JR芸備線 ダイヤ改善・増便などの実証実験を提案 芸備線の可能性を追求 再構築協議会

3/26(水) 18:36

JR芸備線の備後庄原駅と備中神代駅の間の存廃を話し合う再構築協議会が広島市で開かれ、来年度、ダイヤの改善や増便などを含め、潜在需要を引き出す実証実験を行うことを確認しました。

■ダイヤ改善・増便などの実証実験を提案

26日の会議では始めに、芸備線の対象区間に関わる人口や芸備線の利用実績、沿線住民のアンケート結果など、実証実験の前提となるデータなどが報告されました。

その上で、芸備線の魅力を最大限発揮するために、住民ニーズの高かったダイヤの改善や増便、路線バス・タクシーなどの2次交通と芸備線の駅との連携強化策など6つの施策の実証実験を行うことが提案されました。

【中国運輸局・金子修久 局長】
「実際の利用者の方々を巻き込んでの実証事業が大変重要だと思っています」

これに対し、JR西日本は車両や乗務員の数などの実情を踏まえて、列車の増便が難しければバスなどでの疑似的な増便を検討したいなどと応じていました。

■鉄道ネットワークのあり方 国の責任問う声

一方、広島県からは改めて、全国的な鉄道ネットワークのあり方への国の責任を問う声が上がりました。

【広島県・玉井優子副知事】
「国のあり方を考えるうえで、全国につながっているJRの広域的な鉄道ネットワークは重要だと思っているが、この点を議論せずに、今回の対象線区のあり方の検討は地域でよく議論してくれというのは国として無責任ではないか」

国土交通省の担当者は「鉄道ネットワークはJRで維持してもらうのが基本」とした上で、大量輸送など鉄道としての特性が発揮できていない路線に関しては地域での議論が必要だとの見解を示しました。

【国土交通省 鉄道事業局・軽部努 鉄道事業課長】
「その路線が基幹的ネットワークとして特急、貨物が通っているのか。災害時の貨物輸送が想定されているのかなど踏まえて、特性が発揮できていない路線はあり方を議論が必要」

協議会では今後、実務者レベルで実証実験の具体案を協議し、7月には実験をスタートさせる方針です。

■「再構築協議会」設置から丸1年 実証実験で芸備線の可能性を追求

芸備線の再構築協議会はちょうど26日、設置から丸1年となりました。

改めて、対象となっている区間が、備後庄原駅と岡山県の備中神代駅の間の68.5キロで芸備線全体の4割超を占めます。

協議会がこの1年間で何をやってきたかというと、芸備線の多様な価値の創出や鉄道の潜在需要の増加につながる「施策」を仮説的に立案し、収集データに基づいて、「施策」による地域経済効果を試算してきました。

例えば、住民向けに帰宅時間帯のダイヤを設定したり、土日祝日に観光客向けの列車を1往復設定する、などすると、4600万円の費用に対して利用者による消費など8100万円の経済波及効果が見込める、といった試算をしました。

来年度はこうした調査結果をもとに、ダイヤ改善、公共交通間の接続強化など6つの施策案を実証実験として取り組み、芸備線の可能性を追求する予定です。

吉中先生、芸備線の可能性を追求する実証実験、どういう点に注目されますか?

【コメンテーター:広島大学大学院・吉中信人教授】
「仮説に基づく実証実験は非常に大切だと思います。その際にやはり利便性と収益性を考えるが、そこのバランスの重要性、そして鉄道の持つ公共性ということにも配慮して、新たな価値を創出していくということも加えて考えていってもらいたい」

公共性。単純にビジネスだけと割り切って考えるのは少し性急ではないかと感じますが、協議会では実証実験の結果も踏まえ、鉄道も含めた、最適な交通モードのあり方を検討していく方針です。

原則3年で結論を出すことを目標としている中、来年度は重要な1年となります。