子育てアドバイス

【よくある相談シリーズ】うちの子、家でばかり遊んで外に出て行きません。


まず、室内での遊びと戸外での遊びの違いは何でしょうか。戸外では、自然を感じながら、体を思いっきり動かして、多くの友達と一緒に遊ぶことができます。大人のみなさんは、戸外遊びを思いっきり楽しんだ記憶があるのではないでしょうか。

それでは今、なぜ外で遊ばない子どもたちがいるのでしょうか。それは、子どもたちにとって遊ぶための魅力が戸外にないからです。そもそも遊びとは「自発的な行為」です。「遊びたい」から「遊ぶ」のです。「戸外で遊びたい」という気持ちを引き起こすためには、そこに魅力が必要です。

では、その魅力とは何でしょうか。「こどものあそび環境のデザイン」という分野を開拓された仙田満さんが提唱する「あそび環境の4要素」である「あそび場」「あそび時間」「あそび集団」「あそび方法」の視点で考えていきましょう。子どもたちの戸外遊びに、これら4つの要素が揃っているでしょうか。見直してみてください。

あそび環境の4要素

❶「あそび場」
子どもたちが「ここで遊びたい」と思う魅力的な場が必要です。思いっきり走ることができる広がりのある空間、大人から隠れることができる(と子どもたちが思っている)子どもたちだけの社会を形成することができる小さな空間、登ったり(挑戦的遊び行動)や滑ったり揺れたりすること(めまい的遊び行動)ができる遊具、陽の光や風の心地よさを感じて草花や小さな生き物と出会うことができる自然などです。
 


❷「あそび時間」
子どもたちが「遊び込む」ことができるある程度の長さの時間が必要です。対象に興味関心を持って関わり、試行錯誤して向き合い、面白さを見いだして満足していくための時間です。細切れの時間では遊ぶことができません。


❸「あそび集団」
子どもたちが「一緒に遊びたい」と思う仲間が必要です。子どもたちはモノに関わって遊ぶことが中心の時期から、しだいに子ども同士で関わって遊ぶ時期に移行します。友達と一緒に遊ぶことで心が通じ合い、、遊びが広がったり深まったりしていく。それが楽しい体験となります。



❹「あそび方法」
子どもたちが「このように遊びたい」と思う遊び方ができることが必要です。そもそも遊びは「自由な活動」です。「~してはいけません」という禁止事項が多いと子どもたちは遊ぶことができません。

 

それでは、これら4つの要素が揃うと子どもたちは外で遊ぶようになるのでしょうか。今の子どもたちは、気軽に短時間で「遊ばせてくれる」魅力的なものに囲まれて生活しています。そのため、遊びを生み出す力が低下しており、遊ばせてくれるものがない戸外ではなかなか遊び始めることができないようです。また、少子化できょうだいや地域の子どもたちなどの異年齢児集団で遊ぶ経験が少なくなり、子どもたちの間で遊びの伝承がされにくい社会で生活しています。したがって、大人がちょっとだけ遊びのしかけ(興味の対象)を準備したり、子どもたちに遊びの伝承をする必要があります。子どもたちは遊びのきっかけをつかめば遊び始めることができますよ。
村上智子
広島女学院大学
人間生活学部児童教育学科 准教授
専門分野:幼児教育学、保育学
子どもたちがより豊かに遊ぶことができる環境とは何か、保護者はどのように関わるとよいのか、を考え続けています。保育所保育指針には、子どもの育ちに必要な環境として、物的環境と人的環境、そして自然や社会の事象が挙げられています。NPO法人ひろしま自然学校の協力のもと、学生たちと一緒に「イベント型森のようちえん」の活動を企画・運営していく中で、子どもたちからも学んでいます。
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