「娘を性的な対象として見てはいけないと…」妻の連れ子の娘(当時13)に性的暴行 父親に懲役5年6カ月

1/15(水) 20:07

性的欲求を満たすために妻の連れ子である娘に暴行を加え、監護者わいせつなどの罪に問われた父親に懲役5年6カ月の実刑判決が言い渡された。
一連の裁判で男は父親という立場を利用して卑劣な犯行に及んでいたことが明らかになった。

■事件の概要

2024年12月10日、広島地裁の法廷に姿を現したのは、「監護者わいせつ・不同意性交」の罪に問われた被告の男。
身長160センチほどの小太りでマスク姿で証言台に立った。
男は現在34歳で逮捕当時の職業は電気工だったが、被害者保護の観点から裁判では男の氏名や住所は明かされなかった。

起訴状によると、男は2022年4月下旬から11月にかけて、広島県内の自宅で一緒に住んでいた当時13歳の娘に対し、娘を指導・監督する父親の立場を利用して、胸を触るなどわいせつな行為を繰り返し行っていた。
男は起訴内容について問われると「まちがいありません」と認めた。

■被害者の娘は妻の連れ子

男は広島市内で生まれ2020年1月に結婚。
結婚した妻の連れ子としてやってきたのが、今回の被害者である娘で男とは養子縁組を組み家族となった。

2022年4月、娘は中学生になり、スマートフォンを持つようになった。
しかし、長女が宿題を提出しなかったり、学校のテストの結果が悪いことなどが続いたため、男は、しつけの目的でスマートフォンにインターネットの利用制限をかけるようになった。

そうしたなか、ある日長女が「スマホを使いたい」と申し入れると、男は「胸を見せてくれたらいいよ」と娘に告げた。
すると長女は言われるがままにシャツ上げてを胸を見せた…この1件を機に男は娘に対して性的な興味を持つようになり、娘から申し入れがあった際や自分の性的欲求が高まった際に、犯行に及ぶようになったという。

犯行はいずれも妻が自宅にいない2人だけのときに行われたものだった。

■「娘を性的な対象として見てはいけない自覚はあった」

被告人質問で犯行の様子や動機が明らかになった。

【弁護人】「なぜ犯行に及んだ?」
【男】「欲求を満たすためにやってしまった」
【弁護人】「娘が(スマホの)利用制限を解除してほしいと言ったのは何回か?」
【男】「数回。ほとんどは娘から申し入れがあり対応していた」
【弁護人】「娘はどんな気持ちだったと思う?」
【男】「心に傷を負ったと思う。大変申し訳なく思っている」

現在、妻とは離婚し娘との関係も断ち切ったという。
一方、検察側は父親の立場を悪用した言動を厳しく追及した。

【検察官】「娘は元々、赤の他人。家族になることをどう思っていた?」
【男】「娘の存在は知っていたので、一緒に暮らすことを理解していた」
【検察官】「連れ子である娘を性的な対象として見てはいけないという自覚はなかったのか?」
【男】「ありました」
【検察官】「その気持ちはどこにいったのか?」
【男】「欲求にかられてしまい我慢できなかった」
【検察官】「いつかバレると思っていたのか?責任を取るつもりだったのか?」【男】「バレるという思いは少しはあったが、責任に関しては考えていなかった」
【検察官】「卑劣な行為だと思わないのか?」
【男】「初めて胸を見せてほしいと条件を出した時、娘はやらないと思っていたが見せてきたので、本来は叱るべきだったが行為を続けたことは反省している」

■「被害者の記憶には一生刻まれる」

論告求刑で検察側は「自己の性欲を発散する目的で、立場を利用した犯行に及んだことは極めて悪質だ。被害者は人格形成の途上にあるが、今回の犯行が記憶に刻まれ、一生生きていかなければならない」などとして、懲役7年を求刑。

一方、弁護側は「被害者はあまり記憶がなく、人格形成への侵害の程度は大きくない。また被害者の母親は被告に対して厳罰な処罰を求めておらず、被告自身も反省の弁を述べ、二度と犯行に及ばないと述べている」などと主張し、執行猶予付きの判決を求めた。

最後に裁判官から「何か言っておきたいことはありますか?」と問われると、男は一言だけこう答えた。

【男】「この度は誠に申し訳ありませんでした」

■言い渡された判決の重み

2025年1月15日判決公判が開かれた。
広島地裁の角谷比呂美裁判長は「自己の性的欲求を満たすために立場を利用して性交等に及んだことは卑劣で悪質な行為である」と指摘。
「娘の精神的・肉体的な影響は大きいもので今後の健全な成長にも支障が出るものであり、娘の母親が被告への処罰を望んでいないことや、すでに離婚・離縁したことを考慮したとしても、その刑事責任は重い」などとして、男に懲役5年6カ月の実刑判決を言い渡した。

判決理由が読み上げられる間、男はまっすぐ前を見つめていた…。