8月6日(火) 午前9時50分~10時45分
そのほか全国のフジテレビ系列で放送予定
“被爆者の高齢化・死”という、年々厳しくなる現実と向き合う人たちがいる。79年前の「あの日」を経験していない人が「伝承者」となり、被爆者に代わって歩み出す日々に、カメラが密着した。
今年3月末の時点で、被爆者の人数はおよそ10万6,800人となった。15年前から約13万人も減少し、その平均年齢は85歳を超えた。原爆の悲惨さ、被爆の実相を後世に伝えてきた被爆者たちにも、証言をするには体調面で厳しい現実がある。
広島市は、被爆者たちの被爆体験や平和への思いを受け継ぎ、それを伝える「被爆体験伝承者」の養成事業を2012年度から開始。加えて2022年度からは、被爆者の家族が親や祖父母らの体験を伝える「家族伝承者」の養成を始めた。次世代へ平和のバトンを繋ぐ活動は年々広がり、今年4月1日時点で、被爆体験伝承者226人と家族伝承者38人が活動している。伝承者は、約2年の研修を経て認定を受けると、原爆資料館や県内外の学校などで伝承講話を行う。
細川洋さんは、家族伝承者1期生だ。広島県内の高校教師として約40年働き、2021年3月に校長で退職。第二の人生として、「被爆者である父の体験を語り継いでいきたい」と家族伝承者に応募し、活動を始めた。洋さんの父・浩史さんは、自身の被爆体験や13歳だった妹を失った悲しみを国内外で伝え、世界の平和を訴えてきたが、去年11月、95歳でこの世を去った。父の死は、洋さんが伝承者として本格的に活動を始めてから、まもなくのことだった。その後、洋さんは父が被爆した場所を巡り始めた。「聞いておけばよかったことだらけ」と、あの日父がたどった道を踏みしめる。
矢木慶子さんは、今年95歳となった母・喜代子さんの被爆体験を受け継ぐ。「思い出したらつらい。語りたくもないけど、わかってもらわないと」母がふたをしていた記憶の扉を開けたのは、娘の平和への強い思いだった。「娘が勉強してみると言ってくれて嬉しかった」何度も聞き取りを行い、講話するための原稿作成を行い、家族伝承者に認定を受けた。今年1月、原爆資料館での初めての講話。そこには、母・喜代子さんの姿も。母に代わって、母から託された被爆体験や思いを伝える。親子二人三脚で次の世代へ平和をつなぐ。
増本夏海さんは、今春に過去最年少の20歳で被爆体験伝承者となった。「広島で生まれ育った若者として、私が伝えていかなきゃ」小さい頃から被爆者の声に耳を傾けてきた彼女の平和への思いは、いつしか使命感へとかわっていた。彼女が受け継ぐのは、84歳の被爆者・岸田弘子さんの被爆体験と思い。増本さんとの年齢差は60歳以上。岸田さんには当たり前の言葉でも増本さんにとっては初めて聞く言葉もあり、岸田さんが戸惑いを覚えることも。増本さん自身も「経験をしてないくせに話していいのか」と悩むこともあった。それでも伝えていきたい。少しでも平和へのきっかけにしてほしいと、同じ大学に通う約550人の同世代の学生の前で、平和への思いを訴えかけた。
それぞれの思いや悩みを抱きながらも、伝承者として活動を始めた3人の物語を通じて、次の時代に向けて平和を伝える意味を問いかける。
【制作者コメント】
【構成・プロデューサー 田中浩樹】
被爆者の高齢化が進む中、被爆の実相の「継承」をどうしていくべきなのか?長らくヒロシマが抱えてきたテーマのひとつです。番組では、これまでTSSが過去に取材してきた被爆者の方々の映像とともに、状況が異なる3組の被爆者と伝承者の人たちの思いを通して「あの日」の記憶に向き合います。いつか被爆者がいなくなるという、避けられない厳しい現実を直視したとき、残された我々はいま何ができるのか、見えてくるのだと思います。
【各局放送予定】
※なお、放送日時は変更になる可能性があります。詳しくは各局のHP・番組表をご確認ください。
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- 北海道文化放送(UHB)
- 8/6(火)
- 26:10~27:05
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- 岩手めんこいテレビ(MIT)
- 8/11(日)
- 25:25~26:20
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- 仙台放送(OX)
- 8/19(月)
- 25:00~25:55
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- 秋田テレビ(AKT)
- 8/25(日)
- 25:00~25:55
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- さくらんぼテレビ(SAY)
- 8/12(月)
- 25:25~26:20
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- 福島テレビ(FTV)
- 8/16(金)
- 25:55~
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- 新潟総合テレビ(NST)
- 8/11(日)
- 24:50~25:45
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- 長野放送(NBS)
- 8/6(火)
- 26:00~26:55
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- 東海テレビ(THK)
- 8/20(火)
- 26:16~27:21
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- テレビ静岡(SUT)
- 8/11(日)
- 27:10~28:05
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- 富山テレビ(BBT)
- 8/25(日)
- 24:58~26:00
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- 石川テレビ(ITC)
- 8/18(日)
- 25:00~25:55
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- 福井テレビ(FTB)
- 8/9(金)
- 25:30~26:25
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- 関西テレビ(KTV)
- 8/14(水)
- 26:50~27:45
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- さんいん中央テレビ(TSK)
- 8/15(木)
- 25:20~26:15
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- 岡山放送(OHK)
- 8/11(日)
- 25:10~26:10
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- テレビ新広島(TSS)
- 8/6(火)
- 9:50~10:45
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- テレビ愛媛(EBC)
- 8/14(水)
- 24:25~25:25
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- 高知さんさんテレビ(KSS)
- 8/17(土)
- 25:20~26:15
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- テレビ西日本(TNC)
- 8/5(月)
- 26:00~26:55
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- サガテレビ(STS)
- 8/15(木)
- 9:50~10:50
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- テレビ長崎(KTN)
- 8/11(日)
- 25:15~26:10
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- テレビ熊本(TKU)
- 8/11(日)
- 25:05~26:00
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- テレビ大分(TOS)
- 8/24(日)
- 24:55~25:50
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- テレビ宮崎(UMK)
- 8/17(土)
- 04:05~05:00
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- 鹿児島テレビ(KTS)
- 8/9(金)
- 26:30~27:25
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- 沖縄テレビ(OTV)
- 8/15(木)
- 25:30~26:25
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- フジテレビ(CX)
- 8/9(金)
- 26:30~27:30
【ディレクター 宮崎隆史】
当初、細川さんの取材は、父・浩史さんと親子での取材を考えていました。しかし、取材を申し込もうとしたときに「浩史さんが死去した」と一報を受けました。ショックとともに感じたのは、被爆者なき世界が迫っているという現実でした。「被爆者はいつかいなくなる。この先、誰が浩史さんの被爆体験や思いを伝えていくのか」これが今回の番組制作のきっかけでした。番組に登場する3人は、生い立ちや経験したことは違いますが、共通していたことは“平和への強い信念”でした。被爆者の体験や思いを映像で次世代に残すことも大事ですが、次の世代が自らの声で伝えていくこと・その意識を持つことの意味は何なのか。この番組から何か感じ取ってもらえたらと思っています。