子育てアドバイス

【よくある相談シリーズ】うちの子、いつもイライラしています…。


誰かと話をしていて、相手がイライラしていると、こちらにもうつる(感染する)なんてこと、ありませんか?

相手の感情が自分の感情に影響する(楽しそうに話す人と話をしていると自分も楽しくなってきた、イライラした上司と話をしていると自分もムカムカしてきたなど)ことを、普段の生活の中で感じることがあります。『楽しい』『明るい』雰囲気に影響されるなら良いですが、『イライラする』『腹が立つ』感情にさせられるのは、迷惑だと感じてしまいますね。また、子どもたちは、自分でどうにもならない不快な感じを、信頼しているお父さんやお母さん、おうちの人に遠慮なくぶつけてくる(投げ込んでくる)ことがあります。

さて今日は、「イライラしている子ども」とどう向き合えば、自分も不快にならずに、その場をやり過ごすことができるのかを考えていきたいと思います。

 


●イライラしている子どもへの対応で、
 その場をやり過ごすために大切なことは?


❶適度な距離をとる!
物理的な距離をとることが先決です。トイレや台所に行くなど実際に離れる。離れることが難しい場合には、顔を子どもの方向から背けて携帯をつついたり、本を読んだり、自分の集中をそらす(気が紛れる)ようにしてみましょう。

❷巻き込まれない心の余裕を持っておく!
その場の対処としては、少し離れたところで、深呼吸をして自分を整える。また普段からストレスを貯め込み過ぎないよう生活することも大切です。私たちのストレスは、自分より弱いところに出てしまう傾向があります。自分のストレス発散方法をいくつか知っておきましょう。

 


●そもそも、何で『やり過ごす』ことが大切なのか?

イライラや怒りは、私たちの中でどんどん増幅していきます。特に投げ込まれた理不尽な怒りに対しては、余計に腹が立ってしまいます(「何で私がこんな思いをさせられなくちゃいけないのか!」)。イライラが増幅しないようにするには、はじめのまだ小さなイライラの段階で、それ以上大きくしないことが肝心です。

感情的に声を荒げそうな時には、まず一呼吸置く。そんなことをして我慢したら、ますますストレスが溜まると思うかもしれませんが、結果的には、後から大きく怒ってしまった後悔や罪悪感から来るストレスよりは、気持ちが穏やかでいられることになります。しかし、これらのやり方は場当たり的に、ただ「やり過ごした」だけで、根本的な解決にはなっていません。気持ちに余裕がある時に、是非以下のことについて試してみましょう!

 

●子どもは、何に腹を立てているのでしょうか?
 

子どものイライラした言動や、暴力的でツンケンした態度を見ると、ついつい嫌な気持ちになり、子どもを「困った子だ」と感じてしまいます。でも、子どもたちは私たち大人に比べるとまだまだ語彙も未熟で、自分の言いたいことが整理できません。中には、自分がイライラしている原因が何かですら察知できない子どももいます。

こんな子どもたちは、一見「困った子」に見えますが、実は上手く相手に自分の気持ちや状況を伝えられなかったり、自分の気持ちを整理できずに「困っている子」なのです。

ここで大切なことが見えてきます。人に対してイライラして八つ当たりをするのではなく、相手に困っていること、困っている状況を伝える力『SOSを出す力』を付けてやることや、そのために自分の気持ちをゆっくり整理し、切り替える力が大切で育てていく必要があるのです。

 
A君は小学1年生。この春、入学したけれど、新型コロナウイルスの影響ですぐに学校がお休みになったり、せっかく再開しても警報で学校が休校になったり。また最近は暑くなり、マスクをしてランドセルを背負って学校に行くだけでクタクタです。そんなA君が夕方、おうちに帰って来ました。A君はイライラしています。

