気になる○○事情

親の言うことをなぜ聞かない?

「子育て親育ち」座談会 【小学高学年~中学生編】

  • 子どものことは何でも知っていると思っていたのに、中学生になると知らないことが増えてきます。親としては心配のあまりあれこれと言いますが、子どもは反抗するばかり。「子どもが言うことを聞かない」と嘆く前に、子どもがなぜ聞こうとしないのかを考えましょう。今回は、上の4コママンガからスタート。各家庭でよくあるケースですが…
  • 上野
  • 約束の時間を過ぎて帰ってきた子ども。親は「何時だと思ってるの? ご飯が冷めちゃったわよ」と、カーッとなって怒りました。こんなことありますか。
  • 石本
  • 待ってる時間って長いんですよね。だからどうしてもイライラして、それを子どもにぶつけて怒ってしまいます。
  • 森川
  • 遅れて帰ってくるには、何か理由があるんでしょうけれど、普段通りの顔で楽しそうに帰ってくることに腹を立ててしまいますね。
  • 上野
  • マンガのお母さんは「ご飯が冷めちゃったわよ」って言っていますが、これって、子どもにとって重要なこと?
  • 石本
  • これは、怒るところがずれていますね。最初に怒りたかったのは約束の時間からかなり遅れて帰ってきたということなので、叱るならそこだと思うのですが…。
  • 上野
  • そうですよね。これだけみると親の都合を子どもに押しつけているような感じがします。私たちも、そんなことってありますよね。
  • 森川
  • 親の都合ばかりではなく、親は先のことが読めるので、それを指摘すると、子どもは機嫌が悪くなります。親は、こんなに子どものことを思っているのに、気持ちがすれ違うんですよね。
  • 上野
  • 親は子どもの気持ちが分からない、子どもも親の気持ちが分からない。今日はここがポイントですね。先ほどのマンガですが、3コマ目の吹き出し部分を考えてみてください。
  • 石本
  • 「そんな怒り方をしなくてもいいのに。こっちにだって理由があるのに-」かな。
  • 森川
  • 「いきなり怒らなくてもいいじゃん」とか、「理由ぐらい聞いてよ」ですかね。
  • 上野
  • ここで大事なことは、「心配していたのよ。話を聞かせて」と親の気持ちを伝えること。きっと理由があったのでしょう。子どもを信じる気持ちがあると、いきなり怒ってしまうことも少なくなるでしょう。ではこのマンガのように、親子の気持ちがすれ違うことってありますか。
  • 森川
  • 中学生になると、親と話をする機会が減ってきます。親が聞きたいな、聞いてみたいなと思うことに対して、期待するような答えが子どもから返ってこないと、ますます聞き返してしまいます。そういう私の気持ちと、子どもの気持ちが合わないことが最近多いと感じています。
  • 上野
  • 親が全てを知る必要はないと思います。
  • チャイルドラインにかかってくる電話の内容で、子どもと親との気持ちのすれ違いで、一番多いの進路の問題。子どもは、自分の人生は自分で考えたいと思っています。子どもは、親が自分の気持ちを分かってくれないと私たちに訴えてくるんです。おそらく親子で話はされているのでしょうが、親が考えることが、子どもにとって良いこととはいえないケースもありますね。
  • しっかり、子どもの話を聴いていますか

