健康基礎知識

きれいな歯並びのために気をつけたい生活習慣

気になる子どもの歯並びやかみ合わせ。矯正治療を考える前に、生活習慣の改善で予防できることもあります。日本矯正歯科学会専門医・指導医・認定医の守本優子先生に聞きました。

正しい姿勢でよくかんで
 歯並びを悪くする原因には、顎の骨格など先天的・遺伝的なもののほかに、後天的・環境的なものがあります。とくに近年は生活習慣や癖が影響していると考えられるケースが増えています。
 よく「現代っ子はあまりかまないので、顎が小さくなり歯並びが悪くなる」と言われますが、実際に子どもの顎の骨や歯並びは、かむ力が刺激となって大きく成長するので、刺激が不足すると成長しにくくなります。また、よくかむ習慣が付いていないと、口の周りの筋力の低下や舌や唇を上手に使えないということにもつながり、歯並びを悪くする原因となります。
 〝よくかむ〟というのは、〝固いものかむ〟というより〝かむ回数を多くする〟ということ。繊維質の野菜の多い和食中心の食生活などは、自然とかむ回数が増えるので好ましいと言えます。食事中、テレビに気が散ったり、きちんと座っていなかったりして、姿勢が悪くなるとかむ力を発揮できません。また、口唇を開けたままかんでいないか、飲み物で流し込むように食べてないか、などにも注意を。また〝よくかむ〟基本は食欲なので、規則正しい生活や運動、おやつを食べすぎない、などの生活習慣も重要です。

頬杖をつく、唇をかむなどの癖にも注意
 姿勢については、食事中だけでなく日常的にも注意が必要です。頬杖をつく癖や、ゲームなどに熱中して猫背になりがちなど、姿勢の悪さは、顎の骨格の歪みや噛み合わせを悪くする原因となることがあります。
 また、唇や舌の癖が歯並びに影響することもあります。例えば、下唇をかむ・吸う癖でいわゆる出っ歯になりやすくなったり、舌を前に押し出す癖で前歯がかみ合わなくなったりします。
 治療を考える前に、まずこうした姿勢や癖、生活習慣に日々気をつけてみましょう。その際に「◯◯したらダメって言ったでしょう」「また◯◯してる!」と責めると、「やめなきゃ」というストレスが余計癖を強めることにつながることも。癖を修正するには本人の自覚と協力が不可欠です。できないことを責めるより、できた時に褒めるなど、本人が気持ち良く意識できる声掛けを心掛けてみましょう。

●気をつけたい唇の癖の一例
 歯並びに問題がある場合、生活習慣の見直しだけではなく、必要に応じて矯正治療を検討します。子供の矯正治療については、現在の歯並びだけでなく、歯のはえかわりの状態や成長に伴う変化なども考慮して治療計画を立てる必要があります。治療の開始時期や方法は、歯並びの状態によって異なりますし、医療機関によってもさまざまな考え方があります。ですが、早く治療を始めれば早く終わるというものではありません。矯正治療を受ける場合は、治療の内容や計画についてしっかり説明を受け、十分に理解し、納得した上で治療を始めるようにして下さい。
守本 優子(もりもと・ゆうこ) もりもと矯正歯科 院長
日本矯正歯科学会認定 専門医
日本矯正歯科学会指導医・認定医
広島大学卒業後、大学病院矯正科に14年間勤務した後、2000年に開業。歯科矯正治療を専門として30年間診療に従事している。自身も子供のころ8年間にわたり矯正治療を経験しているため、患者に近い目線でわかりやすい説明と丁寧な治療に取り組むことを心掛けている。

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