2020年5月15日(金)
【よくある相談シリーズ】休校中の過ごし方のポイントは?
新型コロナウィルスの感染拡大により、子どもたちの生活や教育の環境が激変しています。休校中は自由に過ごすことができますが、自律と自立も求められます。子どもだけでは難しいため、保護者の方の助言や支援が必要です。年齢を重ねていく中で、少しずつ自分で生活を組み立てていくことができるようにしていきましょう。
●生活を組み立てていくためには?
生活のリズムを崩さないためには、朝一定の時間に起きることが大切です。体のリズムは、朝日を浴びて朝食を食べることが起点となるからです。しかし、登校しなくてもよい場合、子どもたちにとって起きる理由がなくなります。そこで、朝のお手伝い(たとえば、掃除や朝食作り、花の水やりや動物の世話など)を取り入れるのはいかがでしょうか。お手伝いは子どもが家族の一員であることを自覚する機会にもなります。子どもの年齢や興味関心、ご家庭の事情に合わせて「しないと誰かが困る」ことを選ぶとよいでしょう。
心理学者のE.H.エリクソンは「心理社会的発達理論」を提唱しました。簡単に述べますと、人間の各発達段階には「発達課題」があり、それを乗り越えることで「力」を獲得するとしています。幼児期前期(1歳半~3歳頃)の発達課題は「自律性」、乳児期後期(3~5歳頃)は「自主性」、児童期(5~12歳頃)は「勤勉性」です。
子どもは、「やりたいけどできない」という自分の心を調整しながら、目の前にある「やってみる」機会に挑戦することによって、「できた」という喜びを味わい、「次もやってみよう」という「意欲」という力を獲得します。そして、その「意欲」を原動力に「自分で考えて行動する」ことで、「社会的な存在としての自分の行動」という「目的意識」という力を獲得します。さらに、「計画的に忍耐強くやればできた」という経験を重ねることで、自分には「能力」があると自信を持つことができるようになるのです。
●やらされているお手伝いにしないために。
お手伝いの内容を決める時には、子どもが「一方的にさせられている」と思うものではなく、主体的に取り組むことができるものにしたいため、保護者側の工夫が必要です。「しなかった」ことを責める、「きちんとできる」ことを求めて「やりなおし」をさせることはしない。「お手伝いしてくれてありがとう、助かったよ」と感謝や労いの言葉を伝える、カレンダーにシールを貼って(スタンプを押してもよい)実践したことを可視化することにより、自らしようとする意欲を引き出したいところです。また、子どもが創意工夫できる、試行錯誤できる、そして、スキルアップを実感できるような内容にすることもよいかもしれません。学校が休みでも朝の過ごし方を意識し、お手伝いという家族としての役割を設ける、のはいかがでしょうか?
- 村上智子
広島女学院大学
人間生活学部児童教育学科 准教授
専門分野:幼児教育学、保育学
- 子どもたちがより豊かに遊ぶことができる環境とは何か、保護者はどのように関わるとよいのか、を考え続けています。保育所保育指針には、子どもの育ちに必要な環境として、物理環境と人的環境、そして自然や社会現象が挙げられています。NPO法人ひろしま自然学校の協力のもと、学生たちと一緒に「イベント型森のようちえん」の活動を企画・運営していく中で、子どもたちからも学んでいます。