2021年2月17日(水)
【よくある相談シリーズ】うちの子、片付けがまったくできません…。
子どもは「片づけ」が苦手です。それは、大人に比べて、生活の見通しを持ちにくい、気持ちの切り替えをしにくいといった脳の発達によるものと、「片づけ」の方法やその理由(必要性)を知らないといった経験によるものの2つの原因が影響しているからです。
●そもそも、「片づけ」とは?
室町時代、「仕舞う」という言葉を「物事をやり遂げる、片付ける」という意味で使われていました。「仕舞う」の意味は、
です。現在では、「片づける」という言葉の方が一般的で、「物事を終わらせる・解決する・決着する」「物をそもそもあるべき場所に戻す、あるべき状態に戻す」という意味で用いられています。
●幼児教育(保育)の視点から考える。
文部科学省は、乳幼児期における子どもの発達において重視すべき課題として、基本的な生活習慣の形成を挙げています。そこで、幼児期の教育である「保育」からヒントを得ていきたいと思います。保育者は、子どもたちの活動を「準備-遊び-片づけ」の一連の流れで捉えて計画をします。そして、「片づけ」は「遊びで使ったものをもとの位置に戻す」という物理的な行為だけではなく、「楽しかった!という気持ちを味わいながら遊びをおしまいにする」という心理的な側面を大切にしています。また、「いつもの場所に、取り出しやすいように」片づけることによって、次に活動する際に子どもたちは自分で準備できる、ことも意識しています。
●保育環境を捉える視点である「人的環境」で考える。
少しずつ「片づけ」の雰囲気づくりをします。子どもは、楽しかったことをおしまいにして、次の活動に移行するためには、時間を要します。それを見越して、次の生活場面を開始したい時間から逆算して、すこし長めに「片づけ」の時間をとりましょう。子どもが生活の見通しを持つことができるように、次の生活場面に移行することを伝えると同時に、「片づけ」を一緒にしたり、次の準備をする姿を子どもに示します。その際、子どもが抱いた感情や気づきなどを共感することが大切です。そうすることで充実感を味わうことができ、気持ちも片づけることができます。
●保育環境を捉える視点である「物的環境」で考える。
子どもが片づけやすい収納づくりをします。収納づくりの基本は、ものの住所(収納場所と収納方法)を決めることです。子どもたちが取り出しやすい、片づけやすい、なかったら気づく、すべて揃ったら気持ちいい、だから「片づけ」をしたい、という収納を心がけましょう。その際、何をどこに片づけるのかを具体的に示すことが大切で、写真やイラストを貼っておくなど、収納方法を視覚的に伝えることも有効です。自分が整理整頓したものを見て達成感を味わい、次も片づけようとする意欲につながります。さらに、自分で片づけたものは、それが必要になった時、自分で取りに行くことができます。このように主体的に生活することができる満足感から、「片づけ」の必要性を感じていきます。
●ものを大切にする心を育む。
「片づけ」の根底には「ものを大切にする心」があります。忙しく時間に追われ、物にあふれている今、まず、子どもたちの成長や学び、生活を支えているものを私たち大人がていねいに扱ってみませんか。それは同時に、ものを使って行った生活も大切にするということだと思います。このような大人の姿が、子どもの一つひとつのものやことを大切にする心を育むことにつながっていくのではないでしょうか。
- 村上智子
広島女学院大学
人間生活学部児童教育学科 准教授
専門分野:幼児教育学、保育学 - 子どもたちがより豊かに遊ぶことができる環境とは何か、保護者はどのように関わるとよいのか、を考えています。保育所保育指針には、子どもの育ちに必要な環境として、物理環境と人的環境、そして自然や社会事象が挙げられています。NPO法人ひろしま自然学校の協力のもと、学生たちと一緒に「イベント型森のようちえん」の活動を企画・運営していく中で、子どもたちからも学んでいます。