広島叡智学園1期生が卒業 6年間の大崎上島での生活に別れ告げ 世界のリーダー目指し多くは海外の大学に

3/4(火) 20:30

2021年には「国際バカロレア」に認定

県が、全寮制の中高一貫校として2019年に開いた広島叡智学園の高校の初めての卒業式が今月1日に開かれました。
県が掲げた「学びの変革」の先導役としての成果と課題を探ります。

(卒業式の様子)

この日、卒業を迎えたのは県立広島叡智学園、通称「HiGA(ハイガ)」の1期生45人。
福嶋一彦校長が一人一人に卒業証書を手渡しました。

【広島叡智学園・福嶋一彦校長】
「HiGA(広島叡智学園)で培ったスキルや経験を土台にして、どのような問題に対しても前向きにそしてグローバルな視野を持って考え、解決していくことに果敢にチャレンジしてくれることを期待しています」

【卒業生代表・藤川空風さん】
「HiGA(広島叡智学園)の1期生であったという誇りと共に学び支えあった絆はこれからの人生の礎として変わることはありません」

大崎上島町にある広島叡智学園。
世界で活躍できるリーダーの育成を目指し、県が2019年に開設した全寮制の中高一貫校です。
定員は中学が1学年40人。
高校からは外国人留学生が加わり、定員は60人になります。
6年前、開校したばかりの叡智学園には、不安と期待に胸を膨らませた1期生の姿がありました。

【吉光絢菜さん(当時中学1年)】
「最初は英語がすごく苦手意識が強かったけど、今は英語で話すことがあっても
聞き取るまではできないけど、慣れたというか環境に合ってきているのかなと思う」
(6年前の授業風景)
叡智学園では国語以外のすべての教科で英語を使った授業を実施。
2021年には国際的な教育プログラム「国際バカロレア」に中高一貫の公立学校として全国で初めて認定されました。
高校3年生の時に外国語で受ける最終試験を通れば、海外の大学の入学資格を取得できます。

6年間の島での生活は充実したものに

あれから、6年…

【卒業する1期生】
「いろんな困難にみんなで挑んで乗り越えていく毎日が楽しくて刺激的な6年間でした」
「HiGAは私にとって居心地のいい場所でした」

教室には頼もしく成長した生徒たちの姿がありました。

【吉光絢菜さん】
「数えきれないくらいの思い出ができたけど、どれも色濃いから全部思い出せるくらい鮮明で自分の人生で一番大切な経験になった」

福山市の実家を離れ、寮生活を送った吉光絢菜さん。
6年間の島での生活は充実していたと振り返ります。

【吉光絢菜さん】
「海に行くときにウェイクボードに誘ってもらったりして、HiGAから始まった島の人たちとのつながりで、地元にいたらできなかったような経験やいろんな人とのかかわりをもらえたというのは島だから繋がれた縁かなと思う」

一方、送り出した親は不安の連続だったと言います。

【吉光絢菜さんの母】
「最初はホームシックがすごくて、たびたび学校から連絡をもらって迎えに来たり、戻りたくないということもたまにあったんですけど、徐々に慣れてきて学校に戻ることが楽しくなってくるように変わった。安心して外に出せるくらいの成長をしてくれたかな」

「日本人としてのアイデンティティ大切にしていきたい」

吉光さんは、4月に東京外国語大学に進学します。

【吉光絢菜さん】
「国際的な視野とか、いろんな世界の文化とかを知れたからこそ自分の地元、日本人としてのアイデンティティをこれからも大切にしていきたい。日本文化とか日本の言語を深く探究して日本の魅力をもっと世界に広げていけるような人になっていきたい」

学校によると、1期生45人全員が大学への進学を希望。
そのうち29人が海外の大学への進学を志望していて、アメリカやイギリスなどおよそ30の海外の大学に合格しているといいます。

【広島叡智学園・福嶋一彦校長】
「進路指導のところが我々の一番の大きな課題だと思っていた。3年くらい前からいろいろ手探りで大学とのネットワークを作ったり、あるいは職員をあらかじめ海外に派遣して大学とのつながりを作らせた。そのようなことを重ねてきた部分が子どもたちを海外に行くときの背中を押すことにもつながった」

一方で、開校した当時は9倍を超えていた志願倍率はこの6年間で減少を続け2025年度は5.80倍にとどまります。
また、高校から1学年20人を募集している外国人留学生枠は、新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いてからも全寮制が障害となり定員に満たないのが現状です。

【広島叡智学園・福嶋一彦校長】
「国によって教育課程が違うので、24時間子どもをあずからなければいけないから、差がありすぎる子どもをとっていくというのは現実的には厳しい」

湯崎知事も外国人留学生の確保を課題に挙げた上で「卒業生の活躍が大きなカギ」になると期待を寄せます。

【湯崎英彦知事】
「卒業生とつながり続けて、活躍を後押ししてあげるということが一番だと思う。彼、彼女が学んだ学校に行ってみたいというふうにつながっていくんじゃないか」

世界に通用するリーダーを育てようと開校した「広島叡智学園」。
少子化が加速する中、生徒をひきつけるための模索が続きます。

グローバルリーダーとして人脈作りに期待

《スタジオ》
1期生の卒業ということですから、これからまさにこの新しい教育の価値というものが出てくるのかなと思いますね。

【コメンテーター:広島大学大学院・匹田篤准教授】
そうですね。45人の卒業生中、29人が海外の大学も志望していることはすごい驚くべき数字です。
本人の意欲もあると思いますが、スタッフ、教員、教職員の人たちとか、保護者の方々の努力をすごく感じます。
そして、語学力だけじゃなくて、意欲、そして、人脈というのはグローバルリーダーに欠かせないと思います。それぞれが世界に羽ばたいていって人脈を作る。
それを高校生の同級生同士が共有する凄く広い人脈が期待できるんじゃないかと思います。