3人に1人が離職する「高校生の就職」 人手不足の中、企業と高校生が取りくむ「新しい就活のカタチ」

3/3(月) 20:30

人手不足が叫ばれる一方で、離職率の高さが課題とされる高校生の就職活動。
企業と高校生が共同して、それぞれの問題を解決する初めての取り組みが始まっています。

3年以内におよそ3人に1人が離職

今年、1月。
広島市南区の県立広島工業高校に県内から集まった15の企業の代表者たち。

(県立広島工業高校 進路指導主事・久野士郎教諭)
「今回初めての方たちからいろいろな話を聞けるというところで、その中で自分がどうやって働いたらいいのか、どうやって生きていったらいいのかを、そういったものを3回の中で何か気付いてもらえたらと思う」

この高校では、毎年、卒業生のおよそ7割が就職します。
今年度、卒業を予定している県内の高校生の求人倍率は、4.94倍。
3年連続で過去最高を更新しました。
高校生は、社会にとって今や貴重な存在です。

一方で、全国的にみると就職して3年以内におよそ3人に1人が離職するという現実があります。

(県立広島工業高校・進路指導主事・久野士郎教諭)
「10年後20年後、自分の働く姿働く業界を知らずに企業を選ぶというのは変な話・選ばせてもらえる環境にいるからこそ、選ぶためにインプットはたくさん学生が持っていなければいけないと思う。限られた情報源だけではなく自分から情報を手に入れにいくこともそうです」

この問題に向き合う、「働くことを考える」授業が、始まりました。
授業は、全部で3回。
1回目は、生徒による、企業情報の聞き取り。
2回目は、生徒が、企業の魅力や仕事の内容を伝えるための資料を作ります。
3回目は、生徒が企業の魅力や今後の課題などを発表します。

授業初日 企業が事業内容などを説明

授業、初日。
まずは、それぞれの企業が事業内容などを説明します。
この会社は、自動車の部品を製造する機械メーカーです。

(大蔵工業・川崎伸広営業部長)
「板金やプレスものだけではだめだということで樹脂の製品を受注して組付けをしている」

事業の説明は、業務の細かい点まで、及びます。

(生徒)
「樹脂製品の何がいいのか?それを作るのに問題点は何かあるんですか?」

(大蔵工業・川崎伸広営業部長)
「1つの工程で成形ができる成形性がいいということがあるそれで、どんどん樹脂に代わっていった」

質問を重ねるごとに、働くことのイメージが、作られていきます。

(生徒)
「会社に入って苦労したことが気になって。それをどうやって乗り越えたかが聞きたいです」

(大蔵工業・松永宏司社長)
「僕らの時代は見て学べだったんです。今はきちんとマニュアルがあってみんなに教育しています。あとは自分も考えて考えて、楽しんでもらいたいものを作ることを。そういう心がある人は絶対に合った職業だと思う。それで乗り越えてきた」

熱いやり取りで、授業の初日は終わりました。

(大蔵工業・松永宏司社長)
「質問もみんな積極的にしてくれて大変盛り上がったと思います。本当にきょう来てよかったと思っています。どんどん深堀りしてもらえるのが楽しみです」

授業2日目 生徒と企業の距離が徐々に近づく

授業、2日目。
最終日の発表に向けて、資料を作ります。
生徒が行う質問内容が、更に、深くなっていきます。

(生徒)
「自社製品関連でどんな企業が関りが深いのですか?」

(大蔵工業・松永宏司社長)
「販売網も、あんまり強くないので、今までは自社で作ってものを売るということをしていなかったので、販売網も全部任せている」

社長は自分たちの弱みも隠さず伝えます。
生徒と企業の距離が、徐々に近づいていきます。

(生徒)
「課題は分かったのですが、その対策というのが、前回の質問でちょっとあやふやな感じだったので、そこは企業の方に聞きました」
Q:課題は何だった?
「課題は(製品を)開発するのに色々な企業が協力する必要があるというところです」

他の教室でも、企業と生徒の共同作業が行われています。
会社の魅力と問題点を探していく中で、生徒に、新たな気づきがあったと言います。

(新晃設備生徒)
「人手不足の問題の答えなどが(資料を)書くときに役に立って、HPに載ってないことなどもそれぞれ分かりやすかった」

授業最終日 生徒が企業の魅力や今後の課題などを発表

いよいよ、授業の最終日。
調べた結果を発表します。
松永社長も心配そうに見つめますが・・。

(生徒)
「世界レベルで考えると国内で売れないので海外への輸出に頼ることになります。すると関税などでお金がかかってしまうので海外に工場を作ってそこで車を作るようになります。そうすると働く場所がなくなり失業者が増えます」

(大蔵工業・松永宏司社長)
「私たちが質問に答えたことを彼らなりに変えて理解して言っている。今の発言も(私たちは)言っていないです」

働くことということを自分ごとに考える高校生と人材を確保したい企業が挑戦した初めての取り組み。
人手不足が叫ばれる一方で高い離職率が課題となる現代。
今回の取り組みを企画した就職サポート会社は、就活生と企業の両方にプラスになる就活を模索しています。

(高校生就活を支援する企業ジンジブ・鬼塚陸主任)
「まずこういう感じで企業を調べていくんだということと、もっと色々な所を調べてみようという、ここから主体性が芽生えていく。企業にとっても今回の話を活かして生徒への伝え方や興味を持ってくれる人が増えたりという感じで、(今後に)つながっていければいいと思っています」