「遺言 もめない遺産相続」のために知っておくべきことは…専門家に聞く シリーズ【老いゆく社会】

10/30(水) 20:00

マネー研究所。お金をキッカケに広島の暮らしやビジネスに関わるニュースをお伝えしていきます。
今回はシリーズでお伝えしている「老いゆく社会」のマネー研究所バージョンです。
取材は矢野寛樹ディレクターです。

【矢野ディレクター】
今日のテーマは「遺言 もめない遺産相続」
いま、高齢化が進む中「遺産相続」の相談件数が増加しています。
それに伴って、「遺言」を残す人も増えているんです。
それでは、そもそも、「遺言」とはどんなものなのでしょうか?「遺言」「相続」に詳しい、谷脇裕子弁護士に聞いてみました。

【弁護士法人あすか・谷脇裕子弁護士】
「遺言は自分が死んだ後に、築いた財産をどのように分けて欲しいかを亡くなる前に思いを残すものなので、大切な相続人のために書くもの。法律に定められた要件を充足した財産の分割方法などを書くものを遺言・遺言書という」

<スタジオ>
「財産を残す」となると「遺産相続」の問題が出てくるわけです。
ここでもめると大変なことになるわけですが、それでは、皆さんに問題です。

夫婦二人で、子供がいないケース。
夫の両親は、亡くなっていますが、お兄さんが健在です。
夫名義の財産が、6000万円ある場合、妻が相続する、「法定相続金額」は、いくらでしょうか・・・。

正解は、妻には、4分の3の 4500万円。
夫のお兄さんが、4分の1の 1500万円を相続することになります。

【弁護士法人あすか・谷脇裕子弁護士】
「お子さんがいないケースですと(夫の)お父さん・お母さんが生きていればそちらに相続するし(夫の)“きょうだい”がいれば相続権がある。残された配偶者と義理のお父さんやお母さんや兄弟、場合によって(義理のきょうだいの)子供たちがもめるということもある」

意外と知らない遺産相続ですが、相続時のトラブルって、本当に、起こるものなのでしょうか?

【弁護士法人あすか・谷脇裕子弁護士】
「家庭裁判所などで遺産分割調停をしているケースは数年単位のものは珍しくないです。もめていくうちにどんどん古い話が復活してきたり、よくあるのがお互いの配偶者が話に入ってくると兄と弟だけなら『兄が言うからしょうがないか』などで解決もできるところが『あなただけ損をさせられてるんじゃないの』という形になって深みにはまっていくケースも結構見たりはします」

<スタジオ>
やはり、現実に起こってますし、近い関係だからこそ、こじれるわけです。
さらに、遺産相続でトラブルになるケースに、法定相続人以外に財産を渡すというケースがあります。

例えば・・・。

【ケース1】・・・
「マサヤ。お父さん、〇〇団体に遺産を全額寄付することにしたから、マサヤの分は無いけどよろしくね」・・・

と言われたら、加藤さんはどう思いますか?

「団体にもよりますが・・・・」

【ケース2】・・・
「ユイ。お父さん、親しくしている人に遺産を全額あげることにしたから、お母さんとユイの分はなしでいいよね」・・・

と言われたら、岡野さんはどうでしょうか?

「せめてお母さんには残して欲しいです」

実際には、こんなケースが世の中にはあるわけです。
家族にとっては、納得のいかない話ですが、しかし、一方では、ここまで財産を築いてきた本人の意思ですから、「尊重されるべき」という考え方もあるわけです。
こういう場合は、どうなるのでしょうか?

【弁護士法人あすか・谷脇裕子弁護士】
「一定の親族には遺言でも奪われない権利が残されていてそれを『遺留分』といいます。もし(遺産の)全額を第三者にあげてしまった時に、奥さんやお子さんは『遺留分』を主張することで法律上の権利よりは少ない金額にはなるが、一定割合を残すことはできる」

<スタジオ>
遺産相続が納得いかない場合、「遺留分」を請求することで、相続を受けることができるんです。
この場合は、遺留分の請求を家庭裁判所に申請しなければなりません。
相続時にトラブルの原因となる「不公平感」。
それを和らげるためには、こんな方法が有効と専門家は言います。

【弁護士法人あすか・谷脇裕子弁護士】
「なぜこのような割合で(遺産を)残したいのか、遺言を書く理由や思いのようなものを『付言』という形で残すことが有効だと思う」

例えば、こんな感じで遺言すると感じが変わってきます。

【弁護士法人あすか・谷脇裕子弁護士】
「長男にはちょっと多めにお金を残すが、お墓の世話や後に残った手続きを全部お願いするので、長男の方にはこのようにお金を残す。とか三男には学費で非常にお金をたくさん使ったので、残った財産は長女の方に多めに残します。とか」

このような説明に法律的な効力はどの程度あるのでしょうか?

【弁護士法人あすか・谷脇裕子弁護士】
「『付言』自体には法的効力はないのですが、(財産を)残した方の思いがそのまま書いてあることは影響としては小さくない」

<スタジオ>
相続でもめないポイントは、関係者の納得感が、大きいと言えます。
そのためには、「遺言」はとても大切になるわけなんです。

納得感ってキーワードもありましたけど、本当に話し合うしかないんですよ。

【コメンテーター:木村文子さん】(女子100mハードル元日本代表・エディオン女子陸上部アドバイサー)
「そうですよね。本当にもめないことができるのかなっていう…。その場になってみないとやっぱりわからないこともあるのかなっていうふうには感じるので、非常に難しいなと思いましたね」