福山主婦殺害事件 有罪判決のポイント 「DNA型鑑定に争点を集中させた検察の勝利」広島大学吉中教授 

2/12(水) 19:49

24年前の福山市の主婦殺害事件。注目の裁判は検察の求刑通り懲役15年という判決でした。
吉中先生、この判決を率直にどう受け止められましたか。

【広島大学法学部・吉中信人教授】
「DNA型鑑定の科学的な正確性とか、理論的な信頼性に争点を集中させた検察官側の勝利だったのではないかと思います」

それではここで判決のポイントを整理します。

争点となっていたのは「DNA型鑑定の結果」です。
現場に残された血痕が竹森被告のものと認定したかということ、そして、これまで吉中先生が指摘されていたのは、DNA型鑑定で竹森被告のものと一致したとしても殺人の犯行そのものを立証できたかという点でした。

まず、12日の判決で血痕について、裁判所は「被告人のものであると認められる」という判断をしました。

DNA型鑑定で殺人の犯行まで立証できたかということについては、凶器と同じ種類のナイフが欠けた調理器具セットが当時住んでいた家から見つかったこと、現場の足跡と竹森被告の家から見つかった靴のサイズが一致したことで、被告人が犯人と矛盾しないとしました。

また、竹森被告は被告人質問で釣り場の確認に行っていたと述べたのですが、これに対してもDNA型鑑定の結果に反する、重要なアリバイであるにもかかわらず、裁判で初めて話したことからまったく信用できないと判断しました。

このDNA型鑑定の結果が争点ということになりましたが、この刑事裁判の原則「疑わしきは被告人の利益に」というところにどれだけ即していたかという点に改めて注目したいですね。

【広島大学法学部・吉中信人教授】
「証拠能力が認められたDNA鑑定や果物ナイフ、あるいはその足跡の問題は、自由に心証を形成することはできるんです。ただし、平成22年の判例で、情況証拠による立証については、この被告人が犯人でないと合理的に説明することができない事情が事実関係に含まれているかどうかということがポイントになります。ですからDNA型鑑定の正確性ももちろん大切なんですが、問題はその先にあって、そこ(DNA鑑定)から殺人のところにまで推論するということが、果たしてこの原則に則っていたのかということが問題になると思います」

今後、控訴については、竹森被告に接見して協議したのちに決めると弁護人は話しています。

※心証…裁判官が訴訟事件の審理において、事実認定について心の中に得た確信または認識