子育てアドバイス

《規則正しい生活リズムを作るために ~成長期の小学生、心掛けたい心と体の健康》

 早寝早起きは小学生にとって基本的な生活習慣です。しかし、日常の忙しさにかまけて、気が付くと子どもに夜更かしをさせていた、と反省するお母さんも多いのでは。
 そこで今回は小学生の健康を見守る、己斐上小学校の養護教諭・平野美穂先生によい睡眠のために心掛けたいことをお聞きしました。
◆子どもにとって睡眠は身体の健康や脳の発達に重要な役割を担っています
 小学校の6年間は、平均で身長は約30センチ、体重が約17キロとどんどん体が大きくなる時期です。学校では45分授業が6時間あり、夕方4時頃まで脳をしっかり働かせます。体育や休憩時間には全力で身体を使っています。

 このように一日中絶え間なく活動している小学生にとって、夜は脳や体を休めるべき大切な休息の時間です。睡眠には身体面の疲れをとるだけでなく、心の安定や脳を発達、体の抵抗力を高める重要な働きを持っています。
◆春休み明けは、我が子の変化に目配りが必要な時期です
 春休みは夏休みや冬休みと異なり、宿題が少ない長期休暇です。気が抜けてダラダラ過ごしてしまい、そのままのペースで新学期を迎える子もいます。
 4月からは学年が一つ上がり、クラス替えがあったりして取り巻く環境がガラリと変わります。のんびりと春休みを過ごした後、急激に強い緊張感にさらされて、変化の大きさから疲労がたまりやすい時期と言えます。

 つい頑張ってしまいがちな子は目に見えない不安や疲れから、いわゆる五月病のような症状が現れることもあります。
 しかし、体と心の緊張や疲労は、十分な睡眠を取ることで緩和できます。良く眠り、一日の疲れをしっかり取ることで、次の朝にはまた元気に学校に行けるようになるのです。
◆現代っ子は睡眠不足? 睡眠不足が体調不良を招くこともあります
 「小学校1~2年生は午後9時、3~4年生なら9時半、5~6年生なら10時までには布団に入ることをお勧めしたいですね」(平野先生)

 ある調査では、小学生でも学年が上がるにつれて就寝時刻は遅くなり、6年生では約75%が午後10時以降に寝ているという結果がでています。
(平成26年「家庭教育の総合的推進に関する調査研究」・文部科学省委託調査より)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/katei/__icsFiles/afieldfile/2015/07/13/1357460_03.pdf
 ただ、なかなか寝付けなくても布団に入って静かに横になっているだけで体は休まります。眠れないと思っても就寝時刻を決めて布団に入る習慣をつけるようにしましょう。

 保健室に来る児童の中には、睡眠不足が原因で体調不良を訴える子が見られます。
「しんどい」「だるい」、または「頭が痛い」などの症状を朝から訴えたり、イライラして落ち着きがなくなったりする場合には、睡眠不足の可能性があるので要注意です。
◆規則正しい生活習慣で子どもの心と体の健康を守りましょう
 「小学校では、『生活リズムカード』をゴールデンウイークや夏休みなど長期休業の後に付けてもらっています」(平野先生)
 カードに就寝時刻、起床時刻、朝食の記録をつけることで、自分の生活リズムを知る取り組みです。

 朝寝坊すると朝食を食べられずに登校してしまい、学校で元気が出なかったり、やる気が出なかったりします。
また、就寝が遅くなると翌朝起きるのがつらくなります。
 早寝・早起き・朝ごはん、という規則正しい生活が子どもたちの心と体の健康に重要であることは言うまでもありません。
◆良い睡眠のためにできる工夫をお聞きしました
(1)ゲームやテレビは寝る1時間前には見ないようにしましょう
 落ち着いた気持ちで眠るために、就寝1時間前にはゲームやテレビのスイッチを切りましょう。
ゲームやスマホなどの機器は自室に持ちこませず、リビングだけの使用にするなど家庭内でのルールを決めてみてはいかがでしょうか。

 ゲームに夢中になってしまい、こっそり布団の中でいつまでも遊んでいたために、翌朝学校で体調を崩してしまった、という子もいます。ルールを守って節度ある楽しみ方を子どもに伝えることも親の重要な役割です。
(2)親とのおしゃべりが不安や緊張をほぐすことも
 子どもの様子がちょっといつもと違うな、と感じたら、少し手を休めて話を聞いてあげてください。一緒にお風呂に入って体を洗ってあげながら、おしゃべりをするのも良いでしょう。
 新学期、不安や緊張で疲れが溜まっている子でも、親が話を聞いてあげるだけで気持ちは軽くなるものです。
(3)「入眠儀式」としての読み聞かせを親子のふれあいタイムに
 落ち着いた気持ちで眠りにつくために、短いお話を一つ読んであげるのもお勧めです。
 児童書でなく、絵本でも良いでしょう。

 自分の考えをうまく伝えられない子が登場人物に自分を重ねることで、気持ちを表現できることもあります。
 お話にあわせて「どう思う?」と話しかけてあげたり、お話を聞いている様子を見てあげたりしてください。お話が終わる頃には気持ちも落ち着き、緊張感もほぐれます。
 読み終わったら「おやすみ」と声をかけて、眠りを促しましょう。
◆読み聞かせにオススメの本をご紹介いただきました
 保健室にたくさん本が置かれていました。保健室に来る子どもたちが手に取りやすい本を揃えてあります。
小学校低学年から中学年頃までなら絵本もお勧めです。
「自分で読むのが苦手な子でも読んであげると耳を傾けてくれるものですよ」(平野先生)
寝る前の読み聞かせにおすすめ【母と子のおやすみまえの小さなお話365】
(ナツメこどもブックス 千葉幹夫 著)
 この本には世界中の物語をダイジェストにした365話が収められています。1ページに一話ずつなので、忙しい方にとっても気軽に読みやすい分量です。お話になぞらえて一日の出来事を尋ねたり、感想を聞いて心の状態を感じ取ったり、短い読み聞かせタイムを上手に活用してみてはいかがでしょうか。

 朝、気持ちよく目覚めるためには、良い睡眠の習慣が大切。
 朝までぐっすり寝てスッキリ目覚めること、そして十分な睡眠時間をとること。心と体の成長期である小学生は寝るということをもっと大切にしたいですね。
平野 美穂(ひらの みほ) 広島市立己斐上小学校 養護教諭
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