「障がいがあってもなくてもオシャレしたい」 22歳で排せつ障がいになった女性 笑顔になれる下着を開発

2/20(木) 20:30

22歳のころ下半身の感覚がなくなり、車いすでの生活に

排せつ障がいに対応した新たな福祉下着が開発されています。
目指すのは「笑顔になれる」下着。
障がいが人もない人もおしゃれを楽しめる社会のありかたを見つめます。

指先に魔法をかけ笑顔を生み出すネイルアート。

「毎回好きですけど今回も好きです」

ネイリストの新藤杏菜さん(39)です。
新藤さんは下半身麻痺のため車いすで生活しています。
自宅は、動きやすいように工夫しています。

【新藤さん】
「ドアがないほうが…カーテンにしている」

新藤さんは2008年、免疫の異常が起きる膠原病の一種全身性エリテマトーデスを発症。
その2年後、車いすでの生活を余儀なくされました。

【新藤杏菜さん】
Q:部屋の中でも靴を履いている?
「やっぱり感覚ないので、ぶつかったりけがをしやすい」

下半身の感覚がなくなったことで、トイレのスタイルも大きく変わりました。
通常の排せつ方法ではなく尿取りパッドを身に着けて生活しています。

「排せつ障がい」受け入れるには時間がかかった

【新藤杏菜さん】
「まだ22歳くらいだった。麻痺になった時が。子供が保育園くらいでした。自分がちょっと前まで子供のおむつを替えていたのに、今、自分が人にお世話されている」

「排せつ障がい」という現実を受け入れるには時間がかかったといいます。

【新藤さん】
「今までしていたことができない自分を受け止められない時期があって」

もどかしさが募る日々。

【新藤さん】
「精神的なものがすごくあった。情けないなってすごく思いました。どうしようもできんけど」

立ち直るきっかけはネイルのボランティアでした。
施設を訪問する中で、「おしゃれ」が人を笑顔にすることを知りネイリストの道に進みます。

自分の思うオシャレを求めて…CFは1カ月あまりで目標達成

一方で、新藤さん自身が「笑顔になれない」瞬間がありました。
福祉下着の種類は少なく満足できるものに出会えなかったのです。

【新藤さん】
「色でしかかわいさを出していないのかな。私の求めるおしゃれさ、セクシーさとは違う」

「障がいがあってもおしゃれがしたい」
当事者の思いを生かした福祉下着の開発に乗り出します。
新藤さんの熱意に賛同者が集まり、クラウドファンディングでは1カ月あまりで目標金額を上回る66万5000円を達成。
後押しを受け下着作りが始まりました。
見本を取り寄せるなどこだわったのはレース。

【新藤さん】
「レースって見るだけでもテンション上がる」

新藤さん自らがデザイン画を描きました。
おしゃれと機能性を両立させるためテープの粘着力の調整が難しく、メーカーと何度も試行錯誤を重ねました。
なぜ、下着にこだわるのか。

Q:服だけじゃだめですか?
「…だけじゃだめです。排せつ障害になって尿取りパッド姿を毎日みる。その情けなさというか自信のなさがあった。その中でもおしゃれな下着を探して履くことで障がいは治ることはないけど障がいを忘れられる一瞬でも癒しになるものだと思った」

障がい者が前向きに生きることは重要なこと

障がい者だけの特別な下着にしたくない。
健常者の下着と同じ売り場に並ぶのが夢です。
構想から2年、ついに試作品が完成しました。

新藤さんの思いが詰まった福祉下着。
レースの華やかさが目を引きます。
防臭・防水性の高い素材にこだわり、柔らかいテープを取り入れました。
福祉下着の新たな可能性は性別を問わず注目されています。
普通のショーツより工程が4倍多い福祉下着。
タッグを組んだのは大阪の大手繊維商社です。

【SAWAMURA 営業・河上政慶さん】
「利益はあまり考えていない。どっちかというと新しいものを作っていくところに重点をおいている」

新藤さんの取り組みは、下着メーカーだけなく医療の現場でも期待される存在です。

【広島市立舟入市民病院・佐藤友紀医師】
「僕たちは病気を治すときに病気だけを治すんじゃなくて、前向きに生きていけるようにすべてをプロデュースしましょうと心がけるように言われていますので、(オシャレは)何よりも大事なこと」

自分らしく生きるために好きなものを自由に選択できる社会。

【新藤杏菜さん】
「障がいあってもなくてもオシャレしたい。平等にオシャレの選択肢がどこにでもあるようになったらいいな」

福祉下着の未来に向かって確かな一歩を踏み出した新藤さん。
自分、そして誰かが笑顔になれるように。
《スタジオ》
確かに不思議なもので、オシャレをすれば気持ちが盛り上がったりする訳ですが、それをどんな人でも当たり前に選べるという点にはっとさせられました。

【コメンテーター:JICA中国・新川美佐絵さん】
「人のためではなくて自分自身の心の安定だと思います。新藤さんがおっしゃっているように自身の回復とか自己肯定感につながる。だから本人が発信していくというところが力強いと思います」

今後はモニターを募集して改良を加え、6月頃に完成させる予定だということです。