子育てアドバイス

【よくある相談シリーズ】うちの子、みんなと行動が違うんです。。。



●子どもがみんなと違う行動をするのはなぜ?

まず考えられることは、「別のことをしたいから」です。子どもは目の前にあるものに興味を抱きます。「これは何だろう」と考え、「触って確かめよう」とするのです。このような「好奇心」は、自分の生きる世界を知っていく大事な行為です。

そして、2歳前後になると「自我」が芽生えてきます。意思を持ち、「自分がやりたいと思うことをやりたい」という気持ちが強くなってきます。この時期を「第一反抗期」といい、子どもは自立への歩みを進める大事な時期です。

同時に、この時期は「子どもと大人」の関係から「子どもと子ども」の関係へと、人間関係を広げていく時期でもあります。人間関係の広がりとともに、自分の「やりたい」気持ちで行動するだけでは、友だちと一緒に遊ぶことができないことに気づいていきます。そして、成長するにつれて少しずつ周囲の状況を理解・判断し、「〇〇をやりたいけれど、今は△△する」という気持ちである、「自制心」が育ってくるのです。

大脳は、まず興奮回路が発達し、後に抑制回路が発達していきます。衝動的に行動する「衝動行為」から、次第に人との関係の中で生きるためには「自制」する必要があることに気づき、心の中で「自己主張」と「自己抑制」に折り合いをつけて(内面的調整)、周囲の状況に沿った行動をするようになっていくのです。

子どもは、自分の意志や要求を主張し、受け止められる経験をとおして、他者を受け入れることができるようになります。つまり、自分が要求を伝えて(自己主張)したことを受け入れてもらい「させてもらった」という経験を積むことで、相手の要求を受け入れて(他者受容)、自分の行動を自制する(自己抑制)心(自制心)が芽生えてきます。したがって、周囲の大人は、まず子どもの要求をなるべく受け入れることが大切です。


 

 


●私たちがみんなと同じ行動をするのはなぜ?

そうすることが「気持ちいいから」と考えることもできます。笑いかけたら笑い返してくれた、太鼓の演奏で息がぴったり合ったなど、同じ行動をすることで周囲の人たちと心が通じていると実感することができます。

私たちは社会の中で生きています。「そうすることになっている」習慣やマナーは、お互いに気持ちよく生きていくために考えられたものだといえます。子どもたちは、周囲の大人の姿を見ながら、「状況の理解・判断」と「行動」を結びつけることにより、自分なりの「行動規範」を築いていきます。この行動規範の構築は、「自制心」の育ちと関係しています。


 


●いつもみんなと同じ行動をすることは良いこと?

「みんなと行動が違う」という表現には、ネガティブな捉え方が含まれています。しかし、「みんなと行動が違う」ことは、悪いことなのでしょうか。「好奇心が強い」「自己主張ができる」ことも生きていく中で必要なことです。そして、「状況を理解・判断し、みんなと違う行動を選択する」というのは、高度な行為ともいえます。

 
村上智子 広島女学院大学
人間生活学部児童教育学科 准教授
専門分野:幼児教育学、保育学
子どもたちがより豊かに遊ぶことができる環境とは何か、保育者はどのように関わるとよいのか、を考え続けています。保育所保育指針には、子どもの育ちに必要な環境として、物的環境と人的環境、そして自然や社会事象が挙げられています。NPO法人ひろしま自然学校の協力のもと、学生たちと一緒に「イベント型森のようちえん」の活動を企画・運営していく中で、子どもたちからも学んでいます。
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