伊方原発差し止め訴訟 原告の訴え退ける「社会に許容される程度の安全性が確保」広島地裁

3/5(水) 18:46

愛媛県にある四国電力・伊方原発について、広島や長崎の被爆者らが運転の差し止めなどを求めた裁判で、広島地裁は原告の訴えを退けました。

【竹内記者】
「伊方原発差し止めならず。敗訴の知らせをする旗を出しました」

島や長崎の被爆者を含めた県内外の住民337人は、東京電力・福島第1原発のような事故が起きれば、放射性物質が広範囲に広がり、瀬戸内海沿岸でも大きな被害を受けるとして、伊方原発の運転差し止めを求めていました。
裁判では地震や火山などのリスクに対する安全性の確保が争点となっていました。

5日の裁判で広島地裁の大浜寿美裁判長は、原子力規制委員会は新規制基準に適合していることを確認して再稼働を許可していると判断。
「生命や身体などを侵害する危険を生じているということはできない」として原告の訴えを退けました。

原告は会見を開き、控訴する意向を示しました。

【原告団長・堀江壮さん】
「無責任な判決ではないかと思います。次の世代のためにもあきらめずに今後も頑張っていきたいと思います」

四国電力は「安全性が確保されているとの当社の主張が認められた」とコメントしています。

裁判の論点は

原告の敗訴という判決が出た伊方原発運転差し止め訴訟ですが…

伊方原発は愛媛県の伊方町に位置していて周囲には山口・大分・広島・香川があります。
この伊方原発を巡っては、他県でも運転差し止めを求める裁判が行われていて、愛媛県での裁判は今月18日に判決が言い渡されることになっています。

広島では、2017年に高裁が運転差し止めを命じる仮処分命令を出しましたが、その後、四国電力が異議申し立てをしたところ、翌年にこの仮処分は取り消しとなりました。
その後も2度にわたって市民が仮処分を申し立てましたが、いずれも退けられています。

今回の裁判は、想定している最大の揺れが小さいのではないかなど、地震に対する安全性、山の噴火に伴って火山灰が降り注いだときの安全性、水蒸気爆発が起こる危険性があるのではないかといった3つの争点となっていましたが、裁判所は原子力規制委員会が新規制基準に基づいて運転を許可しているのであれば、いずれも安全性が確保されていると判断したため、原告の訴えを退けました。

裁判は2016年に提訴され、判決まで9年かかりました。
原告は控訴する方針ですから、争いはまだ続くことになります。
次は高裁がどう判断するのか注目されます。

【コメンテーター:広島大学大学院・吉中信人教授】
「平成4年に最高裁の判決が出てから、再稼働を認める、許可取り消しを認めないという流れがかなり定着してきている。そういう意味では、予測された判決ではある。非常に高度に科学的、技術的な判断が必要なので、それは原子力規制委員会が証明しきれば、取り消しを認めないという判断になったのだろうと思う」

エネルギーという観点でいうと、いろいろな意見があって安全保障の面でも見ていく必要がありますから、今後、裁判がどのように進行していくか注目したい。