健康基礎知識

O脚、X脚 子どもの脚の形が気になったら

 子どもの脚の形が気になったことはありませんか。普通、赤ちゃんの時はO脚で、成長と共にまっすぐな足の形に整っていきます。
 O脚やX脚は見栄えの点から気になることが多いのですが、実際には将来、もっと厄介な関節の問題を引き起こすかも知れません。そこで今回は、大田整形クリニックの大田修先生に子どもの脚についてお話を伺いました。

O脚、X脚というのはどのような状態のことを指すのでしょうか。
 まっすぐ立った時、両側の内くるぶしを揃えても左右の膝の内側が接しないものをO脚、左右の膝の内側を揃えても、右の内くるぶしが接しないものをX脚と言います。

 O脚またはX脚と呼ぶ基準はやや曖昧ですが、一般には指3本分以上離れている場合にO脚、X脚と言います。全てが病的な変形によるものではなく、家族性(遺伝性)の変形のこともあり、全てが治療の対象となるわけではありません。
出典:基本画像のポイントⅠ章「膝」(遠藤裕介、藤井政孝 著)
『小児の整形外科診療エッセンス』(診断と治療社)より


 0歳から2歳頃まではO脚で、3歳頃から次第にX脚傾向となり、小学生になる頃には大人と同じ足の形として完成していきます。

小学生になってもO脚、X脚というのは何か問題があるのでしょうか。
「O脚、X脚だから、即異常というわけではありません。遺伝的なものの場合もあります」(大田先生)

 例えば、お母さんがO脚の場合、子どもが遺伝的にO脚になることがあります。この他、生活習慣や筋力によっても脚の形は変わってきます。

 大田先生によれば、脚の形は歩き方や座り方に影響されるそうです。ガニ股で歩いたり、座った時に膝を開いて座ったりする癖があると、立ち姿でも膝が開いたO脚の形になるそうです。


病気としてのO脚、X脚ではどのようなものがありますか
 有名なものとしてBlount(ブローント)病があります。通常、乳幼児期から成長と共にO脚が改善されていきますが、骨の成長のバランスが悪く、O脚が改善しないか、悪くなるような時にはBlount病を疑います。O脚が改善してくる2~3歳頃に発見されることが多い病気で、代謝異常など他の病気がないにも関わらず、レントゲンで特定の変形が確認されればBlount病と診断されます。
 発見が早期、または軽度であれば矯正装具による治療を行い、経過が悪い場合には外科手術を行うことで約80%が治療可能な病気です。
出典:基本画像のポイントⅢ章「下肢変形」(金 郁喆 著)
『小児の整形外科診療エッセンス』(診断と治療社)より


また、くる病による骨の変形からO脚になる場合もあります。乳幼児期からの成長過程に多く見られ、ビタミンDの欠乏が原因で起こります。
 ビタミンDはカルシウムを固定して骨にする作用を持つ栄養素です。ビタミンDが不足すると骨の変形や発育障害を起こします。
 栄養状態の悪い時代の病気のように思われますが、ネグレクト(育児放棄)や貧困層の子どもの低栄養、極端な偏食などによっても起こります。くる病はビタミンDの欠乏が原因なので、ビタミンD剤を投与すれば改善されます。

 また、ビタミンDは日光浴によっても形成されます。子どもを日焼けさせたくないからと極端に日焼けを避けていると、ビタミンDが欠乏する恐れもあります。
 適度に浴びる日光は、健康な成長のために欠かせません。バランスの良い栄養と共に心掛けたいものです。


日常の癖や生活習慣が招くO脚とは
 幼少期から同じスポーツばかりするのも問題かも?スキル向上は必要ですが、一部の筋肉だけでなく全身の筋肉をバランスよく鍛えることも大切です。
 股関節を広く動かせるようストレッチを行うことで、故障や怪我が起こりにくくなり、運動能力を高める効果もあります。大田先生はスポーツ医学的な観点から、ストレッチの重要性を強調されました。
 最近は、女子がスカートの下にスパッツやアンダーパンツを着用することが増え、脚を開いて座ることに抵抗が薄れました。しかし、脚を開いて座ることはO脚にもつながることから、脚のキレイさを気にするなら座る姿勢にも気を付けた方が良いとのことです。

