1人乗り用「超小型EV」に1000台以上の予約 車づくりの素人ユーチューバーが開発 量産体制へ

1/17(金) 21:00

広島県内のSDGsの取り組みをお伝えするコーナー。
県内で一人乗り用の超小型電気自動車の開発が進んでいます。
夢が現実となり始めた量産化の挑戦を「ツイセキ」します。

幅が狭い道を物ともせず、スイスイと下っていく車…

【KGモーターズ・楠一成 社長】
「これが一番初めに思っていたことなので、そこは行って(性能が)証明されるのかなと思います」

広島県内で開発が進む1人乗り用の超小型EV「ミボット」です。
軽自動車の走行が難しい場所もヘッチャラです。
去年秋、開発の原点となった呉市両城地区を走破しました。

【KGモーターズ・楠一成 社長】
「スムーズに走れたかなという印象はあります。呉という特殊な場所だと思うんですけど、調べていくと全国にこういう細い道とか坂の町はたくさん…日本は元々島国というところで多いというのと、それにかかわらず、普段使いで、車がないと生活できないような地域の人がたくさんいて、その方々のためにいち早く確実なものを届けていけるように頑張っていきたいと思います」

東広島市に本社を置くスタートアップ企業「KGモーターズ」2021年のプロジェクト発足以降、社長の楠一成さんをはじめ素人同然だった初期メンバーが開発の様子を「ありのまま」動画投稿サイトYouTubeに発信し、今では40社以上の企業とプロフェッショナルが助っ人として加わるようになりました。
まさにゼロから駆け上がってきた「時代の申し子」的な存在です。

すでにネット上から1台税込100万円で1000台以上の予約申込を受け付けています。

2025年秋を目標に掲げる量産開始に向け過去最大のプロジェクトが待っていました。

【KGモーターズ・元スズキ勤務 七里孝さん】
「(雨の)水滴がついてきた状態で、そのまま粉をふけないんで乾燥させないと」

【KGモーターズ・楠一成 社長】
「どちらにしても濡れない仕組みを考えるしかないんじゃないですか」

それは…本社工場の移転です。
県の内外から技術者が集まり、量産に必要な機械の配置などを考えていきます。

【KGモーターズ・松井康真さん】
「一番向こうの端からラインでスタートして、組み立てがスタートして、ここに近づいてここらへんで完成というイメージで、全くの素人で勉強してやっている段階なので、かなり毎日胃が痛いんですけど、楽しみながらやっています」

元々、家具を製造していた東広島市内の工場を借り受け、建物の規模は10倍以上になりました。

先月…新たに白と黒に塗り替えられた建物の看板には大きく「KG」の二文字が…

【KGモーターズ・楠一成 社長】
「ちょっと今の状態では、大きすぎるんですけど、生産していくとなるとすぐに手狭になるかなと思います。既存の建物を改造させてもらったという形なんですけど、ちょっとKGっぽくなったかなという感じですかね」

もう工場の中は新たな車体フレームが運び込まれていました。
今後の量産を見据え進化した試作車です。

【KGモーターズ・楠一成 社長】
「これ、こいつに抱かせたいんよ。その間から…」

フレームのデザイン自体は今までと変わらないように見えますが、これまでの「技術の結晶」だといいます。

【KGモーターズ・楠一成 社長】
「よりその量産に近づいていくために、今までじゃダメなところをどんどん修正しているので、前回の(試作車の)問題をできる限りなくしたものがこれなんですけど、それでもちょっとずつちょっとずつこうしたほうがいいよというものは出てきます」

製造責任者の松井康真さん。
自動車整備士の資格を持っていますが、車づくりの経験はありませんでした。

【KGモーターズ・製造責任者 松井康真さん】
「ここ、位置を全部出して、溶接をしていく感じですね」

まだガランとした工場内…情報共有ツールで3Dの立体的な図面を見ながら作業を進めます。

【KGモーターズ・松井康真さん】
「設計者がここにいるわけじゃないんで、遠隔で色んなものを使いながら(ここにいない皆さんも…)いないからこそ、こういうものを作って誰が作業をしているかわかるような」

静岡県浜松市の設計責任者から送られる図面を基に遠隔でも、手順やミリ単位の調整まで一目で共有し合える仕組みです。
培ったノウハウの「見える化」が量産を実現させる大きな一歩となります。