お母さんが「おかえり」と優しく声をかけると、「ん」とぶっきらぼうに言い、ランドセルを玄関に投げ飛ばし、廊下をドスドス歩いていきました。お母さんはカチンと来ました。「何をやってるの!ランドセルは大切にしないとダメでしょ!早くきちんと置き直しなさい!」と甲高い声で注意しました。「何さ!母さんはいつも怒ってばっかりだ!」とA君は外に出ていきました。

実はA君、担任の先生に怒られていました。A君はマスクをしている先生の声が聞こえにくくて困っていました。A君は隣の席のB君を見て、真似をして何とか授業について行こうと必死でしたが、B君は「A君、真似するなよ!見るな!」と言い出し、騒ぎになり先生に怒られたのでした。

 
A君は先生に、先生の声が聞こえなくて困っていたことを言うと、余計に怒られるのではないかと考え、先生に本当のことを言えずにおうちに帰って来ていました。しかし、A君は納得できません。「いつもいつも怒られる。何で怒られるのか、何で僕が怒られないといけないのか」。悶々とする時間を過ごしていました。

A君のイライラの解決策、見えて来ましたか?
A君が困った時に困ったと伝える力『SOSを出す力』があれば、「先生、聞こえません。もう一度言ってください」と言えました。A君が自分の気持ちを整理できれば、おうちにまでイライラを持って帰らずに済んだかもしれません。

ここでどう声をかけるのが良いのでしょうか?
ポイントは肯定的な声かけです。A君のイライラしている態度(好ましくない行動)には取り合わず、A君が暑い中、頑張って学校に行って帰って来た(好ましい行動)に目を向けます。また、「イライラしていること」=「ストレスを溜める程、頑張って我慢して帰って来たこと」と受け取り、声をかけていきます。

A君のお母さんは「おかえり」と声をかけたら、ランドセルと投げ飛ばしたA君に内心驚きましたが、深呼吸をしてから「暑い中、今日も頑張って来たんだね。何かいつもと様子が違うけれど、学校でたくさん我慢することがあったんだろうね」と声をかけました。A君は一瞬驚いた顔をしましたが、お母さんの近くに寄って「あのね」と今日の出来事を話し始めました。

A君は上手く状況が説明できません。聞いているお母さんは、分かりにくい話に少しイライラしてくるし、何よりA君を理不尽に怒った先生にも腹が立ってきました。

さて、ここからが『SOSを出す力』を付けるのに大切なポイントです。この場面、ついつい「分かるように話して」と言いたくなったり、先生を非難したくなりがちですが、ここはぐっとこらえて、A君に対して「話してくれてありがとう。一生懸命お話してくれたね」「学校で頑張って帰って来たんだね」とA君自身を肯定する声をかけていきましょう。そうすることで、A君は困った時にはお母さんに相談しようと思え、学校でも先生や誰か助けてくれる人を見つけて話せる力、『SOSを出せる力』が育っていくのです。

 

●イライラしている子どもに対応するには、
 イライラに巻き込まれない心の余裕が大切です。


イライラを感じやすい人、その影響を受けやすい人は、普段から自分のことは我慢して他人を優先して行動する人、もしくは仕事や生活、人間関係などでストレスがかかっている人だと言えます。子育て世代は、仕事も家庭も忙しくストレスを無くすことはできません。

逆に考えると…。イライラしている子どもについつい反応して自分までイライラすることがあったら、それは子どもたちが「ママ、頑張り過ぎてるよ」と教えてくれているサインなのかも。いつもいつも子ども優先に生活している人は、たまには、家事の手を止めて、自分のほっと一息つける飲み物を飲んでみたり、好きな音楽を聴いてみたり、自分をしっかり大切にする時間を意識的に持ってみましょう。

イライラしている子どもは「困っていることがあって頑張っている子」。そんな風に見ていくと、子どもの成長のチャンスが見えて来ます!お楽しみに。
土居和子 広島県教育委員会 スクールカウンセラー
広島県乳幼児教育支援センター 
保育ソーシャルワーカー
東広島市教育委員会 
スクールソーシャルワーカー
修道大学 非常勤講師
三原看護専門学校 非常勤講師
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