2015年10月14日(水)
自分の子どもが、イジメの被害者・加害者になったとき
なくなることのない「イジメ問題」。イジメによる自殺も後を絶ちません。もし、あなたのお子さんがイジメの被害者、加害者だったら、親としてどのように対応したらいいのでしょうか。子どもへの暴力防止(CAP)プログラムの普及に取り組んでいるNPO法人CAP広島理事長であり、広島国際大学医療福祉学部医療福祉学科の教授、下西さや子さんに聞きました。
現代のイジメは、特に理由がなくはじまることが多い
昔は、ガキ大将的な子どもによるわかりやすいイジメだったのが、最近は流動的で「劇場型イジメ」へと変わりました。これは、例えば、グループの結束力を強めるために昨日はAさんが仲間外れにされていたのに、今日はBさんが・・といったように、被害者が加害者、加害者が被害者になる場合のことを言います。また、一人の子がターゲットとなって、二人からイジメられている事実をクラス全員が知っていても黙っていることが多く、被害者を助けたら、今度は自分の番になる、という心理から、見て見ぬふりをする傍観者も多いです。インターネット、SNSが日常的に使用されるのが当たり前となり、直接的ではなく、間接的にイジメをする手段が増えたこともイジメを見えにくくしている大きな要因と言えます。
イジメ問題は、小学校高学年から中学生にかけて多い
思春期がはじまる、小学校高学年からイジメ問題がはじまり、新しい環境に慣れてきた今の時期に増加する傾向があります。
男の子は「身体的に暴力をふるうイジメ」、女の子は噂を流す「仲間外れ」「無視をする」といった「間接的なイジメ」が多かったのですが、現在では境界線がなくなってきています。
男の子は「身体的に暴力をふるうイジメ」、女の子は噂を流す「仲間外れ」「無視をする」といった「間接的なイジメ」が多かったのですが、現在では境界線がなくなってきています。
親として、どのように対応したらいいのか
親が「イジメられているの?」といった事実関係を確かめると、子どもは心配をかけたくないという気持ちや屈辱感などから、多くの場合、否定します。何とかしたい、という気持ちはわかるのですが、子ども間で起こっている問題なので、まずは子ども自身ができることをやってみること、その勇気が持てるようにサポートすることが大切です。親の力で解決しようと焦ると、子ども自身の解決力が奪われてしまいます。しかし、子ども自身の力ではどうしようもない深刻なイジメもありますから、そういう場合、子どもが信頼している先生に相談してください。
イジメの加害者だったら
親は、自分の子どもがイジメられていたら・・・と心配しがちですが、イジメをしている加害者だと思うことは少ないです。イジメられる側にも原因がある、と正当化する親もいるかもしれません。しかし、イジメは被害者の視点から考えることが原則です。叱責するのではなく「どんな理由があっても人を傷つけたり、暴力をふるってはいけない」と伝え、「イジメをしているのは悲しい」という言い方をすることで、親を悲しませるようなことをしたと思い、親の話に耳を傾けてくれやすくなります。
イジメに気づくためには
とにかく普段から親子で会話をすることです。「いつもよりご飯を食べないな」「なんとなく落ち込んでいる気がする」など、ちょっとした変化に気づくことができるよう意識することで、イジメがエスカレートする前に気づくことができるかもしれません。
「逃げる勇気」を持つことも大切
子どもからイジメられていると相談してきたときは、一緒に解決策を考えてあげましょう。保健室や図書館で過ごす、信頼できる先生や友だちに相談する、チャイルドラインに助けを求める、などイジメから逃れるためにどういう選択をするか子ども自身で決めることができるよう、日頃から「選択する習慣」をつけましょう。イジメから逃げるのは、弱いことでも悪いことでもありませんよ。
- 広島国際大学医療福祉学部医療福祉学科 教授 下西さや子(しもにし・さやこ)
- 広島市中区生まれ 1995年にCAPプログラムに出合い、数人の仲間とCAP広島を設立。2007年に法人化し、理事長に。実働メンバーは教師、ソーシャルワーカー、保育士や約30人。2011年から広島国際大学の教授に。専門は、子ども家庭福祉。著書に「非行とエンパワーメント・アプローチ」など。広島市社会福祉審議会児童福祉専門部会委員