広島が誇る最新技術で日本酒をもっと世界へ カギは「暑さに強い酒米」と「劣化を防ぐ酵母」

1/9(木) 19:00

去年、「日本の伝統的な酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録されたことを受けて、日本酒の海外進出に注目が集まっています。そのために、欠かせない技術が広島県内で開発されています。
広島が誇る最新の技術をツイセキしました。

<酒類業界新年互例会@広島市中区>

コロナ禍で休止されて以来、5年ぶりに開催された酒に関係する業種が集まった新年互礼会。
去年、「日本の伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録されたことを追い風に、業界では、日本酒の海外への輸出強化を模索しています。

  「乾杯!」

【矢野ディレクター】
「乾杯に使われた日本酒『明魂(めいこん)』実は、この酒こそが、日本酒の海外進出のカギを握っているのです」

乾杯に使われたのは、純米大吟醸の原酒、「明魂」です。
醸造したのは、県の食品工業技術センター。
この酒は、広島県が全国に誇る最新の技術を駆使して作られているのです。
使われた「酒米」は、県内で開発された「萌えいぶき」です。
国内で初めて作られた夏の暑さなどにも耐えられる気候変動に対応する機能を持った酒米です。
この「萌えいぶき」こそ、県と関係機関が、10年の歳月をかけて開発した苦労の結晶なのです。

【広島県農業技術センター・勝場善之助 研究員】
「これが広系酒45号(萌えいぶき)です。今、穂が出たところで花が咲いている状況です。やはり今、気温がどんどん上がってきているので高温登熟耐性(暑さに強い性質)を持つことが、これからは必須になると思います」

「萌えいぶき」を他の酒米と比較すると、コメの中心にあるデンプンが集まった「心白」といわれる白い部分が大きいのが分かります。
酒は「デンプン」と「こうじ菌」が融合してできるため、「心白」が大きいことは酒米の長所となります。
また、生育時の気温が高いとデンプンが溶け難くなりますが、「萌えいぶき」は、デンプンが溶けやすい性質を持っています。
気候の変化に対応できる酒米は、海外進出をする上で、安定した酒の生産を支える大切な存在です。

【矢野ディレクター】
「もう一つ海外進出のカギを握るのが酒造りには欠かせない酵母なんですが、最新の酵母を作り上げたのは実は広島なんです」

日本酒の海外進出の大きな課題となっていたのが、輸送時間の経過とともに起こる品質の劣化でした。

【広島県食品工業技術センター・荒瀬雄也 研究員】
「酒には貯蔵劣化臭という古くなると出てしまう漬物のような香りがありますが、どうしても香りの変化が特に起こりやすくなってしまうことは酒の宿命としてはあります」

この問題を解決したのが、県の食品工業技術センターが開発した貯蔵劣化を防ぎながら、熟成が進むことで、日本酒が爽やかな味に変化する酵母、「ひろしまLeG-爽(れぐそう)」です。

【広島県食品工業技術センター・荒瀬雄也 研究員】
「今回の酵母では香りの劣化が起こりにくいので、熟成がきれいに進みやすいと思う。香りも熟成香といわれるカラメルのような香りが熟成した酒の特徴なので、そういった酒に香りも味も変わっていく」

伝統的な技法で杜氏たちが醸す日本酒を世界へ。
気候の変化や海外進出の問題点を解決する広島発の技術に、今、全国から熱い期待が高まっています。

<スタジオ>
【矢野ディレクター】
日本酒を支えているのが広島の技術なんです。まず米に関しては、国内で初めて気候変動型の酒米ができたのも、夏がどんどん暑くなっていくわけですから、それに対応して米の量が安定してとれるのが大事なことなんです。
もう一つ「ひろしまLeG-爽」という酵母なんですが、これまで国外に輸出するときに大きなネックだったのが、劣化なんです。ワインやブランデー、ウイスキーは時間が経つと価値が上がりますが、それが日本酒はなかったんです。元々熟成もあったんですが、熟成よりも劣化の方がひどくて、どうしてもマイナスポイントだったんですが、それがワインやウイスキーなどと同じ土壌に立って戦えるというところまで来た。これが広島の技術ということです。

【コメンテーター:JICA中国・新川美佐絵さん】
「なかなか、国内って日本酒だけじゃなくて、お酒の消費量が減ってたり、若い人のアルコール離れとかもあるので、新しい経済的な開拓をしてほしいですし、さらにやっぱり美味しいものをきちんと美味しく受け取ってほしいということになると、こういう劣化を防ぐっていうのは非常に素晴らしいですよね」

本来の美味しさをなかなか海外では楽しめなかった部分が楽しみやすくなるっていうところがありますね。

【矢野ディレクター】
マイナスポイントが一気に解消された。それに広島の最先端の技術が使われているっていうことなんです。