200年の伝統「阿刀神楽」を守り伝える親子 「舞の素早さと武術の所作、気持ちを一つに」広島市安佐南区
11/7(木) 20:30
広島市安佐南区におよそ200年伝わるとされる阿刀神楽。
少子高齢化で地域の担い手不足が懸念される中、伝承に取り組む親子の姿を追いました。
<中ノ森八幡神社 秋季例大祭前夜>
「神様を舞台に迎える神降ろし」
広島市中心部から車でおよそ30分。
秋が深まる安佐南区沼田町阿戸地区。
ここには200年以上の歴史があるとされる神楽・「阿刀神楽」が伝わっています。
神楽団で副団長を務める今田新さん。
およそ40人いる団員を引っ張る存在です。
毎年10月に開かれる秋まつりに向け練習に励んでいます。
しかし、今年はこれまでにない思いを持っているといいます。長男で高校2年生の晶さんと花形とされる「八つ花の舞」を親子で披露するつもりです。
4人の舞い手が息を合わせ、互いの刀を持って回る激しい「八つ花の舞」。
子どもが大人の仲間入りを果たす大事な舞とされています。
【今田晶さん】
「子どもらとやるときとはスピードが違って、レベルが一気に違います」
【今田新さん】
「一緒にできるのはホント嬉しいです。(息子のことは)気にはなりますよね。
遅いとか速いとか、こっちみたいなのはあります。4人の気持ちがまとまってないとバラバラになっちゃうんで。(今日のまとまりは?)いや、ダメですね。まだまだです。
改善の余地はあるのでこれからもう少し詰めていけたらと思います」
神楽団によると、阿刀神楽は、200年前にはいまの形に近いものが出来上がったと伝えられています。
広島県南西部で秋祭りの前夜に12の神楽の演目を神社に奉納する「十二神祇神楽」と呼ばれるものの一つで、県北部や島根県に伝わる神楽とは系統が違います。
【広島市 文化振興課 柳沢健輔 課長】
「舞が素早いということと、武術の形を取り入れて刀を捧げるとかですね。
そういうふうな所作が見られるというのは特徴だと思っておりますので、技術的にも優れているという評価をしております」
国の重要無形民俗文化財の指定を目指す中、重要になってくるのが後継者の育成です。
【広島市 文化振興課 柳沢健輔 課長】
「後継者難に苦しんでいるということは、たびたびお伺いしております。その中で阿刀神楽は早い段階から子供神楽団を組織して、若い人材の育成に務めるなど大変な努力をしておられます。その努力が今の神楽を舞う方々につながっていると」
新さんから晶さん。
大人から子どもへ。
子どもが減り、地域の担い手不足が叫ばれる中、伝統をどう受け継いでいくのか神楽団にとっていまが正念場です。
夕食の時間。食卓の会話にも神楽の話題が自然と出ます。
晶さんは、この日初めて母親の典子さんに花形である「八つ花の舞」に挑戦することを明かしました。
【今田新さん】
「晶は荒神と八つ花」
【母・典子さん】
「八つ花やるん。初じゃん。一番ハードなやつ。覚えた?」
【今田晶さん】
「ううん」
【今田新さん】
「てんやわんやよな」
小学生のころから始めた神楽。
しかし、今は複雑な思いを抱えています。
【今田晶さん】
「友達には(舞い手だと)言わないです。自慢するならオロチとか出てくる、そういう神楽で自慢したかったです」
【今田新さん】
「絶やしちゃいけないっていう思いはあります。続けないと。僕もできる限りは続けて、(晶さんが)続けられるなら任せて」
世代を超えつないでいくそれが神楽なのかもしれません。
<練習の様子>
【今田新さん】
「細かく。大きいで回りが。くっつかんにゃ、もっとひかると」
本番を間近に控え大人たちは口々に晶さんにアドバイスします。
【今田新さん】
「期待してるからこそ、みんながぶわーって言うんで、それを一個でも晶が受け止めて、自分で解釈して動けばと思います」
不安な表情の晶さん。
立派な舞い手になるために…。
これまでの練習の日々を噛みしめます。
<奉納当日>
本番の夜に向けて準備が進みます。
新さんは舞台の装飾に大忙しです。
他の舞が順調に進んでいき…新さんと晶さんの出番が近づいてきます。
【今田晶さん】
「過去一の緊張です。落ち着かないですね。やっぱり」
【今田新さん】
(Q:八つ花の衣装姿いかがですか)
「いいんじゃない」
一緒に舞う団員と新さんが緊張をほぐします。
【今田新さん】
「こけるなよ、いつも通りいつも通り。かかと上げてやりゃいいんよ」
衣装を着て「八つ花」を舞うのは初めて。
ぎりぎりまで動きを確認します。
【今田晶さん】
「完璧や!」
夜の11時すぎ。前の演目が終わり、いよいよ親子の共演です。
母も息子の晴れ舞台を見守ります。
初披露と思わせないダイナミックな動きを見せる晶さん。
しかし!
