過疎化の地域のイルミネーション「冬ホタル」25周年 さらに未来を照らす 三原市久井町

12/13(金) 20:30

冬の風物詩といえばイルミネーションですが、
番組では25周年目を迎えたとある、中山間地域のイルミネーションに注目しました。

広島県三原市の北部に位置する久井町吉田地区。
人口およそ140人の小さな集落です。
過疎化が進むこの地区ににぎわいを呼び込もうと、毎年冬になるとあるモノを使ってイルミネーションを輝かせています。
それは…使用済みのペットボトル。
その数、およそ3万5000個、地域の家庭から持ち寄り、イルミネーションの材料として再利用しています。

【吉田冬ホタル実行委員会・前石和昭 会長】
「田舎で、真っ暗な所で、冬、寒々としたところだけど、光がボーっと灯れば、温かみを感じるんじゃないかなと思って、『冬ホタル』という名前を付けて、こういったイルミネーションをすることになった」

「冬ホタル」と名付けたイルミネーションが始まったのは2000年のこと。口が減る地域を何とかしようと地元の有志たちが運営をはじめ、電気代などは会費から捻出しています。

イルミネーションは手作りです土台となるペットボトルの上にひも状になったLEDライトを配置していきます。
完成までにかかる期間はおよそ1か月。
時間を作っては、毎日少しずつ作業します。

【吉田冬ホタル実行委員会・前石和昭 会長】
「この4分の1ぐらいのスペースで最初始めたんです。この塔というのは、初代からずっと建っとる。これはもう25年ずっと建ててきた」

TSSの過去の映像に第一回の「冬ホタル」を取材したVTRが残っていました。
そこには今年と同じ場所でインタビューに答える実行委員会会長・前石さんの姿が…

【前石会長(当時47歳)】
「狭い地区へ。子ども達の声が響くような、子どもたちが集まるようなことをしたかったんで、こういったペットボトルのイルミネーションを考えたわけなんですよ」

25年の歳月が流れイルミネーションを作る環境も変化しました。

【吉田冬ホタル実行委員会・前石和昭 会長】
「若い者もあんまりいなくなって、地区から出ていった人もいるし、(実行委員も)前は二十数人おったんじゃけど、今は十人おるか、おらんかぐらい」

過疎化が進むとともにイルミネーションの活動に協力できるメンバーも徐々に少なくなっていきました。
それでも毎年続けることができたそのワケ…。
それは「何事にも代えがたい出来事があるから」だといいます。

【吉田冬ホタル実行委員会・前石和昭 会長】
「『愛の鐘』と名前を付けて、(昔)若い人がカップル見て、この鐘をついて、入り口にトンネルがあるんですが、そこへ『僕たち結婚しました。ありがとうございました』という手紙が入っとたんよ。思い入れがいろいろありますよね」

定番のイルミネーションだけでなく毎年違うデザインのものを作るのがこだわりです。
今年は25周年、それにあやかったデザインにすることに決定しました。
点灯式まで、残りわずか。
完成させることはできるのでしょうか?

点灯式当日。
会場には集落の人口140人を上回るおよそ200人がやってきました。
点灯の瞬間を待ちます。
「3,2,1」
≪点灯≫
「わ~ すごい」<歓声・拍手>

「テーマは25周年。怪我をしないように、自由に見ていただければと思いますので、よろしくお願いいたします」

イルミネーションに照らし出される子だもたちの笑顔。
前石さんたちの苦労が報われる瞬間です。

夜空に鳴り響く「愛の鐘」新たな恋人たちをまた見守っています。

今年しか見られないイルミネーションの完成も間に合いました。
冬ホタルと同じく25周年を迎えた漫画「ワンピースのルフィ」にあやかります。

【点灯式来場者は】
「毎年見に来てるんで、安心感がすごいあります。おじいちゃんが携わってきたので、感謝を伝えておこうかなと思います」

【吉田冬ホタル実行委員会・前石和昭 会長】
「25年やってきて、いろんなお客さんと出会いがあったし、思い出もあるし、数多くの方に田舎の吉田へ来ていただいて、星しか見えない暗いところなんで。そういったところで光が浮き上がるイルミネーションを、多くの皆さんに見に来ていただければと思います」
<スタジオ>
25年続けるというのは難しいと思うんですが・・・

【コメンテーター:叡啓大学・早田吉伸 教授】(地域活性化や社会システムデザインが専門)
「こうやって毎年、同じ場所で続けることによって、よそから、こうやって人がやってくる。こういうことを関係人口と言うのですが、これで繋がりができていってコミュニティ・関係性ができて、維持できているっていうのは、まさにこの中山間のような人がどんどん減っていくような場所では最も必要なことになってきます」

三原市久井町吉田地区の「冬ホタル2024ペットボトル&イルミネーション」
2025年1月2日まで毎日点灯。
17:30~22:00

※12月31日と1月1日の二日間だけはオールナイトで点灯。
入場無料