2019年12月12日(木)
【よくある相談シリーズ】うちの子、まだ“親離れ”できていなくて…。
私は、お仕事で出会ったお母さんたちから、「うちの子、まだ“親離れ”できていなくて、自分のことを自分でできないの。これくらい1人でやってもらわないと…」といったお話を聞くことがあります。今日はこの“親離れ”を中心に、“子離れ”についても考えてみたいと思います。
●“親離れ”って、どうなることかな?
みなさん、“親離れ”と聞いて、どんなことを想像しますか?
実際、私も普段の生活で、うちの子に「中学生にもなって」と、ついつい小言を言ってしまうことがあります。先程のお母さんの発言や私の小言を含めて整理すると、どうやらお母さんたちは“親離れ”とは、「親の力を借りずに、自分で自分のやるべきことを考え、行動できるようになること」と考えているようです。
子どもたちは徐々に、経験や学習を通して、知識や状況を学び、大人に近い思考や考えができるようになっていきます。ここで大切なポイントは、この「徐々に」。私たちも、子どもが産まれたからと言って「すぐに」、お母さんとして、お父さんとしての行動や考えができるようになる訳ではないように、子どもたちも小学生になったから「すぐに」、自立して小学生らしく行動できるようになる訳ではありません。少しずつ、子どもたちのペースで、ちょっとずつ、「徐々に」できることが増えていくのです。
私たちお母さん、お父さんが怒る時によく使う「何度言ったら分かるの!」と言う言葉。子どもはそもそも「徐々に」できるようになるので、元々「何度も言わないと分からない生き物だ」と覚えておくと、腹が立ちにくくなるかもしれません。
子どもたちは、私たち周囲の大人を含めた環境によって大きく影響を受け、それぞれ成長していきます。大人や周囲との関わりによって、できることが増えていく。言いかえると勝手には“親離れ”できるようにはならないと言えそうです。では次に、上手に“親離れ”できるための子どもへの関わり方について考えてみたいと思います。
●子どもたちが上手に“親離れ”できるには?
これまでのコラムの中でもご紹介しましたが、私の子どもとの関わり方のベースには、ペアレントトレーニングの考え方があります。今回もそれを踏まえて、この“親離れ”、言い換えると「自分で自分のやるべきことを考え行動できるようになる」ために大切な子どもへの関わり方の手順を3つ考えてみたいと思います。
手順①
子どもの『できること』と
『まだできないけれど、もう少しでできそうなこと』、
『まだ難しいこと』を知っておく。
ここで間違えてはいけないのは、「小学生になったらできて当たり前」とか「○才なら自分でできて当たり前」と言う見方をせず、目の前にいる子どもの行動を観察し、客観的に『できること』『もう少しでできそうなこと』『まだ難しいこと』を整理していきます。もしかすると「自分でできない」と腹を立てていたことは『まだ難しいこと』なのかもしれません。だとしたら、それに腹を立てるのは勿体ない!それより『できること』や『もう少しでできそうなこと』を見つけてみましょう。
手順②
肯定的な声かけで
「やってみたい!」「やってみよう!」と思えることを増やす
これは「自分で自分のやるべきことを考える」練習の1つです。
私たち大人は「やらなくてはいけないこと(家事・育児・仕事など)」に、日々追われて生活しています。「やらなくてはいけないこと」がたくさんあると、押し潰されそうな気持ちになることはありませんか?
手順③
安心で安全な環境の中で、
子どもがそれを試せる機会を作り、
結果でなく過程を肯定し、一緒に喜びを分かち合う
子どもたちの「やってみたい!」「やってみよう!」が見つかれば、それを安心で安全な環境の中で試すチャンスをあげましょう。
例えば、子どもが「スイカに塩かけると甘いって、誰かが言ってたよ。ちょっとやってみよう」と言った時に、「よく覚えていたね。試してみようって思うのもすごいじゃん。やってみよう!」と一緒に食べてみるとか。子どもが「試合の時は僕もチームメイトもガチガチに緊張するけん、今度ベンチで何か面白いこと言ってみようと思うんだよ」と言ってきた時に、「へぇ面白い事?それを思いつく、あんたが面白い! やってみてどうだったか教えてね!」と笑顔で返すとか。
このやり取りの中では、子どもたちは仮説を立て検証していく自然科学的な思考を身に付け、勉強に積極的に取り組める勤勉さを身に付けていきます。また、友達とのコミュニケーションやチームワークといった経験も積んでいくことに繋がっていきます。
自分で考えたことを、お母さん、お父さんに肯定してもらうことで、安心して「やってみる」取り組んでいく。そしてそれが良い結果でも悪い結果でも、そう考えて、やってみた、試すことができた過程を肯定することで、「自分で自分のやるべきことを考え行動できるようになる」。こうしたことの積み重ねで“親離れ”が「徐々に」進んでいくわけです。
“親離れ”は一足飛びに出来るものではなく、そうした日々の積み重ねの先に見えて来るもの。焦らず、のんびり構えて、今、目の前の我が子をしっかりみて、子育てを楽しんでいきましょう!
●上手に“親離れ”できるように、
上手に“子離れ”していこう。
このコラムを書かないといけないなぁと考えていた最中、我が家にもとうとうやってきました!! 反抗期です。ちゃ~んと私も中学生の次男に言いました!「小学生の頃は、ちゃんとできてたじゃん! 何でそんなこともできなくなっちゃったの!」その時、閃いた!『これが子離れのタイミングだな』と…。
子どもたちは反抗することで私たちに「そろそろ自分の足で立つ練習を始めるよ」とサインを送ってくれます。でもまだ手は離しても、目を離してはいけません。子どもたちは「徐々に」進んでいく生き物。困った時にはしっかり手を差し伸べないといけないので、目は離さず見守っていきます。
子どもたちから“子離れ”サインが出たら、子どものテリトリーに侵入し過ぎないように気を付け、自分自身が楽しいことをする時間や、自分がどう生きたいのかを考える時間を増やしてみましょう!
おそらくこのコラムを読んでくださっているお母さん、お父さんは、これまで自分より子どものことを優先して生活し、子育てを大切にされて来た方ではないかと想像します。子どもの反抗はそんな中、とても衝撃的ですが、子どもたちが私たちにくれた「自分自身を大切にする」チャンスだと思って。子どもたちの“親離れ”と同じく、私たちの“子離れ”も「徐々に」がポイント。焦らず、自分自身の良いところ見つけをしていき、自分の気持ちを大切にして「徐々に」進めていってみてください。
そうする先に、親子の新しい関係『お互いを尊重し大切に想い合える関係』が紡がれ築かれていきます。焦らずのんびり。のんびりと。
- 土居和子
広島県教育委員会 スクールカウンセラー
広島県乳幼児教育支援センター
保育ソーシャルワーカー
東広島市教育委員会
スクールソーシャルワーカー
広島文化学園短期大学保育学科 非常勤講師
三原看護専門学校 非常勤講師 - その他
ペアレントトレーニング、NPプログラム、
BPプログラムなどの保護者向け子育て講座
ティーチャーズトレーニング、
事例検討会などの保育士や幼稚園教諭向けの研修会
小中学校教員向けの研修会など