広島市が「カスハラ対策基本方針」策定 課題は「不当」か「正当」かの見極め

4/1(火) 18:00

客や取引先などから過剰な要求や不当な言いがかりをつけられるなど著しい迷惑行為や悪質なクレーム、いわゆるカスタマーハラスメント(カスハラ)が社会問題化しています。悪質なカスハラの実態が明らかになる中、職員の多くが「カスハラ」を経験しているという広島市も、今月1日から、職員を守り、働きやすい職場環境を整備しようと、「カスタマーハラスメント対策基本方針」を定めました。

基本方針では、まず、「カスハラ」は、職員の人格や尊厳を侵害し、能力の発揮に重大な悪影響を生じさせ行政サービスの低下を招くおそれもあると指摘。
「組織として毅然と対応することが重要」と宣言しています。

そのうえで、市職員に対するカスハラを「市民等の言動で社会通念上許容される範囲を超えたものにより職員の勤務環境が害されるもの」と定義。

具体的な例として、「暴行や傷害」「脅迫、中傷、名誉棄損、侮辱、暴言」「威圧的な言動」「土下座の要求」「執拗な言動」「不退去、居座り、監禁」「差別的な言動」「性的な言動」「職員個人への攻撃、要求」をあげています。

広島市は、これまでにも「職員の付けている『名前札』をフルネームから名字のみに変更」し「ICレコーダーの配備」といった対策を講じてきましたが、今回は、さらに基本的な対応も明示し、市民等からカスハラと判断される言動があった場合、「組織として迅速に対応し、状況によっては対応を打ち切る」「悪質なものや犯罪行為と判断されるものは警察や弁護士等と連携し、法的措置も含め厳正に対応する」としています。

その一方で、「弱者」が求める「正当な配慮」をカスハラと誤認しないことなども念頭に定期的な職員研修の実施や対応マニュアルの作成、また被害を受けた職員に対するメンタルケアにも取り組むとしています。

全国的には、東京都などで、全国初の「氏名の公表を含む」制裁措置がついたカスハラ防止条例も施行されるなどカスハラ根絶の機運は高まりつつあります。

行政にとどまらず、「正当なクレーム」の権利を守りつつ過度な要求を許さず人々が安心して働ける環境づくりには社会全体での取り組みが不可欠と言えます。