2021年11月18日(木)
【よくある相談シリーズ】うちの子、とても無口なのですが…。
子どもの「ことばを育てる」には、さまざまな体験を通して、子どもの「感性」や「こころ」を豊かに育むことが大切です。さまざまな体験の中でも、特に自然とのふれあいは、子どもの「こころ」の成長にとって大切な体験です。
子どもの「こころ」が鍛えられ、成長していくために、自然がいかに大切なものであるかについて、ルソー(1712~78)は次のように述べています。
「自然を観察するがいい。そして自然が示してくれる道を行くがいい。自然はたえず子どもに試練をあたえる。あらゆる試練によって子どもの体質をきたえる」(ジャン・ジャック・ルソー、今野一雄訳『エミール』上、岩波文庫、1962年)
●たくさんの感動体験を通して、豊かな感性を育もう。
子どもは、自然とふれあうことで、「こころ」を動かされ、「感性」を磨いていくものです。自然とのふれあいは、なぜ感性を磨くことにつながるのでしょうか。それは、子どもが自然の中で、実際にからだを動かし、からだ全体を使って、五感を研ぎすますからです。五感を研ぎすまし、感性を豊かにしていくことで、子どもの「こころ」には「感動」が生まれます。この感動体験を通して、子どもの中に「こころ」のこもったことばが生まれます。自然体験を通してことばを身につけることは、子どもの成長にとってとても大切なことです。
●目や耳から入ってくる情報だけにならないように。
しかし、現代社会においては、都市化の進展に伴う自然の減少や子どもをめぐって多発する事件に対する警戒から、子どもの自然体験が減少する傾向にあります。また、高度情報化に伴い、実際の直接体験をする前に、情報メディアにより、たくさんのことばや知識、情報がいやおうなしに子どもの目や耳から入ってくるという環境となっています。
このような環境下で、現代の子どものことばづかいには、大きな変化が見られます。すなわち、大人のような理屈をこねたり、口ではわかっているようなことを言っているが、実際は、頭で考えることが先行し、自分の「こころ」が伴わないようなことばを話すというような実態が見られるのです。
わたしたちは、ことばを通して「わたし」という人格をつくりあげています。ですから、さまざまな体験を通して、人格の中核である「こころ」や「感性」を豊かにしながら、子どもの「ことばを育てる」ことの大切さを忘れないようにしたいものですね。
- 野々村 憲
広島文化学園大学 学芸学部子ども学科
准教授 - 専門分野:言語教育学
最終学歴:広島大学大学院学校教育研究科(言語教育専攻)
修了学位・資格:言語教育学修士(広島大学)/小学校教諭
1級普免許状/中学校教諭2級普通免許状(国語)/高等学校教諭2級普通免許状(国語)