【KGモーターズ・松井康真さん】
「オッケーです」

製造部門以外のメンバーは資金調達と協力企業探しに奔走しています。

【KGモーターズ・取締役 奥野慎一郎さん】
「環境にもよくて、ワクワクしながら乗れるというところを我々の代表がこだわっているところになります。
【参加企業は】
「価値が高まるというか…」
【KGモーターズ・取締役 奥野慎一郎さん】
「日本の実態として7割が1人で移動をしていて、7割が短距離の移動にフォーカスしたときにどうしても、今、軽自動車が移動の最小単位になってしまっていますけど、コストがかなり高くなっているので」

調達できている累計の金額は6億3000万円。
広島市内の商談イベントでは、さらなる投資を呼びかけました。

【KGモーターズ・取締役 横山文洋さん】
「試作をつくるということに(資金を)使っているので、ある程度なくなってきているというよりかは、まだ残っているんですけど、次の投資が量産なんですよ。かかる費用がちょっと桁が変わってくる…」

講演が終わると多くの人が周りに集まってきました。

【参加者は】
「非常に期待をして、拝見をしていますので」

1人1人の声に耳を傾け、改めて、超小型EVの市場開拓に自信を深めました。

【KGモーターズ・取締役 横山文洋さん】
「結構、みんな自分事として考えてくれていますね。ユーザーとして興味を持ってもらえる声が実は結構多かったりします」

新工場で最初となる試作車は完成形に近づいていました。

【KGモーターズ・松井康真さん】
「これがある程度決まらないとキツイですね」

図面通りとは言え、発注した部品の形状を確認しながら、その場で微調整を繰り返します。

【KGモーターズ 車部品の設計開発 経験者 氏本卓志さん】
「きれいなよ。もっと変な感じになるかなと思ったけど、落ち着いているよね」

ついに、3週間がかりで新工場で最初の試作車が完成しました。

【KGモーターズ・松井康真さん】
「感慨深いところがあります。毎回つくる度に思うんですけど、今回は結構量産に近い寄ったものなので」

大晦日。
メンバーたちの姿は工場にありました。

【KGモーターズ・楠一成 社長】
「予約をしてくれた人も、まだ詳細を分かっていない人も、変な話リスクを負って(予約を)やってくれているので、それにちょっとでも安心していただける材料をお知らせしたいなと」

【KGモーターズ・取締役 横山文洋さん】(KGモーターズ公式YouTube)
「というわけで始まりました。大晦日恒例のKGモーターズライブ配信、今年もお集まりいただきまして誠にありがとうございます」

試作車の走りを初めてYouTubeで生配信し、披露します。
「加速を見せちゃってください」
「はい!」
「これ結構加速…だいぶ速いですよ。軽自動車と比べてどうなん?そこらへんの軽自動車より速い」

一気に加速できるのもモーターで走る電気自動車の強み…小回りも進化しました!

「小回りが利いているよね。きいていますね、どう?」
【KGモーターズ・楠一成 社長】
「いい!」

「うれしそう」
「とにかく年明け以降も追い込んでいく?追い込んでいきます」

2025年秋の量産開始に向け、新工場から開発の勢いをさらに加速させます。

【KGモーターズ・楠一成 社長】
「スタートアップ企業として足らない部分がたくさんあると思うんですが、信じて待ってほしいなと思います。ほぼ量産に近い形でつくっていますので、そういった意味で完成したのは大きな意味を持っていてですね。より磨きこんでいい製品にしていきたいと思います」

<スタジオ>
山内さん、大人の青春って感じがしますね。

【コメンテーター:元カープ・山内泰幸さん】
「TSSライクでも取り上げてきましたけど、量産化に向けて進化したのはすごく嬉しいですし、1人で乗るには十分な大きさですしね。中山間地域で活躍する姿が目に浮かびますね」

早田さん、広島でこうしたスタートアップが盛り上がるということ自体も何か嬉しい部分がありますね。

【コメンテーター:叡啓大学・早田吉伸教授】
「このケースでいうと、かなりプロセスを透明化して、仲間作りをして、ファン作りをして巻き込んでいるっていうのがすごく見えています。こういうイノベーションの起こし方っていうのが、これから一つの大きなロールモデルになるんじゃないかなと思います」