新さんが足を滑らせるハプニング。
それでも動じることなく4人は舞を立て直します。
およそ25分の舞は盛況に終わりました。
【今田新さん】
「お疲れ。よう頑張った。晶、良かったよ」
晶さんにも安堵の表情が浮かびます。
【今田晶さん】
「結構きついですね。付いていくので精一杯です。余裕持って舞うことができるように頑張ります」
【今田新さん】
「(晶さんは)練習よりもよく動けてたのかなと思いますし、まあ失敗もなくよくできたと思います。僕がいっぱい失敗したんで、何かしら(晶さんの緊張が)伝わったのかなとは思います。後継者ができたんで僕もそろそろ…八つ花を引退できるかな…と」
【母・今田典子さん】
「プレッシャーはあるかもしれないけど、本人が楽しんで舞っているのをすごく感じるので自分がやりたいと思うんであればやってほしい」
200年以上もの間、大切に引き継がれてきた阿刀神楽。
親から子へ。
そして、大人たちの背中を見て育ってきた子どもたち。
地域の宝はこれからも世代を超えて繋がっていきます。
<スタジオ>
安部さん、伝統の継承もそうですけど、親子の絆みたいなものを感じますね。
【コメンテーター:元 広島東洋カープ 安部友裕さん】
「温故知新ですね。まさにこうやって伝統芸能を通じて、父の威厳や親子の絆を深めていくっていうことで、今後もこういうものを絶やさずに、どんどん伝承していってほしいなと思いますね」
少子高齢化で地域の担い手不足が懸念される中、伝承に取り組む親子の姿を追いました。
<中ノ森八幡神社 秋季例大祭前夜>
「神様を舞台に迎える神降ろし」
広島市中心部から車でおよそ30分。
秋が深まる安佐南区沼田町阿戸地区。
ここには200年以上の歴史があるとされる神楽・「阿刀神楽」が伝わっています。
神楽団で副団長を務める今田新さん。
およそ40人いる団員を引っ張る存在です。
毎年10月に開かれる秋まつりに向け練習に励んでいます。
しかし、今年はこれまでにない思いを持っているといいます。長男で高校2年生の晶さんと花形とされる「八つ花の舞」を親子で披露するつもりです。
4人の舞い手が息を合わせ、互いの刀を持って回る激しい「八つ花の舞」。
子どもが大人の仲間入りを果たす大事な舞とされています。
【今田晶さん】
「子どもらとやるときとはスピードが違って、レベルが一気に違います」
【今田新さん】
「一緒にできるのはホント嬉しいです。(息子のことは)気にはなりますよね。
遅いとか速いとか、こっちみたいなのはあります。4人の気持ちがまとまってないとバラバラになっちゃうんで。(今日のまとまりは?)いや、ダメですね。まだまだです。
改善の余地はあるのでこれからもう少し詰めていけたらと思います」
神楽団によると、阿刀神楽は、200年前にはいまの形に近いものが出来上がったと伝えられています。
広島県南西部で秋祭りの前夜に12の神楽の演目を神社に奉納する「十二神祇神楽」と呼ばれるものの一つで、県北部や島根県に伝わる神楽とは系統が違います。
【広島市 文化振興課 柳沢健輔 課長】
「舞が素早いということと、武術の形を取り入れて刀を捧げるとかですね。
そういうふうな所作が見られるというのは特徴だと思っておりますので、技術的にも優れているという評価をしております」
国の重要無形民俗文化財の指定を目指す中、重要になってくるのが後継者の育成です。
【広島市 文化振興課 柳沢健輔 課長】
「後継者難に苦しんでいるということは、たびたびお伺いしております。その中で阿刀神楽は早い段階から子供神楽団を組織して、若い人材の育成に務めるなど大変な努力をしておられます。その努力が今の神楽を舞う方々につながっていると」
