2019年5月8日(水)
【こんな時どうする?シリーズ】Q.子どもが犬に噛まれてしまいました…。
◆子どもが動物に噛まれた時、動物の種類によって注意する点が異なります。咬傷の約8割は犬によるものです。普段かわいがっている愛犬も時に牙をむくことがあります。そんな時の対処法を紹介したいと思います。
①まずは、傷口を流水で洗い流しましょう。
犬の口の中には、様々な菌やウイルスがいます。感染を起こす可能性が高いので、まずは、噛まれたところを流水でしっかりと洗い流しましょう。
②傷の深さを見極め、早めの受診を。
傷の深さによっては、縫合の処置や抗生剤投与が必要となる場合があります。傷が深く、中の組織が見えている場合や、噛み切られて組織が欠損した場合、数分間止血しても出血が止まらない場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
③「狂犬病」の予防接種の確認を。
噛んだ犬が「狂犬病」の予防接種を打っているか、確認しましょう。
◆「狂犬病予防法」が制定される1950年以前、日本国内では多くの犬が「狂犬病」と診断され、ヒトも「狂犬病」に感染し死亡していました。◆しかし、「狂犬病予防法」が施行され、犬の登録、予防注射、野犬の管理がされるようになり、ヒトの「狂犬病」は1954年以来、犬の「狂犬病」は1956年以来、報告がありません。◆現在、日本にいる犬から「狂犬病」に感染することはほとんどありませんが、日本の周辺国を含む世界のほとんどの地域では依然として発生しているので、海外から輸入された検疫を受ける義務のない動物から犬に感染している可能性があります。◆「狂犬病」は発症すると特異的な治療がないので、狂犬病ワクチンを打っていないと疑われる犬に噛まれてしまった場合は、狂犬病ワクチン、ヒト狂犬病免疫グロブリンを早めに打つ必要があります。◆しかし、日本ではヒト狂犬病免疫グロブリンは製造しておらず、狂犬病ワクチンも少ししか製造していないので入手するのが困難です。そのような可能性がある犬には近づかないようにすることが大事ですが、もし噛まれてしまった場合は医療機関に相談してください。
④噛まれた子どもの予防接種の確認を。
噛まれた子どもが予防接種を打っているか、確認しましょう。
◆噛まれた犬が「破傷風」に感染していた場合、抗体を保有していないと「破傷風」に感染することがあります。破傷風菌は、土壌中に存在し、傷口から入り感染します。◆お子さんの年齢によって異なりますが、「四種混合(ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ)」「三種混合(ジフテリア・百日咳・破傷風)」「二種混合(ジフテリア・破傷風)」が定期接種となってからは、子どもの「破傷風」は非常に稀となっています。◆上記の予防接種を3回以上打っている場合は、抗体がついており、感染する可能性は低いです。◆過去接種歴2回以下、不明な場合は、抗体がついていないことが多いので破傷風予防に破傷風トキソイドワクチン、抗破傷風ヒト免疫グロブリンを接種することがあります。(大人の場合は異なることがあるので確認してください。)◆普段からお子さんの予防接種歴を確認し、犬に咬まれた場合に対応できるようにしておきましょう。
- 武内香菜子(たけうち・かなこ)先生
JA尾道総合病院
小児科医師