わせて、お砂を細かいパウダー状に加工して使うことが多くなっているそうです。
今回特別に、御砂焼が御砂焼たるゆえん、お砂を練りこんでいく工程を見せてもらいました。

【野川アナ・対厳堂 三代 山根 興哉さん・広島電鉄 不動産営業部 藤 孝紘さん】
「これ、こねるのも、力使いそうですね」
「そうですね。結構長くやってるとしんどくなってくる」
「やっぱり先代、先々代から受け継がれてきたものでありますね」
「そうですね。やっぱりここはちょっと、その想いみたいなのがね。お砂も神職さんにとっていただいて。海の砂なので、ちょっと塩分含んでるんですね。そうすると、焼き物にちょっと影響が出るので。というのと、ご祈祷していただくのに、やっぱり洗われるんですね、そのままっていうことはないので。やっぱり塩抜きみたいなものをしていただいてる感じなんですよ。清められているので、神前にお供えして祈祷して頂くので。その辺の想いもここまでして頂いているっていうのが、やっぱりあるので」
「器一つに色んな思いが込められる訳ですね」
「そうですね、やっぱり感謝しかないので。お砂が頂けるっていうのも感謝ですし、そこまでして頂けるっていうのもね。やっぱり」
「広電宮島口といえば、宮島線の象徴的な駅ですよ。そこの一枚として、この御砂焼きの風景を切り取ったのはどんな理由ですか?」
「やっぱり宮島口って、宮島に渡る観光的な側面とか、そのイメージが皆さん強いかと思うんですけど。どっちかというと、宮島口にはこういう沿線の工芸品として御砂焼きが日常の親しまれる道具としてあるんだっていうことを、一つ伝えたいということで。生活風景を今回、着目したので。こういった自分達に親しみある道具が作られている風景っていうのを、今回伝えたかったというところですね」
「これからどんな気持ち込めて、作り続けていかれますか?」
「そうですね、感謝から始まった、お砂いただいて『無事帰ってきてありがとうございます』っていうところから始まった焼き物なので、その感謝の気持ちを常に第一に考えて、ものづくりをして行きたいなと思ってます」

そして、対厳堂では、御砂焼に絵付けができるということで…私も体験させてもらいました。
何を作っているのかは、この後、スタジオでお披露目します。

【対厳堂 三代 山根 興哉さん・野川アナ・広島電鉄 不動産営業部 藤 孝紘さん】
「ご主人いかがでしょうか?」
「いいんじゃないですかね。78点ぐらいで」
「78点!焼くと90点以上いくかな」
「おーっと12点以上加点されるんですか?焼きで」
「ちょっとプレッシャーかけました、自分で」
「職人技で加点をしていただいて」

西広島から宮島口まで6つの駅の魅力を感じて、今回の宮島線の旅、終了です。

【野川アナ・広島電鉄 不動産営業部 藤 孝紘さん】
「これ1駅1駅降りていくとですね。そこにはそこで暮らす人であったり、働いている人の営みがあって、そこをしっかりとこう覗かせていただくと、味わい深い世界が広がってるんだなと思いました」
「西広島に角打ちのお店があるんだとか、こんな灯台が残ってるんだとか、こういう地御前にアイデンティティが残る神社があるんだとか。たぶん、地元の人は誇らしく思っているでしょうけど、それを知らない人が今回気づいて、それを周遊するきっかけとして、ポスター展がその一助になっていれば幸いです」
「皆さんもぜひ広電宮島線に乗って、今まで降りたことのない街、降りたことのない駅で降りて、ちょっと日常をのぞいてみてはいかがでしょうか?」

<スタジオ>
【野川キャスター】
ということで秘密ということもなかったんですけど、皿に“てつたま”のロゴを描かせていただきました。対厳堂 三代 山根 興哉さんの焼きの技術で、私の凡庸なイラストも非常に素敵に見えてくる。そんな1枚になりました。