人類史上初の被爆地・広島の放送局であるテレビ新広島(TSS)が、平和への取り組みの一環として、原爆をテーマにした特別番組の英語版を世界に発信している「ヒロシマピースプログラム TSSアーカイブプロジェクト」。
今回は、2011年度日本民間放送連盟賞中四国地区審査会 報道番組部門の優秀賞を受賞したTSS報道特別番組『刻みつけられた地獄~最初で最後のヒロシマPTSD調査~』(2010年8月6日放送)を、2019年8月6日(火)から全世界へ向けて配信する。
英語字幕版は、日本人も外国人も同時に視聴できるよう日本語ナレーションに英語字幕を付けており、テレビ視聴が困難な紛争地域や発展途上国でも、インターネットを通じて“被爆地・ヒロシマ”の情報を知ることができる。 「TSSアーカイブプロジェクト」は、TSSの公式ホームページのほか、YouTube公式サイト「ここからっ!TSSチャンネル」、動画ポータルサイト「ポケットTSS」からも視聴できるとともに、「ユネスコ世界遺産センター公式ホームページ〔原爆ドーム〕」(ユネスコ・パリ本部)にもリンクが張られており、世界中で幅広く視聴されている。
【あらすじ】
原爆が投下されて65年が経過した2010年。広島市は、現在の被爆者の精神的な状態に関する大規模な調査報告を発表した。それは、現在も被爆者の1~3%が、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を抱えているというものだった。被爆者の白石多美子さん(71歳)は、原爆資料館で館内ガイドをしているボランティアの一人。ガイド歴10年のベテランだが、ガイド中に強烈な「匂い」に突然襲われることがある。白石さんだけが感じる「匂い」とは、一体何か。白石さんは言う、「この匂いは65年前の原爆投下直後、爆心地で祖母を探していた時に嗅いだ、すべての生物と、建物や土が焼き尽くされた匂い」だと…。番組ではほかに、逃げる自分を追いかける「キノコ雲」のフラッシュバックに怯え続ける72歳の男性の苦しみや、悪夢を恐れ、睡眠薬を飲み続ける84歳の女性など、被爆後65年が経過してもなお、当時の惨状の記憶に苦しむ被爆者たちを取材した。被爆者の高齢化が進む中、最初で最後といわれている大規模なPTSD調査をきっかけに、これまで置き去りにされてきた、被爆者の心の傷の深さに迫る。
【英語字幕版の制作風景】
【ディレクター:横川慶治】
戦後60年以上が過ぎて、被爆者の「心の傷」について「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」という、今や世界の共通認識となっている科学的アプローチによる調査が実施されました。取材では今なお被爆直後の街の匂いや、情景が鮮明にフラッシュバックする人など、最近になって「語り始めた被爆者」に協力していただき、被爆の状況に加え、これまで「どうして語れなかったのか」、また今「どうして語り始めたのか」その理由を慎重に、少しずつ聞かせてもらいました。そこには、幼い脳に刻まれた強烈なトラウマ、そして「語りたくても、家族にも語れない」孤独感と悲痛な思いがありました。この番組を通じて、「原爆被害」には終わりがないことを感じていただければと思います。
《横川慶治(よこがわ けいじ)プロフィール》
1994年テレビ新広島に入社。2001年より報道部に配属。県政キャップ、県警キャップ、広島市政キャップを歴任し、現在は報道部デスクとして日々のニュース作り、報道特番のプロデューサーを務めている。ディレクター担当番組は、「FNN日中国交30周年特番・退耕還林~よみがえれ!緑の大地」(2002年)、「追いつめられた島~NLP誘致の背景~」、「追いつめられた島(全国編)」(2003年)のほか、2005年に制作した「TSS開局30周年特番・守れ!海に浮かぶ朱の宝~厳島神社修復278日~」は、世界の発展途上国の教育レベルの向上に役立つテレビ番組として、一般財団法人放送番組国際交流センター(JAMCO)に選定され、フィジー(2012年)、ベトナム(2017年)に提供されている。
【スタッフ】
- 構成
- 岩井田 洋光
- ナレーター
- 深井 瞬
- 撮影
- 山本 龍
- 音声
- 岡田 香奈恵、倉西 正幸、正清 大介、西本 大輔
- 編集
- 佐々木 誠治
- EED
- 柳谷 基司
- MA
- 石井 浩孝、瀬島 敬史
- 題字
- 那須 恭子
- 翻訳
- アクアマリン プロダクション
- ディレクター
- 横川慶治
- プロデューサー
- 寺川良一
- 制作協力
- TSSプロダクション