2021年5月17日(月)
【よくある相談シリーズ】うちの子、友達とトラブルがあったと聞きました…。
●まずは、子どもの力で解決できるように見守ろう。
自分の子どもが友達とトラブルになった話を聞くと、親としては心配になります。そして、1日でも早く子どもを嫌な思いから解放したい、早く解決して子どもを安心させたいと思いますね。実際、私が小学校に務めていた時も、子どものトラブルを心配される保護者はいらっしゃいました。また、それと同時に多くの保護者は子どもたちが自分の力でトラブルを解決できるようになってほしいと望んでもいらっしゃいました。
子どもの交友関係が広がれば、子ども同士のトラブルも増えてきます。大人にしてみれば、どうしてそんなことでと思うような些細なことでもトラブルになってしまうこともあります。しかし、子どものトラブルは決して悪いことではありません。そのトラブルを通して、子どもはどうしていたらトラブルにならずに済んだのか、これからどうやって解決していけばよいのかなどを考え、学ぶことで大きく成長することができるからです。
ですから、たとえ心配であっても、親がすぐに解決に乗り出すのではなく、まずは、子どもの話をしっかり聞き、どうしたらよいかを子ども自身に考えさせることが大切です。そして、子どもがそのトラブルを乗り越え解決していけるように支え、見守るようにしていきましょう。
●子どもは、いろいろな経験を通して成長する。
大人になり社会に出ていくと、意見の異なる人に出会ったり、考えが対立したりすることもあります。そんな時にどう対応したらよいか、また、どうやって解決すればよいかという対応力や問題解決力は、自然に身につくものではありません。子どものうちにいろいろなもめ事やトラブルなどを経験することを通して、どうしたらトラブルにならずに済むのか、どう話したら自分の思いが相手に伝わるのか、どうしたら相手との関係を修復できるのかなどを考えたり、自分の言動によって相手がどんな思いや感情を抱くのかなどを想像していくうちに身についていくものです。
子どもは、自分の思いや考えを相手に合わせて上手に伝えることが苦手です。また、相手がどう思っているかを感じ取ることも、自分の言動によって相手がどう思うのか想像することも苦手です。ですから、子どものうちにこういったことを自分で考える経験を積むことが大切になるのです。
では、大人として、子どもにどう関わったらよいのでしょうか。それは、子どもが友達とのトラブルや自分の思いなどを全部話すことができるように聞くことです。子どもは、話をすることで、トラブルやその時の自分の行動を振り返ることができます。また、これから自分がどうしていきたいかも考えることができます。ですから、親が先回りをして解決方法を示したり、直接解決に乗り出したりせずに、子どもとしっかり向き合い、話を聞くようにしましょう。
●子どもの話を聞くときは、
子どもの思いを大切にしよう。
子どもの話を聞く時は、子どもが思いや心の中を安心して全部話すことができるように、すべてを受け入れる姿勢で聞くことが大切です。そして、子どもの話の途中で口を挟まないことや、勝手に誰々が悪いなどの判断をしてしまったり、子どもの思いや心の中を決めつけてしまったりしないようにすることです。また、子どもの考えを聞く前にアドバイスすることも控えましょう。
子どもは、自分の話をしっかり聞いてもらうことで、親が自分のことを大切にしてくれていると感じ、心が落ち着いたり、安心できたり、元気が出てきたりします。また、初めはトラブルの影響を引きずって感情的になっていたとしても、話を聞いてもらっているうちに、子ども自身もトラブルについて少し冷静に振り返ることができたり、解決するためにはどうしたらよいかを考えたりすることもできるようになります。子どもをしっかり受け止め、話を真剣に聞くことで、子どもは自分を振り返り、考えを深め成長できるのです。
