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サザンクロス大学講師・ジャパンセンター会長 マクラレン温子
【オーストラリアで思うこと】
大晦日の夜、シドニー湾では恒例のニューイヤー花火が豪快に打ち上げられた。夜空に打ち上げられ、空一杯に飛び跳ねる花火の美しさ。新型コロナウィルスの影響で、今年は自宅のテレビで見たシドニー湾の花火。観客なしの花火大会での夜空の美しいスパークリングは、東京オリンピックが観客なしでも実現できたら、という思いに重なる。
2020年2月中旬、コロナ騒ぎが、横浜港での海上、ダイヤモンドプリンセス客船で始まった。同じ頃、シドニー湾にルビープリンセスという大型客船が入港。船舶側がシドニー湾の入国管理所に、客船にコロナ患者はいないという虚偽の報告をして、全員を上陸さ せたことから始まったオーストラリアでの新型コロナ騒ぎ。この重大な不祥事にオーストラリア政府が心を引き締め、即刻、許可がないと州を越えて移動できない厳しい政策を存続実施したお陰で、12月下旬には、オーストラリア全体で新出コロナ患者がほぼゼロに近 づいた。ところが、年末の海外帰国者から、シドニーなどの都会に少数のクラスターが出て一部地域の隔離が再び始まった。よって、このシドニーの新年の花火も観客なしで行われた。
多くの大学学舎が閉鎖される中、日本の大学からのズームミーティング交流の希望を受け、学生やコフスハーバーの豪日協会の会長のマーガレットさんなど日豪友好の友人の協力を得て、毎週、開催している。奈良の大学から紅葉の美しい奈良公園などのバーチャル観光、オーストラリアの学生の自宅の農場の紹介、ピアノ演奏など、普通の学生生活ができない学生達と思いもよらぬ楽しい時間を共に過ごせた。
昨年、快挙だったのは、日本の「はやぶさ」2号の地球帰還。長い宇宙の旅路を終え、オーストラリアの砂漠の中に落ちてきたのだが、取材をした人が“よくぞ戻ってきてくれた” と愛しく思ったとか。大切な宇宙からのお土産は、日本人の手に。
ある時、スーパーのレジで名前を呼ばれ顔を上げると、なんと数十年前に学生だった元教え子のグレッグ君の笑顔。カンタス航空に入ってフライトアテンダントになり、ニューヨーク、パリと、世界中を飛び回っていたのに、コロナ騒ぎで人員削減され、スーパーマーケットでレジをしているとは、、、これも仕事と、笑顔で仕事をしている姿には感心した。コロナ騒ぎで人生の予定が狂い、様々な事に立ち向かっていかなければならなくなった人達、又、医療関係者など苦しい仕事を続けている人達のためにも、世界が早く平常に戻る事を祈る。
数年前の永野会長を代表とする広島日豪協会の方々のご訪問の際、リズモアでのバーベキュー歓迎会を手伝ってくれた留学生の稲葉将君は、東京パラリンピックに乗馬で日本代表に選ばれた。優勝候補としてスポーツ新聞や雑誌などを飾り、開催を願っているが、こ のコロナ騒ぎである。幸いにして、オーストラリアは厳しい移動制約存続のお陰で、現在は、ほとんどの州が新規コロナ患者ゼロに近づいている。これからは気候も良くなり、“また日は昇る”。貧困孤児救援活動をしている小林りんさんの言葉“意思を持った楽観” で、皆が、心を引き締め、世界中へのコロナワクチンの普及により、今年が良い年に変わる事を期待したい。