健康基礎知識

もしかしてうつ症状? 児童期のストレスの現れ方とは

どうしたらいい? 見過ごさない子どものストレス、子どものSOS
 新学期が始まって約ひと月。新しい友達や担任の先生にも慣れ始め、緊張感が少し緩むころです。児童期の子どもたちは心も体も成長過程にあるため、大人とは違った形でストレスが現れると言います。親は子どものストレスをどのように発見、対処したら良いのでしょうか。
 今回は子どもの心の問題や、ストレスの現れ方や対処法について臨床心理士の大賀祐子先生にお話を伺いました。

◆子どものストレスはどんなふうに現れるのでしょうか
 大人がうつ病になると憂鬱な気分、意欲の低下、悲しい気持ちなど感情面での症状を訴えます。一方、子どもが訴える体調不良は精神的なストレスが身体症状として現れていることがあります。
 初めは風邪や体調不良と区別が付きにくい症状ですが、ウイルス感染などの原因が見当たらないのに症状が長引く場合は、精神的なストレスが原因かも知れません。
 長期休みの後や、休み明けの時期に学校に出て来られない場合には、「ストレスかも?」と考えて、普段の様子と変わったところはないか少し気にかけてあげてください。

◆子どものストレスの現れ方が大人と違うのはなぜでしょうか
 子どもは心と体が発達途上にあるため、心と体の状態をまだはっきり区別が出来ません。そのため、精神的なストレスを発熱、腹痛、食欲不振のような身体的な症状として訴えることが多くみられます。

こころの科学 入門 子どもの精神疾患 悩みと病気の境界線 
「どこまで健康?どこから病気?」日本評論社 より

 発熱や腹痛などの身体症状の他にも、「ゴロゴロしている」「ぼーっとしている」「忘れものが多い」「怒られるような行動ばかりする」など行動の変化として現れることがあります。親から見ると困った行動に過ぎませんが、これらは子どもからのストレス信号の可能性もあるのです。

 こんなとき、親はつい叱ってしまいがちですが、子どもがSOSを出している時に叱るという行為は逆効果です。
 分かって欲しいという気持ちの表れであった行動を怒られてしまい、先生や親に「分かってもらえなかった」という気持ちが強く残った結果、ますます精神的に不安定になってしまうことがあります。

 「ケアしてあげるべきタイミングに叱ってしまい、結果として不適切な対応をしてしまうこともあるので、まずは子どものストレスは大人とは違う形で現れることがあることを知識として知っておきたいものです。知ることで不適切な対応を避けることが出来るかも知れません」(大賀先生)


◆「学校に行きたくない」子どもの心の中で起きていること
 精神的ストレスを身体症状や行動で表す子と同様に、「学校に行きたくない」と訴える子どもも自分がどうして学校に行きたくないのか、気付いていません。本当は学校に行きたいのだけどお腹が痛いから、頭が痛いから、だから学校に行けないのだと訴えます。子どもたちにとって自覚できるのは体調の悪さであり、ストレスを引き起こしている原因を自覚することはなかなか難しいことなのです。

 児童期の子どもに、自分の状態を自覚することを助けるのが精神科医やスクールカウンセラーです。安心できる関係性の中で、対話やその他の技法を通じて自分のこころに向き合い、自分の思いに気づいていくことから、徐々に精神的な安定が得られてくるのです。

 「本人が気付くことから解決は始まります。気付くことでストレスの原因を取り除いたり、対処方法が見つかったりすることがあります」(大賀先生)

 体調が悪いことから小児科に受診し、精神的ストレスに原因がある可能性を医師に告げられ、スクールカウンセラーへの相談につながることも少なくありません。

◆不登校は『問い詰めない』 まずは『他愛のないお喋り』から
 学校に行きたくないという子どもを無理に行かせると、ますます精神的に不安定になってしまうことがあります。まずは子どもの話に耳を傾けてあげてください。
 この時、「どうしたの?」「何が嫌なの?」と聞いても子どもは答えられません。むしろ「嫌いな友達がいるから」「先生に怒られたから」のように学校に行きたくない理由を言える子は解決が早いのです。
 「何がイヤか分からないまま、学校に行きたくない、体調が悪い、という子の方が解決は難しいことが多いのです」(大賀先生)

 子ども自身も分かっていないため、問い詰めても子どもは答えられません。
「じゃあ、何もないなら行きなさい」と言えば、子どもは更に追いつめられます。
 子どもの変化をいち早くキャッチし、不登校になる前に対処できるのが好ましいのですが、子どもが「学校に行きたくない」と言ったときは家族で出かけて気分を変えてみたり、他愛のないお喋りに耳を傾けてみましょう。
 直接関係のない会話の中からポロリと本音がこぼれることもあります。まずは聞く姿勢を親が見せることで、子どもは見守られていることに安心し、癒されるのです。

◆行きたくないで終わらせない! 小学校をうまく活用する方法があります
 絶対に行かなくてはならないと考えるのではなく、子ども自身が「どうしたいと思っているか」「絶対これだけは嫌だということは何か」「何なら出来そうか」など話をしてみましょう。

 教室に登校することは無理でも「保健室なら行ける」「別室なら行ける」という子には、出来ることから始めてみてはどうでしょうか。広島市には、《いじめ不登校対策ふれあい事業》という取り組みがあります。
 ふれあいひろば推進員が、校内において担任やスクールカウンセラーと連携を取りながら、不登校・不登校傾向の児童生徒に対して、相談活動等の支援を行うなど、別室登校を含めた子どものサポートをしてくれます。
 本人が無理なく出来る範囲で学校と関わりを持ち続けられることを探してみてください。行きたくないという気持ちをしっかりと受け止めながら、少しでも出来ることはないか学校と連携しながら対応することが望まれます。
 そのために様々な支援方法が選択肢として準備されています。

詳しくは 教育委員会学校教育部生徒指導指導課 まで
(広島市中区国泰寺1丁目4番21号 TEL 504-2786)

◆ストレスを子どもが感じていると思ったら
「まずは休息を取ること、睡眠時間を取ることを心掛けてください」(大賀先生)

 昨今、習い事などが忙しく疲弊している子どもも少なくありません。子どもがSOSを発しているときは、しっかり休息を取り、話を聞いてあげる時間を取れるよう親も工夫しましょう。
 親に見てもらっているということが子どもにとっての安心感です。問い詰めるのではなく、日常の些細なお喋りに耳を傾けてあげてください。抱きしめたり、手を繋いであげたりというスキンシップもまだまだ必要な年齢です。

 学校は大変だったけど、家に帰ると心強い味方がいる、安心出来る場所があるということが子どもの心の安定には大きな役割を担っているのです。

大賀 祐子(おおが ゆうこ) 臨床心理士

(所属学会)
日本心理臨床学会
日本生殖心理学会
日本臨床心理士会
広島県臨床心理士会

スクールカウンセラー(広島市)
広島市の小・中学校のスクールカウンセラーとして、4校を担当

生殖心理カウンセラー(日本生殖心理学会認定)
IVFクリニックひろしま
広島市南区松原町5-1 BIG FRONTひろしま4F
TEL 082-264-1131
高度な不妊治療を受ける患者さんの不安やストレスについて相談を受けています。
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