入院断られた「医療的ケア児」 母親の切実な声が市議会に 支援の現状に課題 広島

2/20(木) 19:05

「親が付き添わなければ入院できない」と言われ…

生きていくために24時間体制でのケアが欠かせない「医療的ケア児」。
そうした子どもを持つ家族の切実な声が20日の広島市議会で取り上げられました。

この問題を取り上げた定野和広議員は、「医療的ケア児」を支える介護事業者や保護者から相談を受ける中で、支援の現状に課題が多いことに気付きました。

【広島市議会・定野和広 議員】
「相談者によると(子どもの)入院に際し、親の付き添いが必要だと言われたので書類にそのように書いた。付き添わなければ入院ができないと言われ仕方がなかった」

「医療的ケア児」とは

「医療的ケア児」とは心身に障害があり在宅で日常的に医療行為を必要とする18歳以下の子どもです。
様々な疾患があり入退院を繰り返すことが多く入院した場合も家族の付き添いが求められるケースが多いといいます。

【広島市議会・定野和広 議員】
「(相談者によると)症状が安定しても母親の付き添いは続き、シャワーと病院内のコンビニエンスストアに食事を買いに行くわずかな時間だけ、ナースステーションの許可により外出を許された」

気の抜けない付き添いは家族にとっても、時に過度な負担となります。
定野議員は、改めて現状を質しました。

家族と行政の認識に食い違い

【広島市議会・定野和広 議員】
「入院に際して事実上家族の付き添いがなければ入院できないと聞きますが、本市においてそのような事実はあるのでしょうか」

それに対して広島市は…

【広島市健康福祉局 保健医療担当局長】
「付き添いがないことを理由に医療的ケア児の入院を断ることはありません」

「医療的ケア児」を持つ家族と、行政の認識に表れた「食い違い」。
広島市は、「制度の改善に向けた国への働きかけを検討する」と述べるに留めました。

なぜ食い違いが…

医療的ケア児を育てる家族と行政側の認識の「違い」はなぜ生じるのか、まず、現状をまとめました。

医療的ケア児とその家族は、在宅の場合、家族の負担を減らすため、「訪問介護」といった制度を利用することができます。
しかし、保護者の多くは「在宅」から「入院」に切り替えた途端、「状況は一変する」と訴えます。

「入院することで、本来、不要なはずの付き添いを半ば強制されている」「その間、家族は仕事を休むことにもなり他の子どもがいる場合、家に残されることになる」「在宅であれば金銭的補助のある訪問介護といったサービスが入院先では全額負担になる」

入院中でも訪問介護サービスが受けられれば…

問題提起した議員は「入院中でも在宅と同じように訪問介護事業者のサービスを受けられるようにすれば家族も病院側も負担が軽減できる」と指摘しています。

ただ一方で、現在の制度では診療報酬の関係もあり難しいという現実もあるようです。
いずれにしても、社会的弱者の切実な訴えに柔軟な対応が求められますよね。

【コメンテーター:JICA中国・新川美佐絵さん】
「もちろん最優先されるべきはお子さんとご家族だと思うが、これが制度や法律の壁なのか、それともそこが埋まっても医療現場の人手不足であったり、介護業界の人手不足ということもあり、本当に法律や国の制度が変われば改善されることなのか、私も不勉強で分からないが、もっと多角的にいろいろ考える要素がありそうですね」

介護業界や医療現場の人材の拡充もしっかり考える必要があるでしょうし、どんな法律ルールでも現状に即して変えていく必要があります。しっかり検討を進めていく必要があると思います。