小学生以降でのO脚 改善方法はあるのでしょうか
 病気などによる極端なO脚は装具療法を行いますが、治療は大体6-7歳までが中心です。小学生期には脚の形が完成しているため、治しにくくなるそうです。脚の形が気になったら、早めに専門医に相談しましょう。

「O脚を治したいなら内転筋を鍛えると良いですよ」(大田先生)
 内転筋とは、太ももの内側の筋肉のこと。脚をだらしなく開いて座る癖がついていると、内転筋が鍛えられておらず、O脚になりやすいそうです。日常的には座る姿勢に気を付けることも大切です。トレーニングで内転筋を鍛える方法としては、椅子に座ってテニスボールを膝に挟み、力を加える方法があります。日常的に簡単にできるトレーニング方法ですね。

 「重要なのは靴底。擦り減った靴を履き続けていると脚にも悪いですよ」(大田先生)
 O脚の場合は靴底の外側が、X脚の場合には内側が擦り減ります。擦り減って傾いた靴底のままで歩いていると、膝の関節に負担がかかります。時々、子どもの靴底の擦り減り方をチェックしてあげてください。

 O脚、X脚の場合、靴にインソールを入れると良いそうです。インソールでO脚やX脚が治療できるわけではありませんが、関節にかかる力は均等になり、脚への負担は軽減します。

脚の形が引き起こす問題とは
 欧米人にはX脚が、日本人にはO脚が多いと言われます。若いうちは見栄え上の問題からO脚を気にすることが多いのですが、長い目で見るとさらに大きな弊害があるのだと大田先生は話されます。
 「O脚がひどいと年を取った時、膝の痛みから歩きづらくなることもあります」(大田先生)
 O脚の場合、膝関節の内側に力がかかり、軟骨部分が早く擦り減ります(X脚では膝関節の外側)。高齢女性で目立つ変形性膝関節症はO脚が原因のことが多いそうです。骨が擦り減ると痛みや変形により日常生活に支障が出るようになります。年を取って重症化するとQOLが悪化するので注意が必要です。

 O脚ならインソールを入れ、膝関節に対し均等に力がかかるようにすれば変形性膝関節症も避けられます。見栄えの問題からではなく、健康に歩き続けるためには靴底やインソールに気を付けることが重要です。

歩く時は「つま先はまっすぐに」
「歩く時、つま先がまっすぐ前に前に出ていますか?両足の裏が並行に着地していますか?」(大田先生)
 つま先が外向き(ガニ股)で歩いていませんか。正しい歩き方では、両つま先がまっすぐ前に向かって出ます。
 歩き方や姿勢を意識したり、インソールを使用してO脚の悪化を防いだりすることで、将来の関節炎、関節痛を予防できます。
 子どもだけでなく保護者の方も一緒に、脚の健康に留意したいものですね。

大田 修(おおた しゅう) 大田整形クリニック 院長
広島県広島市中区富士見町4-27
TEL 082-242-1255

スポーツ医学一般、脊椎疾患、リウマチ 専門
当院では、スポーツ障害、外傷に対して相談、診察、治療を行っています

(財)日本体育協会公認スポーツドクター
(社)日本整形外科学会 整形外科専門医
(社)日本整形外科学会 脊椎脊髄病医
(社)日本整形外科学会 スポーツ医
(社)日本整形外科学会 リウマチ医
日本医師会認定 健康スポーツ医
日本医師会認定 産業医
リウマチ登録医
身体障害者福祉法認定医師
運動器リハビリテーション医

各種ストレッチや治療体操などの運動療法
サポーターや足底板などの装具療法
各種機器による理学療法
内服薬、外用薬、注射などによる薬物療法
その他(テーピング、キネシオテープ等)
治療は基本的に保存療法です。外科的処置が必要とされる場合は、近隣の医療機関を紹介し、協力医と共に治療にあたっています。

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