2025年3月19日(水)
【素朴な疑問シリーズ】孤立や孤独のサイン!若年層のオーバードーズ

市販薬などを過剰に摂取することを指す「オーバードーズ」。近年、大人のみならず、小中学生、高校生の間でも病院に搬送される事態が相次いでいます。そもそも、「オーバードーズ」とは? 現在の若者を取り巻く状況と対処法について紹介します。

若者の市販薬の過剰摂取が増加

オーバードーズとは、薬局やドラッグストアで手に入る市販薬を、本来の用法・用量を守らず、気分の変化を求めて過剰に摂取することを指します。例えば、覚醒作用を感じたくて、規定量以上に飲んでしまうことです。略して「OD(オーディー)」と呼ばれることもあります。2020年の調査によると、薬物依存症の治療を受けた10代の患者の主な要因は市販薬となっています。また、2021年、国立精神・神経医療研究センターが行った調査によると、過去1年以内にオーバードーズを経験した高校生は、およそ60人に1人の割合、つまり2クラスに1人が該当することがわかりました。

違法でなくとも大量に飲めば危険な市販薬

「市販薬だからちょっと多めに飲んでも大丈夫」と思うのはとても危険です。市販薬であっても、必要以上に飲んでしまうと体に大きなダメージを与えることがあります。実際に、救急医療機関に運ばれた「急性市販薬中毒患者」の症状には、吐き気、嘔吐、腹痛、意識障害、イライラ、震え、頭痛、耳鳴り、不整脈などが確認されています。これらは急性の症状ですが、オーバードーズを繰り返すことで依存症になったり、薬の成分が体に悪影響を与えることもあります。
例えば、風邪薬を過剰に飲むと、長期的には肝臓がダメージを受け、最悪の場合、命に関わることもあります。また、市販薬にはさまざまな成分が含まれており、オーバードーズで中毒症状が出ると、それぞれの成分が作用し合ってしまい、原因を特定するのが難しくなり、治療が困難になるリスクもあります。つまり、違法ではないからといって安全や安心とは限らないのです。

要因の多くは若者の孤立や孤独

では、なぜ今、若者たちはオーバードーズをしてしまうのでしょうか?
風邪薬や咳止め薬、解熱鎮痛薬の一部には、決められた量を超えて摂取すると覚醒作用が現れ、「気持ちがよくなる」、「パフォーマンスが上がる」、「気分が変わる」といった精神的な変化を引き起こすことがあります。オーバードーズを繰り返す若者たちは、こうした効果を求めて薬を乱用してしまうのですが、その背後には「辛い精神状態から解放されたい」、「自分の絶望を誰かに伝えたい」、「誰かに本当に愛されているのかを確かめたい」といった深い思いがあることが多いようです。

子どもの変化に気が付いたら迷わず相談を

もし、子どもがオーバードーズをしていることに気づいた場合、親はどうしたらよいのでしょうか?まずは、「どうしたの?」「何か悩んでいることがある?」、「よかったら話を聞かせて」と声をかけ、相手の気持ちに寄り添いながら話を聞いてあげましょう。そして、もし何をすべきか分からないと感じたら、専門の相談窓口に連絡してみてください。相談は本人からだけでなく、家族からでもできます。実際、オーバードーズを繰り返す子どもを心配している家族からの相談にも対応している窓口もあります。家族が相談を通じて支援を受けることが、問題解決への第一歩となります。

薬の使い方を話し合うなど信頼関係構築が鍵
薬局やドラッグストアでは、若者が一部の医薬品を購入する際に氏名や年齢を確認したり、数量を制限する措置を取っていますが、これだけではオーバードーズを完全に防ぐことはできません。だからこそ、家族を含む周囲の人が気づいて声をかけ、話を聞いてあげることが大切です。
学校、友達関係、家庭環境、習い事、辛い思いに局面している子どもたちを責めるのは控えましょう。信頼できる人に頼り相談するのが一番です。そして、オーバードーズという選択肢をとってしまう前に、薬の用法についてどうすればいいのか家族で話し合ったり、薬を使うときのルールを決めたりするなど、普段から信頼関係を築いていきましょう。

<出展>
政府広報オンライン:「その気持ちに飲み込まれないで!オーバードーズの危険性」
政府広報オンライン:「一般用医薬品の乱用(オーバードーズ)について」
環境省「薬のオーバードーズって何だろう~あなたとあなたの大切な人の命を守るために~(小学生向け)」
政府広報オンライン:「その気持ちに飲み込まれないで!オーバードーズの危険性」
政府広報オンライン:「一般用医薬品の乱用(オーバードーズ)について」
環境省「薬のオーバードーズって何だろう~あなたとあなたの大切な人の命を守るために~(小学生向け)」