子育てアドバイス

【よくある相談シリーズ】もうすぐPTAの役員改選で、気が重いです…。


子どもを持つ親にとって、毎年4月にめぐってくるPTAの役員決めは、何とも気の重いものです。共働き家庭が増加している現在、役員への立候補者は減少し、今年も気まずい沈黙の後、くじ引きが行われているのではないでしょうか。

 

●PTAとは

PTAとは、Parent-Teacher Associationといって、各学校単位で組織された学校に通う児童・生徒の保護者と教職員のための任意加入の団体です。これらの学校単位のPTAが集まって、区や市町村単位でPTA連合体が、その上部団体として都道府県のPTA連合が、さらに全国組織の日本PTA全国協議会(小・中学校)が組織されています。かつて、「子どもに見せたくない番組」アンケートをやっていた団体といえば、思いあたる人も多いでしょう。

私たちが関わるのは、自分の子どもが通っている学校単位のPTAです。子どもたちの学校生活がより良いものになるよう、学校の先生や地域の方々と協力して学校運営を支援するのがPTAの役割です。

 

●PTA役員とその仕事

PTAには、役員あるいは本部役員と呼ばれるPTA組織のリーダーと、専門部会(委員会)があります。役員とは、PTA会長、副会長、庶務、会計、会計監査など。

専門部会は学校により様々ですが、学年部、生活部、ベルマーク部、保健体育部、文化部、広報部などがあり、各部に分かれて活動します。活動内容は学校によって違いがありますが、
 

などがあります。

役員や委員の選出方法は、自薦、他薦、くじ引きなどです。少子化により子どもの数が減少し、共働き家庭が増加したことによって、成り手は減少しています。子どもの数が多かった頃は、立候補やボランティアで成り立っていたPTAですが、「子ども1人につき役員(委員)1回」などの決まりを作るPTAも増えています。最近では、PTAの運営方法を改革している学校や地域も増えています。自らやりたいと考える人だけでなく、多様な人々がPTAに関わることにより、運営方法を模索する変化の兆しが出てきたのかもしれません。

 


●PTA活動で得られるもの
 

私自身、子どもが小学校のときに転職したので、異なる県の2つの小学校でそれぞれ「広報部」委員と「保体部」副部長を体験しました。確かに、PTA活動は大変です。しかし、仕事を持つ親として、貴重な経験ができたと思います。

一つは、学年を越えて地域に知り合いができたことです。フルタイムで働いている親にとっては、子どもが放課後、どこで誰と何をしているのか、高学年になるにつれ詳細を把握することは難しくなってきます。やはり、地域社会は人と人とのつながりが大切で、日頃から声を掛け合える関係のなかでこそ、子どもは安心して過ごせます。PTA活動では保護者だけでなく、児童との関わりも増えるので子どもたちとも仲良くなることができました。

もう一つは、私自身の考え方の変化です。働いていると、いかに効率よく、合理的に目標を達成するかという観点で物事を捉えがちです。そうした点からすると、PTAの活動には「これって必要ないのでは?」とか、「メールで情報共有すればいいのに、なんでいちいち集まるの?」といった疑問が生じてきます。しかし、地域社会は職場ではありません。介護があったり、赤ちゃんが生まれたばかりだったり、パソコンを使っていなかったり、自分とは異なる様々な状況や事情を持つ人々への想像力が求められます。年齢も考え方も多様な人たちが、誰でもいつでも参加しやすい方法ややり方を考えなくてはなりません。また、夏休みのプール開放やバザーなど、あるのが当たり前と思っていた行事は、多くの人たちの献身的で、無償の働きによって成り立っていることを改めて実感しました。

 


●PTAをより参加しやすくするためには

PTAの運営や役員の選出方法は学校ごとに様々です。私が体験したある小学校では、1年生のときに、すべての保護者が学年部を除く専門部会に所属し、6年間を通じて全員がその部の部員として活動していました。学年部と本部役員は選出がありましたが、どうせやるならやってみようかしらと、立候補者が多く、くじ引きはほとんどありませんでした。

6年間も活動するなんて大変なのでは、と思いますが、この画期的(?)方法にはメリットがあります。全保護者が専門部か本部に所属しているので、部会は基本的に授業参観の後に開かれます。各部の部長・副部長はベテランの6年生の保護者が務め、各学年に仕事を効率よく振り分けつつ、仕事の内容も教えてくれるので、何かと大変な新旧委員の引継ぎもありませんでした。きょうだいが複数在籍している保護者にとっては、それぞれの学年で係を引き受ける必要がないので、負担が小さくなります。また、プール開放やバザーなど、準備が大変な行事は全員が関わることが原則となっていました。

もちろん、この方法にもデメリットがあると思います。しかし、役員決めのストレスや引継ぎの難しさ、よく分からないので例年通りという、「PTAあるある問題」のいくつかは解消されていたと思います。皆さんの学校でも取り入れてみてはいかがでしょうか。

 
中村勝美 広島女学院大学
人間生活学部児童教育学科 教授
専門分野は、保育学、教育学・教育史
今から100年以上前のイギリスの子どもや乳幼児保護の歴史について調べています。イギリスは世界で最も早く工業化や都市化が進み、都市の生活環境の悪化や貧困、母親の就業による子育ての問題が生じました。現代の日本では、なぜ「子育ては大変」と感じる人が増えているのか、子育てが楽しい社会には何が必要なのか、「バァバの子育て支援広場」や「よるのとしょかん―ぬいぐるみたちの大冒険」等の活動を通して学生とともに考えています。
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