福部真子選手 逆境を乗り越え掴んだパリ五輪「どんな景色が待っているのか楽しみ」女子100mH

8/5(月) 20:00

特集は、日本勢の健闘に沸くパリオリンピック、陸上女子100メートルハードルに出場する広島県府中町出身の福部 真子 選手です。決して平坦ではなかったオリンピックへの道のり。逆境を乗り越え掴んだパリへの思いに迫りました。

7月に行われた記者会見。福部は、これまでの思いを明かしました。

【福部 真子 選手】
「ブダペストの世界選手権の参加標準記録を突破していながら、4位で落選して、ずっともう一度、パリオリンピックの参加標準記録を切って強くなって、この舞台に戻ってくると、強く自分の中で思っていたので」

2年前、オレゴン世界陸上に出場した福部は全日本実業団陸上で翌年の世界選手権の参加標準記録を突破しました。
シーズンオフの冬季練習、参加標準記録を切っているアドバンテージから例年とは違うテーマでトレーニングに臨んでいました。
世界レベルを目指すための体づくり、筋力アップをはかりました。

【尾崎 雄祐 コーチ】
「世界レベルのフィジカルを手に入れることは間違いなく、大事なことだと思っているので、技術を手に入れるためにフィジカル的な準備をしっかりやることが、やはり求められると思います」

並行してジムでのウエートトレーニングも、スプリント・トレーニングやハードリングの面では1か月遅いペースながら、海外の選手と戦うため徹底してフィジカルの強化に努めました。
2023年4月シーズンインを前に行われた広島県内の記録会。低い気温に悩まされタイムは平凡なものに。しかし、冬季練習には自信を持っていました。

【福部 真子 選手】
「例えで言うと、フェラーリを買ったけど乗りこなせていないという感じ。エンジン自体は去年と比べものにならないエンジンを積めていることは実感しているのですが、まだそれに体が乗りこなせていない感覚をすごく感じるので」

織田幹雄記念国際陸上から始まった春のシーズンしかし、タイムは思ったほど伸びてきません。徐々に気持ちにも変化が現れてきました。

【福部 真子 選手】
「筋力と かみあっていない中で、12秒台が、安定して出ているところは、ワンランク上のレベルにいけたのかなと感じているのですが、女子100mハードルのレベル自体も、ものすごく上がっているというところでは、あせりは隠し切れないです」

6月ブダペスト世界陸上の選考レースとなった日本選手権。福部は3位以内で出場が決まります。

レースの前に口にした不安は現実ものとなります。

4人の選手がほぼ同時にフィニッシュしかし、わずか3/1000秒の差で世界陸上の出場を逃しました。
その後も調子は上向くことなく2023年のシーズンを終えました。

【福部 真子 選手】
「今年1本も自分のタイミングをつかめた状態で走れていないので、それに加えて筋力がついたり、スプリントスピードがついた中で、去年とは違う形で、自己ベストの12秒73を出していかないといけないのですが、それを見つけられていない状態で、不安が出てきていると思います」

2024年広島を離れ、温暖な鹿児島で冬季練習を行いました。

【福部 真子 選手】
「寒いとスピードを出したくても出てこない。自分が走れているのか、走れていないのか分からなくなると不安になってくるので」

テーマは「地面にしっかり力を伝える」跳躍の高さを意識したジャンプトレーニングやハードル走につながるミニハードル走など走りを意識したものになりました。

【尾崎 雄祐 コーチ】
「去年は体のエンジン部分(筋力とパワー)がすごく大きくなって、そのエンジンの力をしっかり地面に伝えられるような足の腱の部分とか、バネみたいなところが筋力にともなってなかったところがあったと思ったので、そこの改善を重点的に取り組みました」

フィジカルの強化とスプリントスピードの向上。それによって失ったハードリングへの感覚表情とは裏腹に不安と葛藤の中でパリを目指していました。

【福部 真子 選手】
「逆に今の筋肉で前の動き、インナーの動きがきいてくれば、更なるスピードアップを見込めるので(体を絞ってもとに戻すかどうか)悩んでます」

6月、布勢スプリント、福部はまだパリオリンピックの参加標準記録を切れていません。

この日は追い風1.9m。記録を狙う上で絶好のコンディションでした。
しかし、追い風を生かせず、この日も参加標準記録を切ることはできませんでした。

【福部 真子 選手】
「スタートからもう少し攻めていければもっともっと、タイムは出ていたと思うのですが、そうですね、腰が途中から少し低くなって、修正がきかなかったところがあったので、やはり追い風にしっかり乗っていかないと12秒7台も見えてこないし、ものにできなかったことが正直なところです」

このレースで分かった弱点課題克服のため、新たなことに取り組みます。
試合より15センチ高いハードルで練習を行うことになりました。

【尾崎 雄祐 コーチ】
「レースより高いハードルでの跳躍トレーニング、しっかりと楽に越えられるための跳躍力をつけることが、一つ高いハードルを越えるための体の動かし方というのは(通常の高さ)低いハードルを効率よく高い重心で越えるための体の使い方が強調される。そこを狙って練習に取り組みました」

【福部 真子 選手】
「あの練習を始めてから自分のタイミングというか高さの作り方というのを体現できるようになってきているので、あの練習はすごく大事な練習だなと思っています」

パリオリンピックの選考レース日本選手権、(2024年6月29日)この大会で参加標準記録を切らない限りパリへの道は途絶えます。翌日の決勝は雨の予報。準決勝で勝負に出ます。
スタートで飛び出すと滑らかなハードリングでどんどん前に出ます。
後半も失速することなく、そのままゴール。(12秒75)パリオリンピックの参加標準記録(12秒77)を突破。立ちはだかってきた大きな壁を乗り越えました。翌日の決勝、優勝すればその瞬間パリの切符をつかむことができます。
落選の悔しさを胸に過ごしたこの1年フィジカルの強化と裏腹に結果の出ない不安と、戦い抜いた福部は去年よりも強くなっていました。

誰よりも、はやくゴールに飛び込み見事に優勝。ついにパリオリンピックの代表の座をつかみました。

あれから1か月が過ぎ、いよいよ夢の舞台オリンピックのスタートラインに立ちます。

【福部 真子 選手】
「オレゴン世界陸上に出場した2年前とは違う気持ちでスタートラインに立てるので、立った時にどんな景色が待っているのかというのは、ものすごく楽しみなのですが、やはり現実をみると世界のトップクラスの選手もかなりレベルを上げていますし、参加標準記録の突破者もかなりいるので、参加するだけじゃなくて、戦いにいきたいと思っているので、どの程度、自分が戦えるのかなという少しの不安もあって、ちょっとモヤモヤしています」

<スタジオ>
パリへの切符を掴んだあの素敵な笑顔がパリの舞台でも見たいですね。

【コメンテーター:TSS野球解説者 山内泰幸さん】
「いろいろテーマを持って、練習してきた中で、成功もあったり、失敗もあったりして、今ですから。オリンピック前に記録も更新されています。非常に良い状態にあると思うんで、そういった過去の練習を思い出しながらスタートに立ってもらいたいなという感じがします。思い切ってやってもらいたいです」

福部選手は、日本時間の7日午後5時15分に予定される予選に臨みます。