新さんから晶さん。
大人から子どもへ。
子どもが減り、地域の担い手不足が叫ばれる中、伝統をどう受け継いでいくのか神楽団にとっていまが正念場です。
夕食の時間。食卓の会話にも神楽の話題が自然と出ます。
晶さんは、この日初めて母親の典子さんに花形である「八つ花の舞」に挑戦することを明かしました。
【今田新さん】
「晶は荒神と八つ花」
【母・典子さん】
「八つ花やるん。初じゃん。一番ハードなやつ。覚えた?」
【今田晶さん】
「ううん」
【今田新さん】
「てんやわんやよな」
小学生のころから始めた神楽。
しかし、今は複雑な思いを抱えています。
【今田晶さん】
「友達には(舞い手だと)言わないです。自慢するならオロチとか出てくる、そういう神楽で自慢したかったです」
【今田新さん】
「絶やしちゃいけないっていう思いはあります。続けないと。僕もできる限りは続けて、(晶さんが)続けられるなら任せて」
世代を超えつないでいくそれが神楽なのかもしれません。
<練習の様子>
【今田新さん】
「細かく。大きいで回りが。くっつかんにゃ、もっとひかると」
本番を間近に控え大人たちは口々に晶さんにアドバイスします。
【今田新さん】
「期待してるからこそ、みんながぶわーって言うんで、それを一個でも晶が受け止めて、自分で解釈して動けばと思います」
不安な表情の晶さん。
立派な舞い手になるために…。
これまでの練習の日々を噛みしめます。
<奉納当日>
本番の夜に向けて準備が進みます。
新さんは舞台の装飾に大忙しです。
他の舞が順調に進んでいき…新さんと晶さんの出番が近づいてきます。
【今田晶さん】
「過去一の緊張です。落ち着かないですね。やっぱり」
【今田新さん】
(Q:八つ花の衣装姿いかがですか)
「いいんじゃない」
一緒に舞う団員と新さんが緊張をほぐします。
【今田新さん】
「こけるなよ、いつも通りいつも通り。かかと上げてやりゃいいんよ」
衣装を着て「八つ花」を舞うのは初めて。
ぎりぎりまで動きを確認します。
【今田晶さん】
「完璧や!」
夜の11時すぎ。前の演目が終わり、いよいよ親子の共演です。
母も息子の晴れ舞台を見守ります。
初披露と思わせないダイナミックな動きを見せる晶さん。
しかし!
新さんが足を滑らせるハプニング。
それでも動じることなく4人は舞を立て直します。
およそ25分の舞は盛況に終わりました。
【今田新さん】
「お疲れ。よう頑張った。晶、良かったよ」
晶さんにも安堵の表情が浮かびます。
【今田晶さん】
「結構きついですね。付いていくので精一杯です。余裕持って舞うことができるように頑張ります」
【今田新さん】
「(晶さんは)練習よりもよく動けてたのかなと思いますし、まあ失敗もなくよくできたと思います。僕がいっぱい失敗したんで、何かしら(晶さんの緊張が)伝わったのかなとは思います。後継者ができたんで僕もそろそろ…八つ花を引退できるかな…と」
【母・今田典子さん】
「プレッシャーはあるかもしれないけど、本人が楽しんで舞っているのをすごく感じるので自分がやりたいと思うんであればやってほしい」
200年以上もの間、大切に引き継がれてきた阿刀神楽。
親から子へ。
そして、大人たちの背中を見て育ってきた子どもたち。
地域の宝はこれからも世代を超えて繋がっていきます。
<スタジオ>
安部さん、伝統の継承もそうですけど、親子の絆みたいなものを感じますね。
【コメンテーター:元 広島東洋カープ 安部友裕さん】
「温故知新ですね。まさにこうやって伝統芸能を通じて、父の威厳や親子の絆を深めていくっていうことで、今後もこういうものを絶やさずに、どんどん伝承していってほしいなと思いますね」