2019年9月3日(火)
【こんな時どうする?シリーズ】Q.子どもがよく鼻血を出すのですが…。
◆子どもが「鼻血」を出すのは決して珍しいことではありませんが、あまりに回数が多かったり、なかなか血が止まらなかったりすると、何か恐ろしい病気なのではと不安になってしまうこともあるかと思います。
●子どもの「鼻血」の原因は?
◆子どもの「鼻血」の原因で最も多いのは、“鼻をいじること”です。◆「アレルギー性鼻炎」や鼻の入り口の湿疹などで鼻がムズムズしたりかゆかったりすると、つい鼻をいじってしまいます。◆「うちの子は鼻をいじっていない」と思われるかもしれませんが、親の見ていない所で鼻をいじっていたり、無意識にいじっていて本人も気が付いていないこともあります。
◆鼻の中は薄い粘膜で覆われており、多くの毛細血管が網の目の様に張り巡らされています。◆鼻の粘膜は直接外界と接しているので、鼻をかんだり、鼻の中のゴミ(鼻くそ)を取ろうとして触ったり、様々なことが原因で傷がついてしまいます。◆特に冬場になると空気が乾燥するため、鼻の入り口にカサブタが付きやすくなったり、鼻風邪を引いたりして鼻を触る機会も多くなります。
◆両鼻の間にある仕切りの壁を「鼻中隔(びちゅうかく)」と言いますが、この鼻中隔の前下部にはたくさんの細い動脈が集まっていて、「キーゼルバッハ部位」と言う名前が付けられています。◆ここは鼻の穴の入り口から入ってすぐ近くの位置にあるので最も傷がつきやすく、血流が豊富なので小さな傷でも驚くほどたくさん出血することがあります。鼻出血の多くはこの「キーゼルバッハ部位」からの出血です。
●子どもの「鼻血」の応急処置は?
❶座った姿勢で安静に。
◆「鼻血」に限ったことではありませんが、止血処置の基本は、出血している箇所を心臓よりも高い位置にあげて圧迫することです。鼻から出血しているわけですから、鼻の位置を心臓より高くするためには、あお向けに寝かせるのではなく、できるだけ座らせた方が良いのです。
❷鼻をしっかりと押さえましょう。
◆「キーゼルバッハ部位」から出血していることが多いので、ここを圧迫するために、鼻の入り口に近い「こばな(小鼻、鼻翼)」の柔らかい部分を人差し指と親指でつまみ、鼻中隔を両側からはさみ込むようにしっかりと押さえます。◆「キーゼルバッハ部位」からの出血であれば、通常は10分ほど鼻をつまんでいれば血が止まります。鼻の付け根の硬い部分には鼻骨と言う骨がありますが、ここを押さえても血を止めることはできません。
❸顔はやや下向きにキープ。
◆顔を上向きにすると、血液が鼻からのどに流れ込んでしまうため、顎を引いて顔をうつ向き加減にし、のどに流れた血液はできるだけ飲み込まずに吐き出すようにします。◆「鼻血」を飲み込むと出血の量が分かりにくくなるばかりでなく、多量の血液が胃の中に溜まると気分が悪くなって嘔吐してしまいます。◆丸めたティッシュペーパーや綿花を鼻孔に詰める方法も有効ですが、鼻の中にねじ込む時にかえって傷つけてしまったり、抜き取る時にカサブタごと剥がれて再び出血してしまう場合があります。◆首の後ろをトントン叩く人がいますが、「鼻血」を止める効果は全くありません。
●病院を受診するのはどんな時?
◆子どもの顔色が急に蒼白くなって冷や汗をかいたり、目が虚ろで呼んでも返事をしないような場合は、血圧が下がり過ぎてショック症状(いわゆる「脳貧血」)を起こしている可能性があります。このような時には直ちに横向きに寝かせて脚を挙げなければなりません。
◆ほとんどの「鼻血」は、心配な病気によるものではありませんが、まれに鼻の中の腫瘍や血液の病気が原因となっていることもあります。「鼻血」を頻繁に繰り返す場合やたくさん出血する場合、長時間にわたって血が止まりにくい場合などは、一度は耳鼻咽喉科を受診するようにしてください。
- 石井秀将(いしい・ひでまさ)先生 <span style="color:#FF0000;font-size:1.125em;font-weight:bold;">JA尾道総合病院<br>耳鼻咽喉科主任部長</span>
- JA尾道総合病院 耳鼻咽喉科主任部長
◆日本耳鼻咽喉科学会 専門医
◆日本耳鼻咽喉科学会 専門研修指導医
◆日本耳鼻咽喉科学会 補聴器相談医
◆広島大学医学部 臨床教授
◆身体障害者福祉法15条指定医
◆難病指定医