    • 上野
    • 「あなたの話を聴くよ」「お母さんはあなたを信頼してる。お母さんに話を聞かせて」という気持ちを子どもにどう伝えるかを考えてみましょう。
    • 石本
    • 私は息子から「俺の話を聴いてくれ。途中で母さんが絶対口を挟んでくるから、言いたいことが全部言えない。とりあえず聴いてくれ」と言われました。
    • 森川
    • 子どもを信じているのですが、心配する気持ちの方が強くて、つい先手を打ってみたり、一言挟んだりしてしまいます。
    • 上野
    • まずは丁寧に話を聴くことです。子どもは、自分の気持ちがなかなかうまく言い表わせません。時間をかけて話を聴くことです。
    • 森川
    • 言いたいことをぐっとこらえ、子どもの話を聴くべきだということは分かっているのですが、それがなかなかできないんです。
    • 石本
    • 私、最近ちょっと落ち着いたんですよ。私の母から、「子どもの全てを知らなくてもいいんじゃない」と言われました。ちょっとした秘密があっても、それはそれでいいと…。全部を知ろうとするから、お互いにしんどいと分かって、少し楽になりました。
    • 上野
    • だって私たちも子どものころ、親に言わないことっていっぱいあったじゃないですか。特に思春期になると、本当に言えないことや悩んでしまうことが増えてくるものです。親も子どもの時があったわけですから、親とすれ違ったことをちょっと思い出してみると、わが子の気持ちが理解できるかも。
    • 森川
    • 今日、上野さんに一番聞いてみたいのは、聴き方のポイントです。チャイルドラインの電話相談で子どもたちの悩みを聞いていらっしゃるので、いろいろな対処法をご存知かと思うのですがいかがですか。
    • 上野
    • 私たちチャイルドラインは、基本的に〝傾聴〞なんです。アドバイスはしません。子どもの持っている力を信じて、子どもが悩みを話すことによって気付いていくという力を信じて話を聴くようにしています。あくまでも答えは子どもが出すというスタンスです。それが自立にもつながります。
    • 石本
    • 「聞き上手は話し上手」といわれますが、子どもの自立を促すためには、どういう言葉がけをしたらいいのでしょうか。
    • 上野
    • 基本は、子どもをありのままに受け止めること。子どもが言った言葉以外、基本的に私たちは使いません。ですから、子どもが言った言葉を繰り返します。そうすることで、「私が言ったことを聴いてくれている」ということが伝わり、それが安心感になります。いきなり「あんた、ダメじゃないの!」と言ってしまうと、子どもは電話を切ってしまいますから…。それと、子どもの話は、共感して聴くということを心掛けています。共感と同情とは違うので注意です。
    • 森川
    • 共感も同情も、何だか一緒のような気がしますが、何が違うのでしょうか。
    • 上野
    • 悩んだり、苦しんでいる子どもがいたら、「あなたを一人で放っておいたりしないからね」という姿勢で、そっとそばにいて一緒に考え、「大丈夫だよ」って言ってやること。それが共感です。その時、先回りして大人が答えを出さないこと。あくまでも決断は子どもです。もし次に何か悩みがあった時、「お母さんだったら一緒に考えてくれる」という気持ちを抱かせることが大切です。
    • 座談会を終えて…

      • 編集部
      • それでは、今日の座談会の感想をお聞かせください。
      • 石本
      • 私は、子どもが何かを言ってきたら、なるべく聴くようにしていたつもりです。しかし今日の座談会で、「お母さんが決定してはいけない。答えは子どもが出すもの」と言われ、思わず「ん?」と、考えてしましました。ここは反省だなと感じました。子どもの力を信じることが大切なんですね。親が勝手に判断を下すのではなく、共に考え、決定は子どもにさせることで、自立して
      • いけるよう、そっと寄り添いたいと思いました。
      • 森川
      • 今日、上野さんがおっしゃったことは、今の私にストレートに響く言葉ばかりでした。〝十四の心〞を意識して、口を挟まず、否定せず、同情せず、ただひたすら話を聴くことを心掛けま
      • す。子どもを信頼して見守りたいと思いました。
      • 上野
      • 「なぜ子どもは、親の言うことを聞かないのか」と思っている方がたくさんいらっしゃると思います。結局は、親自身が子どもの話を聴いていない場合がほとんどです。少しずつでも〝傾聴〞
      • を心掛けていただければと思います。「お母さんに話してよかった」と安心感が得られれば、もし、トラブルに巻き込まれたり、大きな問題に直面したときも、親子で話し合いながら乗り越えていけるはずです。
      • 森川陽子さん(左) 上野和子さん(中) 石本智香子さん(右)

        • この度実施した座談会は、11月2日にパルコムユーストリームスタジオ(西区大芝)の協力の下、ユーストリームを使って放映しました。ウェブサイト「LICOひろしま」内にある「子育て親育ち」のバナーをクリックすると、過去の座談会もご覧いただけます
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