2022年3月17日(木)
【よくある相談シリーズ】子どもが「ギフテッド」ではないか、と言われました
●はじめに
こちらをご覧になっている方は、「ギフテッド」という言葉で検索された方、実際にお子さんがそのように言われたという方もいらっしゃると思います。ここでは、「ギフテッド」について簡単に紹介していきたいと思います。
●そもそも「ギフテッド」とは何でしょう?
「ギフテッド」とは、天才児、才能児などと表現されることがありますが、必ずしも天才と同義ではありません。また、疾患名でもないため治療対象の概念にもありません。例えばJames et.al. (2005)によれば、「知的能力全般」「特定の学問領域」「創造的思考」「リーダーシップ」「芸術」といった領域の一つもしくは複数で並外れた力量や、その素質があると考えられるさまざまな人を捉えたカテゴリです。ただし、今回「ギフテッド」かもしれないと言われた人たちの多くは知能指数(IQ)で判断されていることが実情です。
「ギフテッド」の子どもたちの特性として、例えば「年齢のわりに並はずれて語彙が豊富であったり、文章構造も複雑だったりする」「集中時間が長く、粘り強い」「興味関心の幅が広い」といったことが挙げられています。しかし、こうした子どもたちの感情は非常に繊細なものです。また、道徳的・倫理的に「正しい」ことに敏感であり、正義感も高いことが多いです。
そのため、「ギフテッド」の子どもたちは学校で困難を抱えることも少なくありません。例えば、知的好奇心が豊富で、授業中も勝手に発言してしまうことがあります。その時に先生から注意されてしまったり、中にはそれを過剰に叱責されたりします。また周りの子どもたちからはその注意されていることをからかわれてしまうというケースもよく耳にします。こうした経験から自己肯定感が低下し、結果として不登校になってしまうということも少なくありません。
さらに子どもたちの知的好奇心から保護者も常に質問攻めにあい、疲弊してしまうことも少なくありません。また、知的な遅れがないことから支援の対象としてみなされず、どのように対応したら良いかわからず保護者の方が孤立してしまうということもあります。
こうした子どもたちには医療・教育両面からのアプローチが必要ですが、今回は最後にあくまで子育てアドバイスとして何点かをご紹介したいと思います。
●「ギフテッド」の子どもたちへの対応は?
【何よりも本人の話を聞くこと】
「ギフテッド」の子どもたちは先ほども述べたように知的好奇心のあまり、他の子どもたちとの会話に距離ができてしまうことがあります。そのため、自分のことを分かってもらえると感じる人が数人でもいると落ち着くことは少なくありません。もちろんそれが保護者の方でも良いですが、それを全て担うことは決して容易ではありません。外部のサービスなどを利用しながら、子どもたちが自身のことを話せる機会を提供できると良いと思います。
【ルールは一緒につくる】
発達障害の子どもには見通しを持てるようにあらかじめルールを定めておくということが適切な支援として紹介されることがあります。しかし、「ギフテッド」の子どもたちにとって大切なのはそのルールが納得のいくものか否かという点です。ぜひ、子どもたちと話し合って、本人が納得する形でルールを作っていくことが大切です。
【教員などの関係者に情報提供を行う】
叱られすぎると自己肯定感が著しく低くなってしまうことは少なくありません。子どもたちの特性をきちんと理解してもらえるように、情報提供をすることが大切です。しかし、「ギフテッド」という言葉がきちんと理解されているかといえば必ずしもそうではありません。ですので、信頼できる専門家などに相談した上で、先生方にどこまで伝えるのか考えるというのも一つの手です。
ここまで簡単に「ギフテッド」の子どもたちを取り巻く課題やアドバイスを書かせていただきました。もちろんこれは一案にすぎませんし、子どもたち一人一人特性も異なります。しかし、少しでもみなさんの子育て、そして子どもたちの生活にとってお力になれたら嬉しく思います。
[付記]本稿の執筆にあたっては、NPO法人ROJEのギフテッドプロジェクトの資料を参考にしています。参考の許可をいただいた佐藤駿一さんに御礼申し上げます。
[参考文献]Webb, James T et al., 2005, Misdiagnosis and dual diagnoses of gifted children and adults: ADHD, bipolar, OCD, Asperger’s, depression, and other disorders. Great Potential Press, Inc. (=2019, 角谷詩織 , 榊原洋一 監訳『ギフティッド その誤診と重複診断 心 理・医療・教育の現場から』北大路書房 )
- 伊藤 駿
広島文化学園大学
学芸学部子ども学科 講師 - 日本学術振興会特別研究員、英国ダンディー大学研究員を経て、現在、広島文化学園大学学芸学部子ども学科講師。専門は比較教育社会学、インクルーシブ教育。主な業績として、『学力格差に向き合う学校』(共著)明石書店、2019年。「通常学校への全員就学をインクルーシブ教育として志向することに伴う困難―スコットランドにおけるACEsを有する子どもたちの事例から」『比較教育学研究』第59号, pp.2-22.