被爆の継承が中学の教科書に 証言活動や高校生の取り組み掲載 被爆者小倉桂子さん「夢にも思わなかった」

4/9(水) 20:00

被爆80年の今年、学校でも次世代につなぐ取り組みが加速していきます。
新年度の教科書にも変化があるようです。

廿日市市の中学校。
7日、新年度の授業開始に向けて、教師たちが新しい教科書の準備に追われていました。

【廿日市市立七尾中学校・岡本浩子教務主任】
「4年ぶりに新しい教科書に変わりました。全教科です」

中学の教科書は改訂が行われ、紙とデジタルの融合が進んでいます。
廿日市市立の中学では、東京書籍の教科書を中心に採択してきました。

【石井記者】
「注目はこちら国語の教科書。戦争や平和体験について実に12ページにわたってページが使われています」

今回の改訂で東京書籍の国語の教科書では、広島市立基町高校の生徒による被爆の継承を取り上げた取り組みや、被爆者小倉桂子さんの被爆体験と継承活動を新たに掲載しました。

これは、6年前に出版された「平和のバトン」を教科書のために新たに加筆・修正したものです。
平和のバトンは2007年度から続けられている基町高校の生徒と被爆者による原爆の絵を通した被爆の継承を取り上げたもので、これまでに200点を超える原爆の絵が完成しています。

教科書ではその若い世代の継承活動を伝えるとともに、その中から、被爆者の小倉桂子さんの黒い雨の体験を描いた絵を掲載しました。
8歳で被爆した小倉さんは、長年英語で被爆証言を続け、80代でアメリカへ渡り、平和の大切さを伝えています。
教科書では初めて「継承」をテーマに掲げました。

【東京書籍 国語編集部・岡 尚人さん】
「80年という時間を考えると、特に中学生にとっては長い年月がたってきているので、後世に伝え続けることで二度とああいった過ちを繰り返さないという平和の思いを絶やさないということが大事なんだよと。そういった観点でより新しい教材がないかということを検討した。
ご存じの通り小倉さんは当時の状況をただ伝えるだけじゃなく、今に常につなげ続けているというところが、今の子どもたちにも伝える教材として非常に重要なところではないかと考えた」

教科書への掲載を知った小倉桂子さんは…

【被爆者・小倉桂子さん】
「びっくりしました。夢にも思わなかったです。世界各国からくる若い方たち、日本の小学生にもお話をさせていただくが、彼らが一番わかりやすいのは教科書。
一番身近ですしね。戦争というもの、核兵器というものをさらに深く自分たちで考えていほしいし理解してほしい。自分がやるべきことを見つけてほしい」

『原爆が投下されておよそ80年。現代の高校生が…』

授業開始を前に、教師たちの教材研究が始まっています。

【廿日市市立七尾中学校 国語教諭・平田恵子さん】
「これまでの教材は、体験されたものを読み取って苦しみや痛みを表現するのにとどまっていた。この教材は、それを受けて自分たちがどう未来につないでいくかがテーマになっている。指導者の私もそこをどうつないで、受け止めてつないでいかせるかを考えていかないといけない」

【廿日市市立七尾中学校・岡本浩子教務主任】
「これが全国版の教科書というのが大きい。原爆を投下された日も知らない中学生も多くいると聞くので、これを機会に、どういうことがあったのかということと、平和に向けて私たち次世代のものが何をすべきかを学んでくれたらいい」

この教科書は全国のおよそ10%の中学1年生が使用する予定で、広島でも8つの地区が採択しています。
被爆80年の節目の年に、教育現場も継承の新たな形を模索していきます。

【コメンテーター:広島大学法学部・吉中信人教授】
「教科書は誰もが必ず通ります。実際に被爆体験を語れる方が少なくなっています。特に小倉さんは英語で伝えることができるので、こうした教科書を通して子供たちに伝えていってほしいですね」