子どもが、自分のトラブルや困ったことを話してくれるのは、自分を大切にしてくれている、受け入れてくれているという安心感があるからです。ですから、子どもの話を聞いていて、たとえ子どもの姿に腹が立ってきたとしても、途中で口を挟んだり、勝手にあなたが悪いと決めつけたりしないで、最後まで話を聞くようにしましょう。そして、そのことを今あなたはどうしたいと思っているかなどの子どもの思いも引き出せるようにしましょう。
●トラブルが日常の喧嘩のようなものなら…
子どもは、大人が思うよりもしっかりしているものです。子どもから聞いたトラブルが喧嘩のようなものなら、親はあまり関わらないで、子どもの様子をしっかり見守るようにするのがよいでしょう。
親が子ども同士のトラブルに出すぎると、余計に問題をこじらせてしまうことがあります。また、貴重な子どもの成長の機会を奪ってしまうことにもなります。それだけでなく、子どものことで親があまりに心配しすぎてしまうことで、何でも自分で考えずに人任せにしてしまう子どもになったり、自分のことに自信がもてない子どもになったりすることもあります。
見守り方としては、子どもの様子に変化がないか注意深く見ておくことです。最近、表情が暗くなったとか、話をしなくなった、食欲がなくなったと感じた時などは、注意が必要です。トラブルが深刻化してきたのかもしれませんから、「困ったことはない?」「最近、元気ないけれどどうかしたの?」など声をかけてみたり、学校や塾の先生などへの相談をしてみたりすることも考えましょう。
●自分の子どもに非があるときは…
自身に非があれば、どう謝るかを考えさせなければいけません。もちろん子どもは素直です。そして、自分が悪いときは謝らなければいけないことを理解していますが、そんなときほど正直に話しにくいものです。ですから、日ごろから、子どもの話をよく聞くようにし、子どもが出来事や自分の気持ちを正直に話せる関係をつくっておくことが大切です。子どもの話を聞いていると「どうしてこんなことをしたのかと怒りがわいてくることもあるかもしれませんが、話を中断させて叱ったりあなたが悪いと責めたり結論付けたりするのではなく、最後まで話を聞くようにしましょう。そして、子ども自身がどうしたらよいかを考えることができるようにし、必要であればアドバイスをしましょう。
●自分の子どもが他の子にいじめられているときは…
いじめを受けている場合は、子どもが自分なりにどんなに努力をしても解決できないこともあるはずです。まず、親として何があってもあなたを守るという思いを子どもに伝えることが大切です。そして、そのいじめが学校の友達関係の中なら学校の先生に、スポーツ少年団や塾での関係の中なら、そこの代表者に相談するようにしましょう。学校でのいじめなら、学校は関連機関も含めて組織的にその解決に向けて動いてくれますので、躊躇することなく相談するのがよいです。親が単独で解決しようとせず、その関係者と一緒に解決していくようにすることが大切です。
●まとめ
子どもは毎日友達と関わりあいながら成長し、人間関係の築き方を含め多くのことを学んでいます。その過程で起こる子ども同士のトラブルは、子どもを成長させるためには必要なものです。トラブルが起きた時に、親がすぐにアドバイスをしたり解決に乗り出したりするのではなく、子どもの話をしっかり聞き、その思いを受け止め、自分の力で解決していけるように促すことが大切です。それと同時に、そのトラブルの解決が子どもの力だけでできるのか,それとも大人の力が必要なのかも含めて注意深く見守るようにします。
また、日ごろから子どもに寄り添い、子どもの話を真剣に受け止めながら聞くことや、何でも親が判断してしまわないで子どもに考えさせるようにすることなど、子どもの思いや考えを尊重することで、子どもは親が自分にいつも興味関心を向けていてくれていると感じ、何かあったときはいつでも親に相談できるという安心感をもつことができるようになります。トラブルが起きてからの対応も大切なのですが、いつでも話を聞いてくれる人がいる、自分を受け止めてくれる人がいるという安心感を子どもがもてるようにし、困ったときにすぐに話をしてくれる関係を子どもとの間につくっておくことがなによりも大切です。
- 藤原卓哉
- 安田女子大学 教育学部 児童教育学科
公立小学校で校長を9年間務めたのちに現職。