被爆者の高齢化が進み、被爆者たちは「自分に残された時間」と対峙している。2021年3月からカメラが追いかけたのは、小倉桂子さん(85)。英語で被爆証言をする数少ない語り部だ。今年5月、G7広島サミットで各国首脳との面会にひとりで臨み注目された。
小倉さんは、8歳のときに爆心地から2.4キロの牛田町で被爆している。多くの被爆者もそうだったように、彼女も長い間、日本国内で自らの被爆体験については口を閉ざしてきた。過去を語ることは心をえぐられるような思いであり、家族への差別も恐れていたからだ。結婚して専業主婦として、家族と幸せに暮らしていた。しかし、広島平和記念資料館の館長も務めていた夫が、平和宣言の草稿執筆中に急死。夫と交友のあった海外ジャーナリストからの後押しもあり、夫の遺志を継いで被爆証言者の通訳をするようになる。独学で必死に英語を学び直す日々、彼女の暮らしは一変した。
さらに、証言活動を始めた頃は通訳に徹していた彼女だが、ある時広島を訪れた外国人から「通訳では時間がもったいない。質問をする時間がなくなるから、桂子の被爆体験を聞きたい」と懇願されたことをきっかけに重い口を開くことに。それからは「見えない苦しみを伝えられるかもしれない」と、自らの被爆体験を伝えるようになった。夫の死後、年間2,000人のペースで約40年間、国内外へ発信を続けてきた。
番組スタッフが小倉さんと出会ったのは、新型コロナウイルスの影響で、広島市にやってくる年間178万人を超える外国人観光客の姿が消え、被爆証言者の伝える場が無くなっていた時のことだ。そんな中でも、彼女は当時83歳にしてパソコンを勉強してウェブ配信を試みるなど前向きに活動を続けていた。取材中には、小倉さんと共に被爆証言をしてきた著名な被爆者が次々と亡くなった。彼女自身も高齢になった中、残された時間に自分ができることを考え、「若い世代へバトンを託す」ために行動を起こす。
そして今年5月、G7広島サミットでの各国首脳への被爆証言、さらに電撃来日したウクライナのゼレンスキー大統領との面会が急遽決まる。この歴史的瞬間に被爆者それぞれが強い思いを持つ中、彼女はこの大役を引き受けることに「荷が重すぎる」と葛藤した。それでも覚悟を決めてたったひとりで重責を担った3日間に密着。コロナ禍の2年半、被爆者・小倉桂子は何を思い伝えてきたのか、そして平和のバトンを渡された人たちは何を受け取ったのか。被爆者の今と継承を描く。
【石井百恵ディレクター コメント】
小倉さんとの最初の出会いは、夕方ニュース『TSSライク!』の取材先に小倉さんが被爆証言に来られていたことでした。 その人間力と言葉の力に魅せられ、映像に残さなければという思いに突き動かされました。 取材を続ける中で小倉さんのそばにいると、いつの間にか人が集まり、次から次へと何かが起こります。私は自然とそれを追わずにはいられませんでした。「私の役目は、若い人の心のろうそくに火を灯して、私がやらねばという気持ちを起こさせること」と小倉さんはいつもおっしゃいます。 私もいつの間にか、火を灯された一人なのだと思います。気が付けば番組になっていました。
平和公園にある慰霊碑には"過ちは繰り返しませぬから"という碑文が刻まれていて、小倉さんたち被爆者は「もう誰にも自分と同じ思いをしてほしくない」と伝え続けてきました。しかし今、ロシアによるウクライナ侵攻が起こり、それが揺らぐ事態となっています。今こそ、見えない苦しみを抱えてきた被爆者の声に耳を傾けてほしいです。 2年半の間、小倉さんは国内外でたくさんの平和の種蒔きをしてきました。小倉さんのメッセージを、番組をご覧になった皆さんにも受け取っていただきたいです。それをきっかけに、心に芽吹くものがあり、いつか花開くことを願っています。
【各局放送予定】
※なお、放送日時は変更になる可能性があります。詳しくは各局のHP・番組表をご確認ください。
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- 北海道文化放送(UHB)
- 8/10(木)
- 25:20~26:15
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- 岩手めんこいテレビ(MIT)
- 8/13(日)
- 25:30~26:25
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- 仙台放送(OX)
- 8/19(土)
- 26:10~27:05
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- 秋田テレビ(AKT)
- 8/9(水)
- 24:55~25:50
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- さくらんぼテレビ(SAY)
- 8/14(月)
- 24:55~25:50
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- 福島テレビ(FTV)
- 8/11(金)
- 25:40~26:35
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- 新潟総合テレビ(NST)
- 8/6(日)
- 25:55~26:50
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- 長野放送(NBS)
- 8/6(日)
- 25:25~26:20
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- 東海テレビ(THK)
- 8/15(火)
- 26:06~27:08
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- テレビ静岡(SUT)
- 8/6(日)
- 26:25~27:20
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- 富山テレビ(BBT)
- 8/12(土)
- 26:15~27:10
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- 石川テレビ(ITC)
- 8/27(日)
- 24:55~25:50
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- 福井テレビ(FTB)
- 8/6(日)
- 24:55~25:50
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- 関西テレビ(KTV)
- 8/15(火)
- 4:28~5:25
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- さんいん中央テレビ(TSK)
- 8/6(日)
- 25:55~26:50
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- 岡山放送(OHK)
- 8/6(日)
- 24:55~25:55
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- テレビ新広島(TSS)
- 8/6(日)
- 14:00~14:55
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- テレビ愛媛(EBC)
- 8/14(月)
- 25:30~26:25
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- 高知さんさんテレビ(KSS)
- 8/6(日)
- 24:55~25:50
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- テレビ西日本(TNC)
- 8/15(火)
- 25:55~26:50
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- サガテレビ(STS)
- 8/15(火)
- 9:50~10:50
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- テレビ長崎(KTN)
- 8/13(日)
- 25:35~26:30
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- テレビ熊本(TKU)
- 8/11(金)
- 26:10~27:05
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- テレビ大分(TOS)
- 放送日時未定
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- テレビ宮崎(UMK)
- 8/8(火)
- 26:24~27:19
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- 鹿児島テレビ(KTS)
- 8/15(火)
- 27:05~28:00
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- 沖縄テレビ(OTV)
- 8/9(水)
- 24:30~25:30
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- フジテレビ(CX)
- 8/11(金)
- 27:55~28:50
【岡田将生(ナレーション) コメント】
僕は誕生日が終戦記念日で、いつか平和について自分にもできることがあれば何か作品として関わりたいなと思っていました。この作品では、小倉さんの気持ちをナレーションとして背負ってというか、寄り添って、この出来事を伝えたいという思いで今回のお話を受けさせて頂きました。
ナレーターとして言葉を操るのはとても難しいことでした。だからこそ小倉さんがメディアの前でメディアの方々に「正しいことを伝えてほしい。メディアに関わる人間には責任がある」と伝えるシーンには、ものすごく重みを感じました。自分自身その重みをかみしめながらやろうという気持ちで臨んだので、この作品を見る方々にも本当の事実をかみしめながら見てもらえればと思います。