健康基礎知識

泣くほど痛い成長痛、どう対処したらいい?

わが子が「ひざが痛~い!」などと泣き叫んでいたら心配ですよね。仕方のないものと放っておいていいものなのでしょうか。また対処法などについて、整形外科の専門医・原田英男先生のお話しを伺いました。

成長痛とは?
 4~6歳をピークに3~12歳の子どもが、夕方から朝方にかけて(とくに夜中)突然、下肢痛を訴え泣き出すのですが、しばらくすると自然に治まり、翌朝には何事もなかったように元気にしているという病態をいわゆる「成長痛」といいます。一部に、運動のし過ぎによる痛みをこう呼んでいることがあるようですが、正式な病名ではありません。
 何かに足をぶつけたり、捻じったりというような覚えはなく、腫れ、圧痛、発赤などもなく、病院で検査しても異常がみつかりません。痛みの訴えはひざ周囲、脛骨前面が多いのですが、下肢のどこにでも生じます。頻度は毎週のこともあれば、数カ月に一回のこともあります。痛み方が強いので親は心配しますが、日常生活に支障をきたすことなく、大概は1~2年程度で消失します。時々、5年経っても消失しなかったり、頭痛や腹痛を伴う例も報告されています。親に甘えているのではないかと疑わることもありますが、ウソで痛いと言っているわけではありません。痛みに対する感受性が高い体質があるのではないかと疑われる子どももいます。
 さすったり、ストレッチしてやると早く治るという報告もありますが、特別な治療法はありません。しかし一度は器質的疾患がないかどうかを調べることも含めて、専門医に診てもらうことをおすすめします。

成長期に起こる運動器の痛み
 ひとくくりに成長痛と呼ばれるものの中には、スポーツなどで筋肉を酷使することで発生する痛みもあります。現代の子どもの体格は親世代などに比べてよくなっていますが、体力や運動能力はかえって低下しているということが指摘されています。小児期において運動過多な一群がある一方、運動不足な一群の割合が増加しているため、このような結果になっていると考えられています。
 生活環境の変化やゲーム機器の普及で、運動習慣のない子どもが増加すると、運動器がもつ本来の機能を十分発揮できない「運動器不全」や「タイトネス」(身体の硬さ)をもつ子どもが増え、ひいては運動器疾患・障害につながっていきます。
 一方で、加熱したスポーツ環境の中で過重な練習により、体のあちこちに障害を引き起こす子どもも後を絶たず、この“やり過ぎ”と“やらなすぎ”の二極化が問題となっています。
 成長途上にある小児の運動器の力学的特徴は成人と大きく異なっており、そのウィークポイントは骨の成長を担う骨端軟骨(こったんなんこつ)にあります。その代表がひざ前面に発生するオスグッド病、かかとに発生するシーバー病、内側部野球肘です。
 身長の伸びが著しい時期、骨の伸びに対して筋肉・腱複合体に追いついていけず、タイトネス(身体の硬さ)が高まり、筋・腱が付着する骨端軟骨に強い力がかかり、結果としてこの部分の障害を引き起こすと考えられます。また、骨量は骨の伸びに遅れて増加するため、11~12歳頃までは、骨密度が相対的に低下した状態にあり、骨折しやすくなります。

 運動器健診でわかった障害の発生頻度は、オスグッド病や腰痛症は1000人当たり3~7人、野球肘は3~4人ですが、スポーツをする児童・生徒にかぎれば、それぞれが8~12人、3~10人です。そして、下図のように膝の裏を前屈して指先が床につかない子が23%、足の裏をつけて完全にしゃがみこめない子(かかとが浮いたり、後ろに倒れたるなど)が8%いました。これら障害の予防には、タイトネス(身体の硬さ)をやわらげるストレッチが推奨されています。
 実際の治療には、整形外科の病院で診てもらわれることをおすすめしますが、運動しない子どもは日ごろからよく遊ばせること、し過ぎの子どもは親があまりに熱心になりすぎないことが望ましいでしょう。
原田 英男(はらだ・ひでお)
原田リハビリ整形外科 院長 日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会スポーツ医、日本整形外科学会脊椎脊髄病医、日本整形外科学会リウマチ医、日本リウマチ学会専門医
原田リハビリ整形外科
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