2010年9月度 TSS番組審議会報告
とき:2010年9月15日(水)午前11時
ところ:広島市南区 TSS本社会議室
報告事項
審議に先立ち、事務局よりBPO(放送倫理・番組向上機構)の活動状況やTSS8月度視聴者対応状況についての報告が行われた。
審議
TSS報道特別番組『刻みつけられた地獄・最初で最後のヒロシマPTSD調査』
<8月6日(金)午後3時放送>
委員からは
- 自分たちの世代は、被爆体験を親たちからあまり聞かされておらず、それが継承されていない原因だと思っていたが、PTSDで語ることができないこともあるのだとわかった。直接語ることでそれを乗り越えようとしている姿に、この番組の新しさがあった
- 被爆という過去の出来事に終始していたこれまでの原爆特番とこの番組が大きく違うのは、PTSDというフィルターを通すことで、被爆という問題に普遍性を持たせ、将来へ向けたテーマであることを明らかにしたことである
- 原爆被害は、県外の人や体験していない人にはなかなか理解してもらえない面があったが、この番組で誰にも理解できることだとわかった
- 時間もかけ丹念に作られていたが、被爆被害をPTSDでまとめたことには疑問が残る
- 阪神淡路大震災の被害者の例も取り上げていたが、違和感があった
- 差別や偏見も加えられた点で、被爆者のPTSDは、他のケースと全く違う
- 物事を分析する場合、自然科学と社会科学それぞれのアプローチがある。本来PTSDという場合、それは自然科学だが、被爆者のケースは社会科学的側面も多い。被爆者については、これまでの概念とは違う新たな分類概念が必要
- 3人の被爆者の話はいずれも「どこかで前に聞いた」的で、被爆一世をストレートに取り上げることが難しくなってきていることの象徴のようにも思えた。だからPTSDを新しい軸としたのだろうが、はたして軸になり得たか疑問。心の問題であり、個体差が大きく、他者には伝わりにくい
- 白石さんのケースはわかりやすかったが、他の2人のは難しかった
- 佐原さんは孫に語り伝えることで救われたが、他の2人には着地点が見つからなかった
- 佐原さんが孫に語るシーンでは感動で涙が出た。孫も話を冷静に受け止めているし、祖母の安堵感も伝わってきた
- 心の苦しみはその苦しみを他者に共有してもらうことで救われる。佐原さんが孫に語ったことはまさにそのケース
- CGを使ってPTSDの説明をするなど、知識として役立つ情報も盛り込まれていて良かった
- 行政がなぜ今頃になってこの調査をやったのか。その意図や意味について説明が欲しかった
- 吹越満さんのナレーションは、抑えた感じがとても良かった
などのコメントが寄せられた。
これらの感想や意見を受けて、報道部・横川慶治ディレクターは、
- 心の問題を映像化することの難しさは承知したうえで、あえて挑戦した
- 被爆者には自責の念を持っている人が多く、それが多くを語ってこなかった原因でもあるが、それはPTSDの一つの症状であり、話すことで楽になり、負担が軽くなることもわかった
- 今まで心の傷といった言葉で捉えられてきたことが、これから新しい概念で理解されることに期待
- 行政が今後この問題をどう扱うのかはわからないが、被爆者の心に初めて目を向けたことが重要。家族も聞いてあげることが大切だということを分かってもらいたい
などとコメントし、活発に意見を交換した。
- <出席委員>
- 松浦雄一郎委員長・池田明子委員・徳永修委員・中嶋健明委員・大野主税委員・荒木史子委員(順不同)