子育てアドバイス

高学年の子どもの心ケア その時その時のありのままを受け止めて

 新学期が始まって1カ月、これまでと違う環境で頑張っている子どもたち。うれしいことや楽しいこと、イライラしたり落ち込んだり、感情がたかぶったり揺れている時期です。そこで親業訓練シニアインストラクターの大下幸恵さんに、高学年の子どもたちの“心ケア”について聞きました。
●子どもがマイナスの感情を表した時
 子どもが、むかつく、イライラする、悲しい、さみしいといった感情を表した時。「~してみたら?」「~しなさい」「おやつでも食べて忘れなさい」など、さとしたり解決策を提案したり、ごまかして元気づけたくなりますね。
 子どもがマイナス感情を示した時、親がついしてしまう対応として、命令、脅迫、積極、提案、抗議、非難、賞賛、侮辱、解釈、同情、尋問、ごまかすの「お決まりの12の言葉」があります。親は問題が解決してスッキリするかもしれませんが、子どもは「話を聞いてもらえなかった」とモヤモヤとした気持ちを抱えたままかもしれません。
 大切なのは、「あなたは今、こんな気持ちなんだね」とその時のありのままを受け止めること。「お決まりの12の言葉」を少し我慢して、子どもの気持ちを聞いてみます。「話を聞いてもらった」「自分を分かってもらえた」という安心感から、「親に大切にされている」という実感が生まれます。心が安定し、安心すると思考が前に進み、自立につながるともいわれています。「自分は大切な存在なんだ」という自己肯定感が、頑張る力、挑戦する意欲となり、人生の原動力になります。
 また「何かあったら親が話を聞いてくれる」と思えることで、つらいことを一人で抱え込まずにすみます。
●ありのままを受け止め、気持ちを確認する
 親は子どもの心を読める魔法使いではありません。気持ちを分かろうとすることは、気持ちのあてっこでもありません。まずはありのままを受け止め、気持ちを確認し合うことで共通理解を持つことができます。
 例えば60点のテストを持ち帰ってきた時のシーンを想像してください。
 子どもが「テストが60点だった」とため息。言葉、表情、行動といった子どもが発する記号を見て、親は「がっかりしたのかな」と気持ちを解読します。そこで「がっかりしたんだね」と返し、気持ちを確認します。すると子どもが「うん(がっかりした)」、または「いや、くやしかった」と返事をするかもしれません。気持ちを確認したからこそ、悔しいという本当の気持ちを知ることができました。
 ありのままを受け止めることは、親子だからこそ難しいこともあります。そんな時、「この悩みは誰のもの?」という視点を意識してみてください。子どもが問題解決をするために親ができることは何かなと考える道がのびてきます。子どもが悩みと向き合えるチャンスを与えることも、親子の向き合い方の一つです。
●気持ちの聞き方のポイント
 子どもの気持ちを聞くというのは、尋問や質問とは違います。ポイントを紹介します。
(1)子どもの気持ちを口にしてみる。
 話を聞こうと思っても、つい親の意見を言ってしまうことがあると思います。親は自分の気持ちではなく、子どもの気持ちを口にすることを意識してみてください。具体的には、子どもの言葉をくり返す、要約する、そして「こんな気持ちなんだね」と共感する方法があります。
(2)子どもの気持ちを分かろうとする。
 ありのままを受けとめることに集中し、気持ちを分かろうとすること。マイナスをプラスに変えようとしないで。
(3)無理をせず、できるときに、後からでも。
 自分にゆとりがないときに、無理をして聞こうとするとしんどいですよね。「さっきの話だけどね…」と後からでもOK。分かろうとする姿勢を持つことで、子どもたちの気持ちも変わってきます。
●「思春期」を理由にしないで
 小学校高学年の子どもとのかかわりで気を付けたいのが、思春期や反抗期を意識しすぎること。あまり話さない、何を聞いても「別に」と言う、いつもイライラしていて「いやだ」が口癖になっているという時。思春期や反抗期を理由に「しかたない」と納得してしまうと、子どもへの関心はそこで止まってしまいます。「この子の心の中で今、どんなことが起こっているのかな」「どんな気持ちなのかな」、「お手伝いが嫌なのは疲れているのかな」など、心に寄り添ってありのままの姿を理解しようとすることが大事です。
 子どもにはそのときそのときの反抗する事情があります。そんな心のしんどさや痛みに寄り添うことで、子どものマイナスの感情が落ち着き、こだわりがほぐれてくると思います。親にとっても、子どもの心をケアできた安心感、心が通い合ううれしさを感じることができるでしょう。子どもの心ケアは、子どもの幸せにとどまらず、親の幸せにもつながりますよ。
プロフィル 大下幸恵さん
親業訓練シニアインストラクター
ますだ小児科 心理相談員
広島県わーくわくママサポートコーナー 就職準備セミナー講師
講座や講演会、また小児科の相談室で、ママの悩み相談に対応。小学校では親子のコミュニケーションなど、さまざまなテーマで講演。中・高・大学生3人の子どもの母。広島市在住。
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