2022年2月17日(木)
【よくある相談シリーズ】うちの子、塩辛いものが大好きなんです…。
●今のごはんは未来のわたし!
~適塩でおいしく食べよう~
人間の体は、食べ物によって作られます。子どもたちは今、食べているもので「未来のわたし」の体づくりをしています。さて、皆さんは、家庭での食事作りの中で、塩分を考えて料理をされていますか? 現在、令和元年国民健康・栄養調査の結果によると、健康な日本人の成人男女が目標とすべき1日の食塩摂取量は男性7.5g未満と女性6.5g未満とされていますが、日本人の1日あたりの平均塩分摂取量は男性10.9g、女性9.3gで、目標値を上回る結果であり(図1、図2)、減塩が強く勧められています。
厚生労働省の食事摂取基準によると、子ども(8~9歳)の食塩摂取量の目標量は、男女とも1日5.0g未満となっています。まわりの大人の食塩摂取量が多い場合、子どもの食塩摂取量も多くなりがちです。子どもの体は、成人の体がただ小さくなったものではなく、成長途中の未発達な部分を多くもっているので、必要以上に塩分を摂取することは、子どもの体に負担をかけることになります。食塩の取りすぎは高血圧をはじめとした生活習慣病に深くかかわってきますので、子どもの時期から薄味になれることも大切であり、学校給食においては、1食の食塩相当量(塩分)が2g未満になるよう、減塩を行っているところです。
●子どもたちの学校給食、昔と今でどう違う?
給食では、以前はパンを主食とした献立が多くありました。しかし、パンを主食とした献立は塩分、脂質が多く、洋風な献立になりがちでした。そこで、伝統的な日常の主食として日本人の食生活から切り離すことができない米を使用した米飯給食の導入が検討されました。米飯給食は、味覚を育む子どもたちに米を中心とした「日本型食生活」を定着させるためにも進められており、広島市においては、平成17年まで週2回だった米飯給食は、平成21年には週4回となりました。
しかし、最近の子ども達の残食をみると、広島市では、パンよりもごはんが多く残っており、おかずについても、ごはんの日の方が多く残っています(図3)。さらに、食塩相当量の少ないおかずの時ほど、ごはんが残っていることがわかりました。減塩をすることによって、主食を食べる量自体が少なくなってしまったのでは、健康のための減塩とは言えません。
●おいしく減塩できるコツは?
減塩と言われますが、ただ、食塩などを減らしただけでは、物足りなさを感じます。適塩でおいしくバランスよく食べるために、学校給食で行っている味つけのコツや工夫をいくつか紹介します。
【うま味の利用】
天然のだし(昆布・煮干し・かつお節など)のうまみは塩味を引きだしてくれます。給食では、当日の朝から一定時間つけておき、ゆっくり加熱してだしをとりますが、少しハードルが高いと思われる方は、容器に昆布や煮干しなどを入れて水を注ぎ、冷蔵庫に一晩おいておくだけでだし汁ができます。
【酸味の利用】
酢・レモン・ゆずなどの柑橘類などを組み合わせることにより、さわやかな味のアクセントになります。適度な酸味は、塩味の物足りなさを補い減塩することができます。給食では酢を使った南蛮漬け、レモンやゆずの果汁を使った和え物や、タレの一部に果汁を加えた料理をとり入れています。
【塩分と甘みは一緒に減らす】
塩やしょうゆの量を減らす時は、砂糖やみりんも一緒に控えます。塩味だけを減らした時の物足りなさが緩和されます。学校給食では、全体の調味料を約1割程度減量し、味を見ながら進めてきました。調味料を減らすと物足りない料理、減らしても十分おいしい料理をまずは見つけてみてください。
【だんだんと薄味に慣れる】
一度に塩分を控えると物足りなさを感じます。少しずつ減らして、慣らしていくと無理なく減塩ができます。学校給食でも、時間をかけて少しずつ薄味にしていくことで今では、「以前の味つけでは、少ししょっぱいな」、「最初は薄いなと思ったけれど、今ではすっかり慣れた」と感じています。
【味にメリハリをつける】
全部の料理を均一に薄味にするのではなく、1品を普通の味にしてもう1品を薄味にすると、味にメリハリがつきごはんをおいしくいただけます。主菜の料理ははっきりした味つけにして、副菜をやさしい味にする、または主菜は素材の味を生かした味つけにして、副菜をしっかり味つけするなど、味の違いを楽しむ組み合わせをしてみるのもひとつの工夫です。
●子どもたちの食生活を整えて、健康づくりを!
わたしたちは、子どもたちが学校給食を通じておかずが薄味でも、ごはんもおかずもしっかりと食べることができる大人に成長し、生涯を通じて健康な生活を送ってほしいと考えています。よく「学校給食を食べているから,大丈夫」という声を聞きます。本当に学校給食をしっかり食べてさえいれば、子どもたちの体はすくすくと育つのでしょうか? 学校給食は3食のうちの1食です。実施されるのは、1年間365日のうち約190日と約半分の日数になります。つまり、学校給食は1年間の食事の6分の1、残りの6分の5を家庭の食事が占めているわけですから、家庭での食生活は、子どもの体づくりに大変重要だということがわかります。
大人になった時、生き生きと人生を楽しみ、元気に活躍する姿が見られるよう、家庭と学校給食の双方から、子どもたちの食生活を作っていけたらと思います。わたしたちと一緒に、少しずつでもできることから、始めてみませんか?
- 阿壽賀 由紀
広島市立祇園小学校
栄養教諭 - 広島市公式HP 学校給食の献立
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