「もうかる農業」をめざす拠点 暑さに強い酒米、最適環境のハウス…現場で使える技術を開発 広島
9/18(水) 18:02
お金をキッカケに広島の暮らしやビジネスに関わるニュースをお伝えするマネー研究所。
まずは、「農業気象地図」
これは、気象庁が発表しているこの1週間の平均気温の平年差を表わしたものです。国内のほとんどが、平年よりも3度以上、高くなっています。
そこで今回のテーマは、「もうかる農業」
今年は、「野菜の高騰」から「令和のコメ騒動」まで、食や農業が注目された夏でした。実は、県内に生産者を支える強い味方があるんです。
《VTR》
東広島市にある県農業技術センター。
ここで、国内有数の研究が行われているんです。
その最前線の舞台となるのが、こちらの農業ハウスです。
【広島県農業技術センター・中島悠太研究員】
「この天井にある遮光カーテンを使って過剰な光を遮っています。このハウスの中に光のセンサーがあってそのセンサーにのったデータのもと自動で閉まったり開いたりして光の調整を行っています」
さらに、こちらも凄いんです。
【広島県農業技術センター・中島悠太研究員】
Q:これですか?
「そこからミストが出てきます。ちょうど今、出始める時です」
Q:これも自動で制御している?
「気温と光、湿度のデータを使いながら自動で暑くなってきたら気温を下げるようになっています」
作物にとって最適な環境を自動でコントロールするシステムを作っていて、実はその仕組み自体を販売しています。
【広島県農業技術センター・中島悠太研究員】
「制御のロジックやプログラムを開発して県内の企業から販売しています。これで暑さは万全に対策ができると思っています」
そんなセンターの一画にあるのが、10年かけて開発した暑さに強い酒米「広系酒45号」が育つ田んぼです。
【広島県農業技術センター・勝場善之助研究員】
「これが45号「広系酒45号」です。今、穂が出たところで花が咲いている状況です」
「広系酒45号」を他の酒米と比較するとコメの中心にあるデンプンが集まった「心白(しんぱく)」といわれる白い部分が大きいのが分かります。
この「心白」のデンプンとこうじ菌が融合して酒ができます。
ですから「心白」が大きいことはいいことなのです。
また、生育時の気温が高いとデンプンが溶けにくくなりますが、これも溶けやすい性質を持っていて、暑くても収穫量が多いという品種なんです。
【広島県農業技術センター・勝場善之助研究員】
「やはり今気温がどんどん上がってきているので高温登熟耐性(暑さに強い)を持つことがこれからは必須になってくると思います」
このセンターでは、「暑さ対策」だけでなく、全国から注目されている研究が多く行われています。
そのひとつが「アスパラ」です。
【広島県農業技術センター・坂本隆行副部長】
「夏場は上の部分に親茎という光合成をする木があってその下からアスパラガスが生えてくるような感じです。収穫を地面の際からとりますから中腰でかがんでとらないといけないので大変な作業です」
その「アスパラ」の栽培を大きく改善したのがこちらです。
【広島県農業技術センター・小林賢吾研究員】
Q:高くなってますよね?
「先ほどのうねと比べるとかなり高くなっています」
これは「枠板式高うね栽培」といわれる農法で、アスパラの生えている「うね」の部分が高くなっています。
香川県の農業試験場で開発されました。
【広島県農業技術センター・小林賢吾研究員】
「そこからさらにプラスして高うねの中の環境をいかに制御するか、周りをかこっている空間の環境もいかに制御するかを加えて、それによって収穫量の飛躍的な増加と品質の向上につなげることができました」
Q:どれくらい増えたのですか?
「路地の畑と比べると最大で8倍くらい増えました」
しかし、収穫量が増えた分、収穫作業に時間と労力がかかってしまうという、新たな問題が発生してしまいました。
それを解決したのが、この方法です。
Q:こういう感じなのですか?
「そのような形です。そのまま横にスライドしてもらう感じです。少し手を伸ばせば収穫物があるという状態です」
これを使えば、体への負担が大幅に軽減し、収穫作業も効率化されます。
【広島県農業技術センター・小林賢吾研究員】
「通常の作業時間と比べると6割の時間で収穫ができる」
労働生産性が上がることで少人数で作業ができたり、これまでより多くの賃金を従業員に支払うことが可能になります。
これは人手不足の現代、経営者にとって大きな強味です。
【広島県農業技術センター・小林賢吾研究員】
「めんどうな難しいところは私たちで研究開発をした上で、それをいかに安く生産者に使ってもらえるかを目指しています」
Q:そこまで考えるのですか?
「そこが非常に大事になります」
費用面も含めて「現場で使えなければ意味がない」というのが、このセンターの考え方です。
そんな中で生まれたのが、この農業ハウスです。
建設用の足場に使う鉄筋を使って作る農業ハウスです。
【広島県農業技術センター・川口岳芳部長】
「コストが低くて強い」
Q:安くできる?
