子育てアドバイス

お年玉の使い方、親子で話し合ってみませんか ~今、子どもに金融教育が必要なワケ

 子どもたちにとってお年玉がもらえるお正月は大きな楽しみです。しかし、まとまった金額のお金を子どもが手にするので、親にとっては心配の種かも知れませんね。
 お年玉は親子で「お金」について話をする良いきっかけ。そこで今回は、子どもの金融教育に詳しい、ファイナンシャルプランナーの朝原奈津枝さんから金融教育の現状と必要性についてお話を伺いました。

なぜ、子どもがお金について学ぶ必要があるのでしょうか?
 親世代が子どものとき、学校で『金融教育』を受けてきたでしょうか。そのため、『金融教育』と聞けば、為替や投資など一部の人にしか関係のない難しい話のように考えがちです。
 しかし、頑張って働けば年金や退職金(企業年金)で老後の生活が保障される時代は終わりました。401K(確定拠出型年金)を始め、自己責任で自分のお金を管理するよう求められています。
 今の子どもたちが大人になる頃、少子高齢化は一層進みます。年金や医療、介護制度などの社会保障は国の財政をさらに圧迫するでしょう。人口縮小による税収減少が続けば、社会保障費の削減は避けられません。

 人生100年時代、いえ、子どもたちが大人になる時には人生120年時代が到来するとも言われます。
「23歳から70歳まで働くとして50年弱。120歳まで生きる時代になれば、働いた期間と同じくらい長い老後が待っています。もはや、公的な保障だけに頼れる時代ではありません」(朝原さん)
 これからの時代を生きる子どもたちだからこそ、生きる力となるお金のことを学んで欲しいと朝原さんは考えています。


小学生が学んでおくべきお金のこととはどのような内容ですか
 「金融広報委員会が『金融リテラシー・マップ』というものを出しています。これは年齢層別になっていて、身に着けておきたいお金の知識や判断力がどのくらい必要か指標が示されています」(朝原さん)
 この中には、『国民一人ひとりが、より自立的で安心かつ豊かな生活を実現するため』に金融リテラシーを身につける必要があると述べられており、現代社会において金融リテラシーは『生活スキル』であるとも書かれています。

 金融リテラシー・マップでは《家計管理》《生活設計》《金融知識及び金融経済の事情の理解と適切な金融商品の利用選択》《外部の知見の適切な活用》の大項目4つに分類し、それぞれについて年齢層別にさらに丁寧に説明されています。

 例えば、子どものお年玉の使い方に関係しそうな《家計管理》の項目では次のように書かれています。

金融リテラシー・マップ「各年齢層に応じ習得すべきスタンダード」
分類1.家計管理(金融広報委員会・2015年6月改訂版より)

皆さんのご家庭ではいかがですか?
お子様の金融リテラシーは育ってきているでしょうか?

気になるお年玉の使い方 子どもにはどのように話したらよいでしょうか
「お勤めされている方なら毎月給料が支払われます。そして、ボーナスが出ます。子どもに置き換えて考えれば、毎月のおこづかいは給料みたいなもの。お年玉はボーナスです。基本的には大人と同じですね」(朝原さん)

 大人になれば、毎月の収入で生活を組み立てています。
 一方、ボーナスは耐久消費財などの購入や、将来の教育費のための蓄えに回したりするでしょう。そして、せっかくのボーナスですから、これまで欲しいと思っていたものも買いたいと考えるかも知れません。給料とボーナスではその性質や使い方が異なるものであることが分かります。

 そこで朝原さんはお年玉を『すぐに買いたいものに使うお金』『大きな買い物のために貯めておくお金』『さらに将来のためにとっておくお金』の3つに分けてみることを提案されています。
 3つの配分について親子で話し合えば、お金の大切さに気付いて我慢したり、貯めて使うことを覚えたりするチャンスになりそうですね。


お金の教育とは《しつけ》そのもの!
「お金の重みを感じる良い方法があるんですよ」と朝原さん。
『重み』を感じる分かりやすいユニークな方法を紹介いただきました。

 1円玉1枚は1グラム。1000円は1000グラム、すなわち1キロです。千円札なら紙1枚。でも、1円玉にすれば、こんなにずっしり重みのあるお金です。
 朝原さんは子ども向けセミナーで1キロの重さの1円玉を持ってもらい、重さを体験することを通じてお金の価値を認識してもらっているそうです。
 ご家庭では1円玉を1000枚準備することは難しいかも知れませんが、砂糖の袋が1キロだから1000円分の重さ、お米10キロなら1万円の重さだと考えれば、お年玉の無駄遣いはできなくなりそうです。

「お年玉について話し合う時に忘れないようにしたいのは、お年玉をくださった方への感謝の気持ちです」(朝原さん)
 子どもには、お年玉のお金がどこから来たのか考えて欲しいと朝原さんは言います。
 親戚の方からもらったお年玉は、親戚のおじさん、おばさんが働いて得たお金。おじいちゃん、おばあちゃんからもらったお年玉は、若い頃に頑張って働いたことでもらえている年金やそれを貯めたお金から出してもらっています。
 働いてお金を生み出し、それがお年玉のお金になっていることから、お年玉をくださった方への感謝の気持ちを伝えることが大切だと朝原さんは強調されます。
「お金の教育とはしつけそのものなんですよ」(朝原さん)
 お年玉をきっかけに、お金の使い方や将来の生き方について親子で考えてみてはいかがでしょうか。


朝原 奈津枝さん ゆとりすと代表 
ファイナンシャルプランナー
社会保険労務士
2002年より独立系FPグループ マネーバランスクリニック所属のファイナンシャルプランナーとして活動。企業・個人への総合相談(保険・年金・貯蓄・住宅ローン・投資などの総合マネーバランス相談)を行う傍ら、セミナー講師、コラム執筆、ファイナンシャルプランナー育成を行う。
現在、キッズ・マネー・ステーション認定講師として、金融教育、キャリア教育を目的とした『親子マネー講座』を企画・主催している。
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