「流通量が多いために安くできる。業者に頼んだりすると千平米あたり1200万円から1300万円くらいいきます。こちらだと資材代で700万円から800万円くらい。自分で建てると最低限の700万円くらいですよね」
このセンターではまず自分たちでやってみて、実際に現場で使えるものを作ることが大切と考えています。
【広島県農業技術センター・川口岳芳部長】
「世に出さないと意味がないという教育をしているので、生産者に必要最低限のものを安く入れる。さらに価格が高騰している中でどうするかを自分たちも作って感じているので、どのようにして安く作るかを考えるのがうちの仕事なので、それを世に出さないと意味がない」
《スタジオ》
【コメンテーター:エディオン女子陸上部アドバイザー・木村文子さん】
「消費者としては、野菜も高騰しているし米も不足して、スーパーに行くと毎回大変だなと思っていたのですが、農業の実態が少しでも変わると消費者にとっての影響も変わってくるのですね」
まずは、「農業気象地図」
これは、気象庁が発表しているこの1週間の平均気温の平年差を表わしたものです。国内のほとんどが、平年よりも3度以上、高くなっています。
そこで今回のテーマは、「もうかる農業」
今年は、「野菜の高騰」から「令和のコメ騒動」まで、食や農業が注目された夏でした。実は、県内に生産者を支える強い味方があるんです。
《VTR》
東広島市にある県農業技術センター。
ここで、国内有数の研究が行われているんです。
その最前線の舞台となるのが、こちらの農業ハウスです。
【広島県農業技術センター・中島悠太研究員】
「この天井にある遮光カーテンを使って過剰な光を遮っています。このハウスの中に光のセンサーがあってそのセンサーにのったデータのもと自動で閉まったり開いたりして光の調整を行っています」
さらに、こちらも凄いんです。
【広島県農業技術センター・中島悠太研究員】
Q:これですか?
「そこからミストが出てきます。ちょうど今、出始める時です」
Q:これも自動で制御している?
「気温と光、湿度のデータを使いながら自動で暑くなってきたら気温を下げるようになっています」
作物にとって最適な環境を自動でコントロールするシステムを作っていて、実はその仕組み自体を販売しています。
【広島県農業技術センター・中島悠太研究員】
「制御のロジックやプログラムを開発して県内の企業から販売しています。これで暑さは万全に対策ができると思っています」
そんなセンターの一画にあるのが、10年かけて開発した暑さに強い酒米「広系酒45号」が育つ田んぼです。
【広島県農業技術センター・勝場善之助研究員】
「これが45号「広系酒45号」です。今、穂が出たところで花が咲いている状況です」
「広系酒45号」を他の酒米と比較するとコメの中心にあるデンプンが集まった「心白(しんぱく)」といわれる白い部分が大きいのが分かります。
この「心白」のデンプンとこうじ菌が融合して酒ができます。
ですから「心白」が大きいことはいいことなのです。
また、生育時の気温が高いとデンプンが溶けにくくなりますが、これも溶けやすい性質を持っていて、暑くても収穫量が多いという品種なんです。
【広島県農業技術センター・勝場善之助研究員】
「やはり今気温がどんどん上がってきているので高温登熟耐性(暑さに強い)を持つことがこれからは必須になってくると思います」
このセンターでは、「暑さ対策」だけでなく、全国から注目されている研究が多く行われています。
そのひとつが「アスパラ」です。
【広島県農業技術センター・坂本隆行副部長】
「夏場は上の部分に親茎という光合成をする木があってその下からアスパラガスが生えてくるような感じです。収穫を地面の際からとりますから中腰でかがんでとらないといけないので大変な作業です」
その「アスパラ」の栽培を大きく改善したのがこちらです。
【広島県農業技術センター・小林賢吾研究員】
Q:高くなってますよね?
「先ほどのうねと比べるとかなり高くなっています」
これは「枠板式高うね栽培」といわれる農法で、アスパラの生えている「うね」の部分が高くなっています。
香川県の農業試験場で開発されました。
【広島県農業技術センター・小林賢吾研究員】
「そこからさらにプラスして高うねの中の環境をいかに制御するか、周りをかこっている空間の環境もいかに制御するかを加えて、それによって収穫量の飛躍的な増加と品質の向上につなげることができました」
Q:どれくらい増えたのですか?
「路地の畑と比べると最大で8倍くらい増えました」
しかし、収穫量が増えた分、収穫作業に時間と労力がかかってしまうという、新たな問題が発生してしまいました。
それを解決したのが、この方法です。
Q:こういう感じなのですか?
「そのような形です。そのまま横にスライドしてもらう感じです。少し手を伸ばせば収穫物があるという状態です」
これを使えば、体への負担が大幅に軽減し、収穫作業も効率化されます。
【広島県農業技術センター・小林賢吾研究員】
「通常の作業時間と比べると6割の時間で収穫ができる」
労働生産性が上がることで少人数で作業ができたり、これまでより多くの賃金を従業員に支払うことが可能になります。
これは人手不足の現代、経営者にとって大きな強味です。
【広島県農業技術センター・小林賢吾研究員】
「めんどうな難しいところは私たちで研究開発をした上で、それをいかに安く生産者に使ってもらえるかを目指しています」
Q:そこまで考えるのですか?
「そこが非常に大事になります」
費用面も含めて「現場で使えなければ意味がない」というのが、このセンターの考え方です。
そんな中で生まれたのが、この農業ハウスです。
建設用の足場に使う鉄筋を使って作る農業ハウスです。
【広島県農業技術センター・川口岳芳部長】
「コストが低くて強い」
Q:安くできる?
「流通量が多いために安くできる。業者に頼んだりすると千平米あたり1200万円から1300万円くらいいきます。こちらだと資材代で700万円から800万円くらい。自分で建てると最低限の700万円くらいですよね」
このセンターではまず自分たちでやってみて、実際に現場で使えるものを作ることが大切と考えています。
【広島県農業技術センター・川口岳芳部長】
「世に出さないと意味がないという教育をしているので、生産者に必要最低限のものを安く入れる。さらに価格が高騰している中でどうするかを自分たちも作って感じているので、どのようにして安く作るかを考えるのがうちの仕事なので、それを世に出さないと意味がない」
《スタジオ》
【コメンテーター:エディオン女子陸上部アドバイザー・木村文子さん】
「消費者としては、野菜も高騰しているし米も不足して、スーパーに行くと毎回大変だなと思っていたのですが、農業の実態が少しでも変わると消費者にとっての影響も変わってくるのですね」